Fate/Revenge 11. この世全ての悪-②
二次創作で書いた第三次聖杯戦争ものです。イラストは大清水さち。
※執筆したのは2011~12年。FGO配信前です。
※参照しているのは『Fate/Zero』『Fate/Staynight(アニメ版)』のみです。
※原作と共通で登場するのはアルトリア、ギルガメッシュ、言峰璃正、間桐臓硯(ゾォルゲン・マキリ)です。
※FGOに登場するエンキドゥとメフィストフェレスも出ますが、FGOとは法具なども含めて全く違うので御注意下さい。
丘の上で、黒い竜がうぞうぞと蜷局を巻いていた。三本の首から有毒な白煙を吐き、ランサーが近づくのを防ごうとしている。不穏な槍を振り回し、飛びかうランサーを捕捉するのはアルトリアにも難しかった。
「ランサー、止まれ! 状況が変わったっ」
「変わったって、どういうふうに?」
アルトリアが上空に向かって呼ばわると、すでに隣にランサーが立っていた。
「!」
アルトリアは反射的に飛びすさり、それからどっと冷や汗をかいた。戦場の習いで斬られるのではないかと思ったのだ。だがランサーはにっこりと微笑んで槍をくるくる回す。槍の周囲には白煙がたちこめず息ができた。
アルトリアは不思議なものを見るように槍を見た。
「聖杯戦争はいったん中止だ。貴方が戦っているあれは英霊ではない」
「さもありなん。あれはどこからどう見ても人間ではない。僕が人間に間違われたのはまだしも、あれはあるまい」
「!」
どしゃっと音を立てて、二人のいた場所に雷が落ちる。二人は同時に左右に分かれて飛びすさる。黒い竜ははばたき、猛烈な風を巻き起こす。舞い上がる埃は接近戦を行わざるをえない二人にとって大きな妨害となった。アルトリアは埃を避けて背後に跳ぶ。ランサーは特に目を閉じるでなく、竜を睨みつけている。
アルトリアは声を張り上げて叫んだ。
「そなたのマスターも限界だ。早く片を付けよう!」
「確かに」
ランサーが煙の向こうで笑っていた。
「ウォルデグレイヴを死なせては寝覚めが悪い。致し方あるまい。先に行くぞ」
「えっ!?」
ランサーが竜に向かって大地を蹴る。アルトリアは魔力放出で埃をよけながら顔を上げる。アルトリアはランサーに援護してもらい、さっさと『約束された勝利の剣』を放つつもりだった。それなのにランサーの奴……戦いはじめると制御のきかないサーヴァント、ウォルデグレイヴの言葉はこういうことであったか。歯噛みしても遅い。
「ランサー、貴様……人の話を聞けと言うにっ」
ランサーが竜の上空で立ち止まる。竜は召還された位置からほとんど動けないようだった。激しい攻撃で近づくのは難しいが、逃げないのならばこちらの攻撃も簡単だ。セイバーはじっとランサーの戦いを観察することにした。ここから『約束された勝利の剣』を放つこともできるが、その場合、ランサーともども敵が吹っ飛ぶとは限らない。最悪のケースとして戦友たるべきランサーのみが昇天し、あれだけが残るということにもなりかねない。
ランサーが上空で槍を構え、狙いを定めた。
「悪しき竜よ。そなたもフワワの二の舞にしてやろう。我が友の手にかかり死ぬは幸福ぞ」
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