雪の災害
雪の災害(雪害)では、どのような事が起こるのか?
雪害の代表的ものとしては、雪崩、除雪中の転落事故などの豪雪地帯特有の災害のほか、路面凍結などによる交通事故や歩行中の転倒事故など、豪雪地帯以外でも発生する災害もあります。また、地域住民だけでなく、冬山登山やスキー、観光などで豪雪地帯を訪れる多くの人々も被害に遭っています。
雪害に遭わないためにも、雪に対する正しい知識を深めておくことが大切です。
ここでは、5つのケースに分けて、雪害を説明していきます。
除雪中の事故(雪下ろしや雪かき中の事故)
雪による事故の死者の多くは除雪中の事故によるものです。(令和5年度中の雪による人的被害の約9割が雪下ろし等の除雪中の事故。ただし、交通事故及び転倒によるものを除く)
除雪中の事故は、自宅など建物の屋根の雪下ろしや雪かき等の作業中に発生しており、中でも高齢者の比率が高いことが特徴です。
除雪中の事故はこんなケース、こんな原因で起きています!
雪下ろしの事故の場合、屋根からの転落事故が多く、高齢者や一人での作業中に多く発生しています。
何かあった時に対応できるよう作業は複数人で行うようにしましょう。
屋根からの転落
雪下ろし中に屋根の上で転落したり、雪が滑り落ちてきてバランスを崩して転落する事故
屋根からの落雪
軒下で除雪中に落雪で埋まる、落雪が直撃する事故
水路等への転落
融雪槽に投雪中、槽内に転落する事故(発見までの時間がかかり、死亡に至る例も)
除雪機の事故
エンジンを止めずに、雪詰まりを取り除こうとして巻き込まれる事故(約7割が40~50代)
除雪作業中に心筋梗塞などを発症
寒い屋外での重労働によって作業中に心肺停止などで倒れる事故
除雪事故に遭わないために ~命を守る除雪中の事故防止10箇条~
除雪中の事故の危険を理解し、安全な対策を講じることが、事故を防ぎます。
また、事故は除雪作業に対する慣れや過信、油断が事故を招いています。除雪作業前に事故防止のポイントを確認しましょう。
資料:内閣府(防災)普及啓発・連携担当/国土交通省国土政策局地域振興課
作業は家族、となり近所にも声かけて2人以上で!
建物のまわりに雪を残して雪下ろし!
晴れの日ほど要注意、屋根の雪がゆるんでる!
はしごの固定を忘れずに!
エンジンを切ってから!除雪機の雪詰まりの取り除き
低い屋根でも油断は禁物!
作業開始直後と疲れたころは特に慎重に!
面倒でも命綱とヘルメット!
命綱、除雪機など用具はこまめに手入れ・点検を!
作業のときには携帯電話を持っていく!
空き家の除雪が行われず、危険な状態になっている場合には、法律の定めに基づき市町村長の判断で雪下ろしを行うことが可能です。
お困りの際は市町村に問い合わせ下さい。
車による雪道での事故
車による雪道事故はどのような時に発生するのか
降雪時、降雪後には路面の凍結や視程障害(吹雪等による視界不良)による事故に注意が必要です。
【こんなときは路面の凍結に注意!】
降雪が1cm以上あり、雪が降った後早い時期(おおよそ24時間以内)
アイスバーン(氷のようになった路面)に注意!
冷え込む夜間や朝方や日陰などは、凍っているように見えなくてもブラックアイスバーンに注意!
【こんなところでは路面の凍結に注意!】
信号交差点
車が発進や停止を繰り返すことによって、路面が非常に滑りやすくなることがあります。
橋梁(橋げた)
ほかの路面が凍っていなくても橋の上だけは凍結していることがあります。
トンネルなどの出入口
日陰になることが多く、局所的に路面が凍結している場合があります。
【視界の悪い時に注意!】
空気中に浮遊物があると、私たちの目に届く光の量が少なくなり、周りの景色が見えづらくなります。 これを視程障害といいます。また、地吹雪などで視界が真っ白になり、他に何も見えない状態になること(ホワイトアウト)もあり、冬の道路では、実際の視程よりかなり悪く感じることがありますので注意が必要です。
雪道での車の事故に遭わないためには ~雪道での運転のポイント~
【凍結路面での運転のポイント】
坂道走行
あらかじめ適切なギヤにシフトダウンし、アクセルを一定にしましょう。急ブレーキやシフトダウンは尻振りやスピンを招きます。(下り坂はエンジンブレーキを効かせましょう)
カーブ走行
カーブ手前で十分に減速してから進入し、カーブ中は控えめな速度を一定に保ち走行しましょう。
ブレーキング
急ブレーキをかけるとタイヤがロックしてグリップを失い止まれません。ブレーキは普段より手前からソフトにじわっと踏んで止めましょう。
※四輪駆動車やABS(アンチロック・ブレーキ・システム)がついていても過信せず、カーブや交差点の手前では十分にスピードを落として走行しましょう。
【視界の悪い時の運転のテクニック】
吹雪の中での運転はライト点灯、スピードダウン、車間距離!
存在を知らせるため、ライトをつけ、スピードを控えめにして車間距離を十分に取りましょう。
大型車の雪煙に注意!
大型車が巻き上げる雪煙で視界が悪くなるので、ワイパーを早めに作動し減速しましょう。
車に雪が付いたら安全な所に止まって落とす
ヘッドライトやテールランプ、ワイパーに付いた雪は道路から離れた安全な所で落としましょう。
疲れたり、運転に危険を感じたら休憩を
疲れたり危ないと思ったら路上では止まらず、道の駅やパーキングエリアなどで休みましょう。
【アクシデントに対応できる用具を必ず装備しておきましょう】
冬道の運転は冬山の登山と同じようなもので、事前の点検・整備と、天候の急変等による様々なアクシデントにも十分対応できるような装備品を必ず装備しておきましょう。
タイヤチェーン・ジャッキ・牽引用ロープ・工具・ブースターケーブル・スノーヘルパー
防寒具・雨具・長靴・作業衣類・手袋・軍手・タオル・着替え・毛布・使い捨てカイロ
スペアタイヤ(冬道用タイヤ)・滑り止め用砂・除雪用ブラシ・停止表示板・発煙筒
スコップ・非常用の水・食料・旗(目立つ色の布)・懐中電灯(電池)・ラジオ
【雪のない地域から積雪地域に行くときの注意点】
一面の銀世界をドライブする爽快感の裏には常に危険が潜んでいます。慣れない雪道で思わぬハプニングに巻き込まれる前に、スノードライブの基礎知識を身に付け、充分に準備をして安全で快適なドライブにしましょう。
歩行者での雪道での事故
歩行者の雪道事故はどのような時に発生するのか
~歩行時の転倒にも注意!滑りやすい場所を知りましょう~
冬期間は豪雪地帯に限らず、雪が少ない地域でも、積雪・凍結を原因とする転倒災害が多く発生しています。
転倒災害件数は、降雪量にほぼ比例しており、例年1~3月に集中して発生しています。事故が多く発生している滑りやすい場所を確認しておきましょう。
横断歩道の白線の上
乾いているように見えても薄い氷膜ができて、滑りやすくなっている場合があります。
車の出入りのある歩道(駐車場の出入口、ガソリンスタンドなど)
出入りする車のタイヤで路面上の氷が磨かれ、非常に滑りやすくなっている場合があります。
バスやタクシーの乗り場
踏み固められて滑りやすくなっている場合があります。また、歩道と車道との段差にも注意。
坂道
上りよりも下るときの方が滑って転びやすく危険です。下るときは特に注意しましょう。
ロードヒーティングの切れ目
雪や氷が融けておらず段差ができて、部分的に滑りやすい状態になっていることがあります。
雪道を安全に歩くポイント
~転びにくい上手な歩き方を知りましょう!~
小さな歩幅で歩きましょう
歩幅を小さくし、そろそろと歩く「ペンギン歩き」が基本です。
靴の裏全体を路面に付けて歩きましょう
体の重心をやや前におき、できるだけ靴の裏全体を路面につける気持ちで歩きましょう。
また、履物は靴底が滑りにくいものを選びましょう。(摩擦係数の高いゴム長靴等)
その他
転んだときために、帽子や手袋をするなど、身に着ける物の工夫も安全対策の一つです。
両手をポケットに入れて歩いたり、飲酒時もバランス感覚が鈍り危険です。また、屋根の上の雪や氷が落ちてくることがありますので、屋根にも目を配り歩きましょう。特に、暖かい日は要注意。
雪のレジャーへの備え
雪のレジャーでの事故にはどのようなものがあるのか
雪のレジャーでの事故は、自分自身の油断や、状況判断・認識の甘さから発生するものが目立ちます。
厳しい気候に対して体調管理が万全でなかったり、天候の変化やトラブルになったときに対応する装備が不十分だったりすることが、事故の原因となりやすいのが特徴です。
スキーやスノーボードでは、転倒や滑落、人や立木への衝突による打撲や骨折、また、死亡事故が度々発生しています。
冒険気分でコースをよく確認せずに立入禁⽌区域へ入ると、迷ったり遭難したりすることが多くあります。また、「遭難しても携帯電話があれば助けが呼べる」と思っていても、⼭岳地域では確実に通話できるとは限りません。
冬山登山では、経験や準備不足などにより、令和5年は遭難者が500人を超えるという深刻な状況にあります。
雪のレジャーで事故に遭わないためには
雪のレジャーが危険と直結していることを理解して、準備をして楽しむようにしましょう。
いきなり激しい運動はせず、体を慣らすことを意識しながら楽しみましょう。また、体調が優れない場合は、運動を控えインドアで過ごすことも考えましょう。
山麓と山頂では天候が正反対になることもあるので、事前に必ず気象状況や天気予報を確認し、急変時には無理な行動は控えましょう。現地の係員の指示やアドバイスには従いましょう。
スキーやスノーボードなどで自分の能力以上の無理な滑りは事故の元です。安全な範囲で楽しみましょう。もらい事故を避けるために周囲にも気を配りましょう。
気を付けていても、雪崩は突然発生する場合があります。事故に遭わないためにも雪崩の知識もきちんと身に付けておきましょう。特に新雪がたくさん積もった後は、雪崩が起きやすい場所を避けて行動するなど、細心の注意を払いましょう。また、埋没に備えビーコン(電波発信機)等も所持しておきましょう。(5.雪崩による事故へ)
登山計画書・登山届は、家族や職場等と共有しておくことにより、万一の場合の素早い捜索救助の手掛かりとなるほか、計画に不備がないか事前に確認できます。また、作成した登山計画書・登山届は、一緒に登山する仲間、家族や職場等と共有するとともに、登山口の登山届ポスト、自治体、都道府県警察などに提出しましょう。登山計画書・登山届の提出は、登山地図アプリやインターネットからできる場合もあります。
バックカントリースキーは、冬山登山と同様の知識・技能・装備が必要であることから、安易な行動は厳に慎みましょう。
トラブル発生時を考え単独ではなくグループで行動し、適時、仲間がいるか確認しましょう。
緊急時に備え、無線機、携帯電話、予備バッテリーを携行しましょう。
冬山登山に関しては、下記山岳関係のウェブサイトなどで情報を入手し、ルールを守って行動しましょう。
雪山で万が一遭難したら…
視界が悪くなったら、動き回らずに天候の回復を待ちましょう。
遭難したら、携行した無線機や携帯電話で必要に応じて110番や119番通報し救助を求め、状況や現在地の地形など分かる限りの情報を伝えましょう。
救助まで時間が掛かりそうな場合は、携帯電話等の電池消費を抑えるためにこまめに電源を切り、低温による動作不良を避けるために、体に近い場所に置いて暖めておきましょう。
その場にとどまらないといけない場合は、目印になるものを木などに付け、根元などに雪洞を作ってその中で寒さをしのぎ、カイロがあれば暖を取り、救助隊を待ちましょう。むやみに動き回るのはやめましょう。
雪崩による事故
雪崩ではどのような災害が起こるのか
雪崩とは、「斜面上にある雪や氷の全部又は一部が肉眼で識別できる速さで流れ落ちる現象」を言い、積雪が崩れて動き始める「発生区」と、発生した雪崩が通る「走路」、そして、崩れ落ちた雪が積み重なる「堆積(たいせき)区」からなっています。また、雪崩によって堆積した雪を「デブリ」と呼びます。
なお、雪崩は“すべり面” の違いによって、「表層(ひょうそう)雪崩」と「全層(ぜんそう)雪崩」の大きく2つのタイプに分けられます。
雪崩災害に遭わないために
~雪崩が発生しやすいケースは急斜面や植生がまばらな場所など。気象条件や前兆現象にも要注意!~
雪崩はとても速く、発生に気付いてから逃げることは困難です。身を守るためには、前もって雪崩が発生しやすいケースを知っておくことが重要です。日頃から危険箇所や気象情報をチェックし、雪崩の前兆を発見したらすぐに最寄りの市町村役場や警察署へ通報してください。
<発生しやすい場所>
急な斜面
一般的に、スキーの上級者コースと同程度の30度以上傾斜になると発生しやすくなり、特に35~45度が最も危険と言われています。
「落石注意」の標識が設置など。
高木が密に生えている斜面では雪崩が発生しにくい一方、低木林やまばらな植生の斜面では雪崩発生の危険が高くなります。笹や草に覆われた斜面などは裸地よりも発生しやすい地形です。
<発生しやすい条件>
気温が低く、既にかなりの積雪がある上に、短期間に多量の降雪があったとき
急傾斜で、特に雪庇(せっぴ)や吹きだまり(雪が風で吹き寄せられ堆積した場所)
0度以下の気温が続き、吹雪や強風が伴うとき
過去に雪崩が発生した斜面など
春先や降雨後、フェーン現象などによる気温上昇時
斜面に積雪の亀裂ができている場所など
<普段から心がけるべき事発生しやすい条件>
市町村が作成、配布するハザードマップによって、その地域の危険箇所を把握しましょう。
お住まいの都道府県又は市町村のホームページで危険箇所を確認できます。気象庁が発表する「なだれ注意報」などの気象情報が出ていないかを確認しましょう。
そのほか、自治体から発信される情報をチェックしましょう。
万が一、雪崩発生の場に遭遇したら?
<雪崩が自分の近くで起きた場合>
流されている人を見続けること。
仲間が雪崩に巻き込まれた地点(遭難点)と、見えなくなった地点(消失点)を覚えておく。
雪崩が止まったら見張りを立て、遭難点と消失点にポールや木などの目印をたてる。
すぐに雪崩ビーコン(無線機)などを用いて、捜索する。
見つかれば、直ちに掘り起こして救急処置を行う。
<自分が雪崩に巻き込まれた場合>
雪崩の流れの端へ逃げる。
仲間が巻き込まれないように知らせる。
身体から荷物を外す。
雪の中で泳いで浮上するようにする。
雪が止まりそうになったとき、雪の中での空間を確保できるよう、手で口の前に空間を作る。
雪の中でも、上を歩いている人の声が聞こえる場合があるため、聞こえたら大きな声を出す。
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