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『クイズ用語辞典』について

 大学時代、クイズ番組の裏取りバイトしていました。インターネットが今ほど充実していなかった時代で、さまざまな辞典、専門書のコピーを貼り付けて提出しておりました。バイトの打ち合わせをしていたのが梅田の喫茶店。裏取り資料を提出すると、僕は、その場でもらった現金支給のバイト代を握りしめ、そのまま阪急の紀伊国屋書店に直行していました。裏取りに使える資料として、また、自分の問題制作に役立ちそうな本を数冊買って帰宅するルーティンができあがっていました。
 梅田の紀伊国屋書店は、間違いなく、人生で最も足を運んだ書店です。誰かと、梅田で待ち合わせしたときは、数十分早く行って、本の森の中を散策していました。この頃からずっと、大型書店はパワースポットです。
 あれから長い年月が経過し、思い出深い書店に、自分が関わって表紙に名前が記された本が平積みされていました。そりゃ、感動するよね。

 前置きが長くなりました。1年半前から作業を進めていた『クイズ用語辞典』がようやく出版されました。積もる話は山ほどありますが、簡単に、出版の経緯や、執筆メンバーとしての思いなどを記します。

・本が誕生するきっかけ
 あとがきに書いています! 一応、発起人です。詳しく知りたい方は、宴席などで聞いてください。

・主な対象
 クイズに興味がある全ての人を対象としているのですが・・・
 ①新たにクイズを趣味として始めたい人
 ②昔からクイズ番組が好きな人
 ③いわゆるクイズ界の人々

 僕のイメージは①6割②3割③1割というイメージです(他の著者とは、だいぶ異なると思います)。なので、基本的にはビギナー向けの本だと思って下さい。

 この5年、10年でクイズを取り巻く環境や、クイズカルチャーは広く普及が進みました。
一方で、クイズを実際にプレーするという意味では、まだまだ発展途上です。僕の理想は囲碁、将棋などを飛び越えたメジャーなアクティビティになることです。スアールやソーダライトのような店を、カラオケボックスや雀荘のように普通に街で見かけ、オセロやゲーム機が家庭にあるように、一家に一台早押し機があるような世界を目指しています。

ただ、クイズをプレーする環境は大きな塀に囲まれている気がしています。一歩目が、入りにくい。今回は、その塀の中のカルチャーを、外側にいる人向けに紹介するような本です。
実はクイズの世界は専門用語が数多く飛び交っていて「紙」「赤プレ」「地蔵」「指問題」などは一般の人が聞いても、まず分からないと思います。このあたりは、ビギナーの方にとって実用的だと思っています。
 
クイズに興味を持っている人はすごく増えた印象ですが、実際に足を踏み出して、スアールやソーダライトに来る人、サークルに参加する人って、興味を持った人の1%もいないと思います。みんはやをする、本を買って読むという行為は、とてもハードルが低いと思っていて、1人でも多くの方のきっかけになるように、願っています。

②の方へ
 視聴者参加のクイズ番組がなくなっても、クイズ番組は人気をずっと集めています。「クイズ番組が好きな人」はそれこそ日本中におり、今回の本でも、なつかしのクイズ番組や司会者、解答者にも数多く触れました。とはいえ、全て収容できるはずもありません。「国盗りゲームがあるのに、ひらめきパスワードがないやないか!」など怒号が聞こえてきそうですが、お許しください。
 また、他の項目と重複するものは見出し語として挙げていないパターンもあります。「大橋巨泉」が見出し語にないのは「クイズダービー」「まるごとHOWマッチ」の項目に含まれるため、などです。

③の人に向けて。
 クイズ界にどっぷり漬かっている方、クイズに一家言ある方が本を手に取ったとき、少なからずモヤモヤした読後感を抱えると思います。そのほとんどが「何でこの単語は載っているのに、これは載っていないの?」「この語釈、主観が入りすぎているやろ」というものだと想像しています。今回は、オープン大会、サークル文化も紹介したくて、さまざまな言葉にも触れおり、ものすごく内輪なネタもあります。
 掲載する単語について、僕が最初に考えたのは「クイズが好きな全て人にとって、最大公約数となる本」でした。しかし、作業に取りかかってわずかな時間で、不可能と悟りました。クイズをどのポジションから見ているかは人によって異なり、クイズへの関わり方は千差万別だからです。テレビクイズが大好きな人もいるし、オープン大会に情熱を注ぐ人もいるし、一人で楽しむ人もいれば、コミュニケーションを重視する人、いろんな立ち位置が存在します。「最大公約数を目指す」ことは可能だけれども、実現はできないと割り切って、執筆作業を続けました。
また、上記のような最大公約数にとどめたような本は、読み物としてウィットからかけ離れることにもなります。読んでいて面白いものを目指すために、主観的な表現も多く入っています。「言葉の定義を記した辞典」という側面もありますが、「クイズを題材とした読み物」として手に取ってもられれば、幸いです。このあたりの著者陣の思いを、伊沢(敬称略)が書いてくれた巻末寄稿が代弁してくれています。あれだけしゃべれるのもすごいけど、文才も天才的なのよね。すごい。

クイズに関してさまざまな関わり方が生み出され、「問題を業者に提出する」というクイズ作家以外の選択肢が、クイズ関連職業として成り立てばいいな、と感じています。この本の誕生もその一つかもしれませんね。

まとまりませんが、おしまい。

(余談)
▽サインについて
僕なんぞのサインなど、いくらでもさせていただきますが、勝抜杯本番中は1分1秒を争うタイムスケジュールなので、難しいかも…。懇親会の会場だと余裕があると思います。他の著者や、イラストレーターのルキさん含め、著者の多くが揃うはずです。

▽勝抜杯
 オープン大会を飽きずに続けておりまして、次回が第23回大会です。
 本番が4月29日、エントリー締め切り22日です。独自性を存分に出していますが、しっかりと競技クイズの大会にします。おじさん世代が問題をつくって、オープンをやるからこそ生まれる価値はあると思っています。
レベルが超絶上がっている学生プレーヤーも、関西のトップ層が来てくれるので、どこまで対応できるか、楽しみです。エントリーはこちらから。
https://katinuke23.blog.jp/

では!

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