ツインシグナルに学ぶストーリーの作り方①
物語を書きたいという人は多くいると思います。
ストーリーには必ず構成、構造があります。またストーリーを進めるための要素の一つがキャラクターです。ストーリーテリングとは、物語を読者に説明する手順であり、また覚えやすくするための手法です。
非常によく作られたストーリーからは以上の事柄が学びやすくなっています。
ここでは少年マンガ『ツインシグナル/TWIN SIGNAL』を参考にストーリーの組み立て方を簡単に説明します。いわゆる伏線の張り方、設定の妙が鮮やかな作品です。構成は緻密で、掘れば掘るほど関係性が見えてきます。物語とは、このように要素を折り合わせるのだという見本のような作品を徹底解析。
※イラストの使用許諾は得ています
※完全ネタバレ記事です。原作未読の方は御注意下さい
原作は現在、朝日ソノラマ文庫から全11巻で発売されています。エニックス版もありますが、ソノラマ版は大幅に絵が描き直されており、ソノラマ版の方がオススメです。
配信書店によっては、毎日少しずつですが全話無料で見られるところ(ピッコマなど)もあります。
また続編もクラウドファンディングで進行中です。
上記の続編BiennialはTWIN SIGNAL本編の2年後という設定です。現在は無料でネット上に公開されています。
私は『TWIN SIGNAL』のノベライズを執筆した北条風奈と申します。ノベライズも電子書籍で配信中です。
小説は全10巻でもちろん各巻ごとにも買えますし、いくつかのセットもあります。
最終刊のvol.10は角川BOOK☆WALKERさんでの御購入のみ、特典が付随します。
キャラクターのネーミング
Twitter/Xで公開していた構造解析に説明を加えていきます。
キャラクターの名前ははっきりいうと何でもいいのですが、読者が一番多く触れるものでもあるので、作品の雰囲気、世界観を左右します。また名前を工夫しておくと、読者が多くの名前を覚えやすくなったり、関係性が分かったときに感動させることもできます。
その例を見ていきましょう。
TWIN SIGNALは誰でも読めるほのぼのとした雰囲気ですが、人間形態ロボットが登場するれっきとしたSFです。主人公シグナルについては後述します。
キャラクターの名前が星に関わる言葉で統一されているのは、SFらしい雰囲気を作り、また実在する星から名前をとることで覚えやすくなります。
作中には非常に複雑な経緯で名前が決められているキャラクターも存在します。最古のロボットプログラム、A-C〈CODE〉の妹たちは四人。最古の女性ロボットプログラムA-E〈EMOTION〉、エモーションを基にしたプログラムをボディに実装した双子のロボットAE-1α〈ELARA〉、AE-1β〈EUROPA〉、そして開発者Dr.カシオペアの養女、児玉みのる、です。
ぱっと見るとロボットたちのイニシァルがEで統一されていることに気づくと思います。コードの妹はたくさんいるけど、Eで始まるロボットたちだ、と覚えれば、読者は3人いることを気にしなくてよくなります。これが一つの工夫です。
では、みのるだけイニシァルが違うのでしょうか。実は揃っているのです。
Twitter上でアンケート形式でクイズを出したところ、皆さんの答えはこういうふうに。
作中でみのるは結婚しておりますし、諸事情によりカシオペア博士の養女になっておりますので、現在の名前はみのる・カシオペア=音井となります。児玉は養女に入る前の姓なので旧姓ということになります。
正解はこちら。
こういった仕掛けは読みこんでいるファンの方に楽しんでいただける要素であり、分かったときに驚きや新しい感動を呼び起こすことができます。
大事なことは、この仕掛けに気づかなくても読めるようにしておくことです。
細かい仕掛けは分かる人だけ分かってくれたらいいと、書く側が割り切る必要があります。
主人公の立て方
TWIN SIGNALの主人公はシグナル。A-S〈SIGNAL〉です。
ロボット工学の天才、音井信之介教授がほぼ一人で作り上げたワンオフモデルであり、材料工学の粋とも言える内帰性調律鉱態MIRAと斉調化陽光群の収束による珪素質性動力再生晶体SIRIUSによる初めてのロボットです。
MIRA特有の挙動により、小さくなったり大きくなったりしてしまいます。
冒頭のツイートにあるように、ネーミングと設定が一致しており、気づくと覚えやすくなります。
またシグナルには外見のモデルである製作者、信之介の息子・正信、同型の試作機/兄に当たるパルスが存在します。この三者の関係がしっかりしていることで、生まれたてで本人にはエピソードの少ないシグナルのキャラクターがはっきりします。
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