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36年目のファイティングマン 現在地について27

2024年9月15日(日)
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA

1. 今宵の月のように
2. 悲しみの果て
3. デーデ
4. 星の砂
5. 珍奇男
6. RAINBOW
7. ガストロンジャー
8. 俺たちの明日
9. ファイティングマン
 


いやー、凄かった。

やりやがった…!!
やってくれた…!!!
聴衆の度肝を抜く
もの凄いロックバンド!!
これぞエレファントカシマシ。


フェスのたびに、世間に見つかってしまう。
「え、名前と代表曲しか知らなかったけど、
 こんなにかっこいいの?!
 こんなに可愛らしいとこあるの?!」
と思わず唸らせる魅力。
ゴリゴリにかっこいいロックミュージシャン全開にしたかと思えば、袖ステージの端から端まで走り回ったり(しかも左右平等に、端から逆の端の端まで必ずシンメトリーなのも好感度最強)、イントレと戯れて愛想を振り撒いたりするから、初見の皆さんはさぞ驚くだろう。

というのは、ソロ宮本浩次のステージでのお話。


1曲目、“今宵の月のように”。
ソロではアコギだけど、エレカシではこのところエレキギター。
バンドでは歌えなかったという時期も過ぎ去って、何か感覚をつかんだのだろう。歌手としてではなく、ロックバンドのフロントマンとしてここに立つには、エレキの方がしっくりくる。(アコギパートはサポートギターのコジローくんが弾いてくれるし)

開演前のリハで、丹下さんがセンターマイクの前でこの宮本愛用のストラトを調整していた。その音を聴きながら、“yes. I. do” か “No more cry” を演ってくれるかな、なんて期待していたんだけど、

…すいません! わたくしが甘うございました!!(土下座)
そのストラトくんは、左ステージで脱ぎ捨てられてジャーン、、、と鳴き、右ステージで置き去りにされそうになり、中央ではドン! と地に突き刺されることになるのでした。。。

1曲目で早くも男椅子が登場。
座面に立ち上がり、背もたれに足を掛け、拳を突き上げて、聴衆を指差す。
は〜、かっこいい。。。
めちゃくちゃ声がよく伸びる。椅子から降りて、大きく手を振る。ステージの端から端まで行って、柵にヒョイと足を掛ける。腰高の柵ですよ? なんでそんなにすんなり足が上がるの! といつ見ても感心しきり。
大草原の後ろの後ろまで俺たちの歌を届けるぜ! の挨拶。


2曲目、“悲しみの果て”。
「みんなに捧げます」
お決まりの口上から
「ワン、ツー、スリー、フォー!」のカウント、
力強い ダダッ ダダッ♪

ああ、この音! この音!!

拳を突き上げながら終始ウルっとしまくり。
曲が終わって一瞬、ほんの一瞬、ふわっと、それはそれはふわっと優しい微笑みが。喜びなのか、満足感なのか、
…いやこの後の展開を考えると、ここからだぜ…ふっ、…な微笑だったのか。。。

「名前と代表曲しか知らなかったけど」
一見さんが口々におっしゃる決まり文句。この〈知名度〉と〈ヒット曲〉があるということが、実はとんでもなく強い吸引力をめちゃくちゃ発揮していたりする。それは間違いない。
そして昨日も、このメジャーな2曲から始まった。


だが、ここからが違った。


明らかに、蘇我や他フェス(ワイバン、ラブシャ)のソロ宮本浩次のステージで興味を持った人たちの度肝を抜きに来てた。


カウベルが長めの拍を刻む中、
「お前らに捧げるバラード。デビュー曲。聴いてくれ!」
3曲目、“デーデ”。
歌の入りタイミングがギターのリフと合わなかったけど、速攻で合わせてくるバンド。さすが。

「金持ち一番強いのは」ってところが超絶に可愛い。「偉い」じゃなくて「強い」なのがいい。大貧民でジョーカーが一番、次いで2が強い、みたいな意味の「強い」。最強のロックバンドの、これがデビュー曲。
宮本浩次というひとは、対比と準えと反語の天才だと思うんだけど、お金があれば友達なんていらないさ、と歌いまくるこの姿に、その萌芽があると言えなくもない…か? などと思う。

「金があればいいーーーーーーーーーー!!!」

と絶叫。挙句に

「稼いでから言え! バーカ」

と凄んで大草原を睥睨。
ソロ宮本浩次に惹かれて来た皆さんは、さぞかし吃驚したことでしょう。

ふふふ。これが我々エビバデが愛してやまない我らが宮本浩次なのですよ(ドヤ顔)。

アウトロで
「金があればいいーーー!!!」
とリフレイン。ジャジャジャジャン!とバンドが合わせてキマる時もあるけど、ここは打合せなしのアドリブだったのか、バンドが次の曲 “星の砂” を一瞬フライングしてしまい、制止してリフレインを歌いきって仕切り直しした次の瞬間、ミヤジがトミに向かって

「気合いが足りねーんだよ!!
 気合い入れて叩け!!(怒)」

おおお、このエレカシの空気感よ…(喜)
リフレインを察知して合わせろよ!ってことなんでしょうかね…。

この関係性が、ここまでの4人の人生を切り開いて来たんだよな(涙)。。。


仕切り直しの4曲目、“星の砂”。
入りがごたついたからなのか、敢えてなのか、リズムが先走って歌が遅れる。んん、あれ? あれれ? と思っているうちにぴたりと合ってくる。一朝一夕では成し得ないグルーヴに胸熱。
「ハレンチなものは全て隠そう」と左手で両目を覆っているのに、指の隙間から覗くの可愛すぎだろ!
そしてサビの「ほっしっのっ、すなっ!」と連呼するはずのところで、

「民衆は耐えよう」

を執拗なまでに繰り返す。
「得意なんだろ、そういうの」と嘯く。

ああ、このひとはまだ鬱屈した何かを抱えている。政治なのか風潮なのか何なのかわからないけれど、まだまだ戦うぜ、とこうして私たちにサインを送って来てくれてるんだ、と嬉しくなる。


5曲目、男椅子が中央に据えられてアコギ登場。
これは “珍奇男” だ!
どうしたわけか、いつもに増して挑戦的で尖っている。語気が強い。表情が怖い。
もの凄い気迫に圧倒される。ステージ上では、コジローくんが笑顔のままフリーズしている(めちゃくちゃ良い表情)。

どこかで入れたい「2番!」の掛け声はここで。

「机さん〜机さん、私は、ばかでしょうか〜〜」

から

「あなたより偉いのぉーーーーーーー!!!」

に至る歌唱はヤバかった…。
あのひん剥かれた目と滑舌のいい咆哮がいつもの赤と青の照明に炙り出されていたら…と思うと、まだ日が差している時間帯でよかった(よかったのか?)。
唖然とする聴衆にご満悦の「おっとっとっと!おっとっとっと!」。
そこから鬼の形相のまま

「お金をっ!お金をっ!!お金をっ!!!
 投げてねっっ!!!」

…こわ、、、
守銭奴なのはよくわかったから、だからどうか落ち着いてください!
…心の声も届かぬまま、

「ロックインジャパン!!
 俺が宮本だァァァーーーーーーーーーー!!
 覚えとけェ!!!この野郎ォ!!!」

えっ…、待って、あのソロでのお茶目な「宮本で〜す」と同じひと?! ですか?!

ストラトのネックを掴んでゴン! とステージに突き刺したのは(いや、実際に突き刺さったわけじゃないけど)このあたりだっただろうか。
呆然とする聴衆にご満悦の「おっとっとっと!おっとっとっと!」。

動悸がして思わず胸を押さえる。このところ、お年頃のせいか血圧が高くて、装着していたヘルスケアアプリを帰ってから見たら、1分間に80回前後だった脈拍が133回に跳ね上がっていた15時30分のデータ…。


この歌が終わると、ペットボトルのお水を飲み、屈んで片方ずつ靴を脱い…
くっ!!!
うわ…、ここで来たか。6曲目、“RAINBOW”。
靴を脱ぐのに屈んだままの姿勢からの、ロケットスタート。
そして「ふと見上げれば〜〜〜」からメロディーが展開する件り、「心照らす」の「こ・こ・ろ」のリズムに合わせて、シャツのボタンを ブチッ・ブチッ・ブチッ。

あまりの全力歌唱に、もう息も絶え絶え。
初めて生で観たあの日の衝撃が蘇る。
こんなに全身全霊を籠めて、こんなに消耗して、この歌が終わったらこのひと倒れちゃうんじゃないか…ってくらいの魂の熱唱。それが、次の曲ではさらにそれを越えてくる。底知れぬもの凄いエネルギーにただただ圧倒され、ひれ伏すような思いで茫然と拍手するしかできなかったあの感じ。

でも「太陽目指して駆け抜けたヒーロー」は、ソロの “昇る太陽” と表裏一体。とことん自分を追い込んだタイミングで歌うのがセオリー。かっこいいのう…。


7曲目、“ガストロンジャー”。
GO! で演ったこともあって、エレファントカシマシで演ってくれるか注目していた曲。Tシャツ着てきた甲斐がありました(嬉)。
憂うべき状況とは全然考えないけれども、かといって素晴らしいとは思わねえ、とか、良いとも悪いとも言えねえなあ、とか、言いたいことがあるのにストレートには言わず、だがしかし気っ風のいいリズムで次々と捲し立てるのが江戸っ子には気持ちが良い。これを本家本元で演ってくれたのは、率直に嬉しかった。
かなりヘロヘロで長音がきつそうだったけど、高音は惜しまずに出してくる。凄い。

サポートキーボードの奥野さんが要所要所で合いの手のように差し込んでくる短いフレーズが、すごくかっこよくて効果的でしびれました。「BC時代から同じこと言ってんだよ!(ポロロロ〜ン♪)」みたいな。ああ、ミヤジは奥野さんのこういうセンスが好きなんだな、と思ったのでした。

そして、忘れもしない。
右の袖ステージで自分の頬を軽くつねって

「あいつらの化けの皮を剥がしにいくってことを
 俺自身の化けの皮も剥がすってことを
 さっき、自問自答の末、結論しました」

べらんめえ口調から突然の「ですます」。
はー、そうですか…、とこちらも居住まいを正す。
「さっき」って?
もともとの歌詞なのに、さっきのあの “デーデ”? “珍奇男”? と考えてしまう。
ガストがかっこいいのは、正義を叫んでるようで実は何も言ってなくて、正義を気取ってるからかっこいいんだ、駄目な物はそれがたとえ自分自身であっても躊躇なく破壊する、その気概に対して、胸を張ってもっと力強い生活をこの手に掴みにいく以上の何があるんだ!などと思う。
そんなことを感じながら拳を固めている私に対して(ではない)

「いい顔してるぜー!!
 かわいいぜー! かっこいいぜーーー!
 世界中で美男美女がこんなに集まってるのはここだけだ!
 よく見えないけど」

ありがとうございます。明日からも胸を張って生きていきます。


ラスト8曲目はご存じ、“俺たちの明日”。
だけど、曲前の口上がこれまでとは違った。既出なのかもしれないけど、私にはめちゃくちゃ刺さった。

「どうすんだい? もう一丁やってやろうじゃねえか!
 もうひと花、咲かせてやろうじゃねえか!」

そうだった、今日は新しく旅立って初めてのステージなんだ。。。

そう思ったら、正直これまであんまり響かなかったこの歌が、急に愛おしくなった(泣)。
そして、なんとまさかのワイパー。
ミヤジがほんの半拍、片側に手を振っただけなのに、前方エリアが一斉に波を起こす。おそるべき反射神経とチームワーク。大草原にコールアンドレスポンスの大きな虹がかかる(涙)。


今宵の月のように”、“悲しみの果て” に始まり、ラスト “俺たちの明日” で大団円。
ソロ宮本浩次のフェスと同じ流れ。
でも、中身が違う。
「ご存じエレファントカシマシ」と見せかけておいて、
「どうだ!見たか!!これがロックバンド・エレファントカシマシだ!!」
を見せつけた天衣無縫のステージ。
しかも、もちろん MC はない。
なぜなら、言いたいこと伝えたいことはすべて、歌に、歌詞に声に演奏に一挙手一投足にすべて籠めているから。俺たちは、歌で、歌だけで伝えるんだから MC なんていらねえ!な真っ向勝負。

…で終わりじゃなかった。
MC がないかわりに稼ぎ出した持ち時間。
時計を気にしながら、巻いて巻いて!というぐるぐるジェスチャーと共に始まったのは、9曲目、「遅い!!!(怒)」と地団駄を踏んで、まるで鞭を打つ猛獣使いのようにエアドラムを叩きながらリズムを煽り立てる超速 “ファイティングマン”。

ああ、世に出てから36年、
こんなにも聴く人を惹きつけ、こんなにも生きる力をくれて、その力を拳に握りしめているのに、それでもまだ

「お前の力必要さ!!
 俺を! 俺を! 力づけろよ!!!」

と叫ぶんだ(泣)。
足りないんじゃない。もっと力強く生きられるだろ!というエールだ。
力が湧き上がってくる。ありがとう(涙)。


孤高のロックバンドと謳われ続けて36年、独立していよいよ一国一城となった。
さらに近寄りがたい風格の存在となるかと思いきや、その城門は閉ざされることなく広く開け放たれていた。去り際の「お尻出してブー!!」に思わず笑っちまって、ガチガチだった身体からスーッと余計な力が抜けた。

わかりやすくなんてなくていい。
昨年リリースされた “yes. I. do” も “No more cry” も、もはや彼らにとっては最新ではないのだろう。


最新は、いつだって “ファイティングマン” なのだから。



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