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中国という国(政府・国民)が目指しているもの望んでいるものとは何か?(2)


前回の話はこちら(1)
https://note.com/kathikun19901990/n/n7e9d88648476


1.強烈なリアリズム


中国語ではいわゆる「格局」というものがあるが、中国が特にこだわるのがこれである。言うなればパワーバランスをどう配置するのかということなのだが、西側の諸外国とはかなり違うところに重きが置かれるのが中国である。

国際関係論が理論的な普遍性を追求してきたのに対し、中国のリアリズムははるかに人間的な要素が強く、権謀術数の渦巻く場所として世界を描く傾向にある

要はサバサバしている西側諸国と比べ、中国のそれは異様に人間臭いものであるということが言えよう。

また、歴史的な観点で中国と言う国を見ると、通史であったり正史には非常に偏った記述がされる傾向が強い。

中国では歴史は通常、勝者によって書かれるものであり、自分は善、敵は悪という前提が強調される傾向が強い。

これは、前回のNOTEにも書いた「常に不安におびえている」というところに通じるものでもあるが、要はいわゆる性悪説に基づいた他人(他国)への異常なほどの警戒心なのである。やるかやられるか、このような世界で生き抜いていく必要のある社会の為、「国」という存在自体が重層的で流動的であるが故に、自国内でも安心するような場所が存在しないのである。

つまり、このような国では、自国を脅かす敵国の存在が必要以上に気になり、その不安を解消するために備えをあつくする必要がある。そして、その脅威がなくなるまで(目の届く範囲内)不安は消えない。

中国人が欧米列強や日本などに食い物にされた苦い経験を重要視するのは、中国が国を閉ざし、内ばかりに注力するあまりに弱体化してしまった為だと考えていることは、中国が考えるリアリズムを理解する上では非常に重要だと考える。

これを理解していないと、何故諸外国から見て中国はそこまでそんな可能性が殆どないような問題に対して、莫大な資金と労力を投入し、ソト(海洋)からの脅威を警戒し続けているのか全く理解できないであろう。


2.中国共産党の組織慣習


他国が中国に対して発する外交メッセージなどを受けて中国のスポークスマンたちは直ちにその内容に対して憤激し、反論をするというのが中国のメディアでは普通に見られるが、そのニュースを見た国民たちが「いいぞいいぞ!祖国万歳!」とやっているのを我々外国人が見ていてピンと来ないことも多い。なぜそこまで躍起になって反論するのかと思ったこともある方もいらっしゃるだろう。ここで中国共産党にとって大事なことは、筆者が示す下記のようなものである。

国際的な圧力に耐えながら、人類の明るい未来のために戦っている中国共産党という英雄的イメージが、中国共産党の執政の維持には論理的に必要

人類の明るい未来のために、というのが重要である。中国という国のためだけに戦っていないということをアピールすることで、国民の支持を得ようとしている。実際にそれで支持を得ているのだから成功と言えば成功だろう。

ただ、実際問題彼らの「ロジック」には往々にして矛盾がはらむことがある。それを指摘されると烈火の如く怒り狂い強硬な手段を使ってでも中国はそんなことは絶対に許さないぞと。

中国人は、自分たちが持つ情報でうまく説明できない事象が生じると、それを他国の陰謀と解釈しがち
中国が他国の「陰謀」を主張するときには、国内に流れる情報の偏りに原因があることが多い。


3.中国が目指す平和とはどんなものなのか?


中国という国が「平和」を主張する際、それはどのようなものであり、どうすれば彼らの心の平安を得ることが出来るのだろうか。この著書では下記のように指摘されている。

かつての朝貢国があるくらいの領域から、「我」を脅かす勢力の除去を望んでいる。これは、中国が近年、制裁行動を打ち出した国の範囲ともほぼ重なる。
中国にとって、自国に対抗しうる勢力が、自国の「周辺」にプレゼンスを持つことは脅威と映る。それが除去されれば、中国にとっての平和は達成されたことになる。

これはまさに隣国である我が国と我が国の各地に点在する米軍基地がもろに当てはまる。つまり、

米国が中国の近隣国との同盟関係を解消して域内から手を引き、日本が弱体化し、ロシアやインドが台頭しないままでいるのが中国にとっての理想

ということになる。現状、台湾問題が絡み更に複雑化している近隣国の中国の周辺を「脅かす」存在が際立っており、彼らとしては居ても立っても居られないのである。故に、彼らはその脅威を除去する為に、あらゆる手段をもって対抗しようとしているのである。

但し、ここで彼らが忘れてはいけないのは、中国が考える中国にとっての「平和」が、今の世界で実現する可能性はまずないということである。ここが中国及び諸外国における決定的な溝となっており、埋まらない溝として存在し、中国脅威論が沸き上がっていることに彼らは気づいているのか気づいていないのか、もしくは気づいているが気づいていないふりをしているのかは正直分からない。


今日はここまで。ぜぇーうぇー(上海語でさようなら)





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