遠回りしてた昨日を越えて 現在地について24
新生エレファントカシマシ、すなわちエレファンツのインスタグラムアカウントが開設されて、動画がアップされたというお知らせに居ても立ってもいられず、音を出せない環境の中でこっそりと、楽しそうに嬉しそうに笑い転げ、社長が手ずから淹れるお茶で乾杯する4人を見た。無音で。頭の中ではこの歌が鳴っていた。
この “going my way” が収録されているアルバム『宮本、独歩。』は、こんな歌詞で始まる。
4人が4人で4人らしくいられる場所を探し求めて、
たどり着いた、約束の国。hot place。
ここが目指した場所、そして始まりの場所。
そんなことを思いながら、今度は音を出して見た。何度も何度も。
上に引用した3曲はソロ楽曲。
でも、乾杯動画のバックに流れるのは、もちろんエレファントカシマシ。
“桜の花、舞い上がる道を” と “俺たちの明日”。
この2曲。
そうか、新たな旅立ちを彩るのはこの2曲なのか。
“桜の花、舞い上がる道を”。
最高で最幸の4人の笑顔の輝きから、ある言葉が耳にとまり、頭の中をめぐる。
めちゃくちゃかっこいい。
かっこよくありたいと思っていても何も行動に移せずに、ぶざまなまま甘んじている人はいくらでもいる。人間とは本来ぶざまなものなのだから、かっこよくあるためにはしっかりと信念に基づいて行動しなければ。死ぬまでの有限の時間をしっかり生きなければ。
彼らがかっこいいのは、人間は本来においてぶざまな存在であるという自覚の上にしっかりと立っているから。だからこそ、素のままをさらけ出してもかっこいいのだ。だから、常に《今》が最大に輝くのだ。
悲しい思い出もつらかった日々も、《遠回り》してた昨日も、越えてゆく。
4社目となる現在のレコード会社に移り、いわゆるユニバーサル期の封切りとなる通算18枚目のアルバム『STARTING OVER』に収録されている “FLYER”。イシクンのXの投稿でもこの “FLYER” から歌詞が引用されていたが、消されてしまったところをみると無事に《光射す丘の上=hot place》で落ち合えたのだろう。だがその、遠回りでもいいから今日から明日へ、という歩みは、次のアルバムではもう過去の気持ちになっていく。
遠回りでいいと言えたのは、もはや昨日のこと。‘今日を越え明日へ’ と歩みを進めるために ‘遠回りしてた昨日を越え’ る。
そしてさらに、その遠回りをも越えるのは、休養から復活を遂げて《光り輝くあの場所=闇を内包する虹色の日常》へと帰る決意を高らかに歌い上げる “Destiny”。
こう辿っていくと、この時すでに、30周年を終えたらソロ活動を開始しようと決意していたのではないかと思えてくる。人生の残された時間に追い立てられてソロへと踏み切ったのはこれまでも語られてきたことだが、今日を越え明日へ、遠回りしていた昨日を越えて、歩んでゆくたしかな道程が、《遠回り》をキーワードにつながるこれらのフレーズに凝縮されている。
冒頭に引いたソロ楽曲 “going my way” は引用した歌詞で1番が始まるが、続く部分に《遠回り》がある。
エレファントカシマシの歌詞の「俺」は宮本自身を指していると感じるけれども、ソロ楽曲の歌詞の「俺」は、もしかして…、宮本個人ではなくエレファントカシマシ4人のことなのではないか…。
そんな感覚が湧き上がってくる。
嬉しそうに楽しそうに、これまでもそうして来たように。
何も変わらないようでいて、年月だけがたしかに進んでいて。
苦楽を共に歩んできた4人、いつもの場所でいつもの顔で。
いつものお茶会、門出の宴。
輝く時は今、今の我らに乾杯。
まさに、このインスタグラムアカウント開設と記念すべき初投稿動画にぴったりの歌詞ではないか。
そんな俺(たち)にもう一丁祝福あれ!!
もう、何丁でも何万丁でも祝福します!!
笑いとあれ。幸あれ。そして、勇気と共にあれ。
新しい事務所へのお引っ越し、おめでとうございます!!