転職相談っぽいことをしていたら結婚支援サービスみたいなことになっていた話
「彼氏からプロポーズされたけど、彼、アルバイトなんだよね。出直して来いって断ったよ。」
そんな台詞を耳にしたのは、3年前、仲間うちでバーベキューをしていた時だった。
竹を割ったような性格という表現があるが、その表現は彼女の性格を表現するために作られたのかと思われるくらい、さばさばした性格のTさん、農業大学校時代の同期の女性だ。
まさに、竹を割る、パッカーンって音が聞こえてきそうな一言だった。
最高にうまい豚ロースの炙り焼きを肴にビールを煽っていた僕の耳がピクリと動いた。
ちなみに僕がつまんでいた豚ロースは、農業の傍ら、4tトラックで、さばいた豚を運ぶというアルバイトをしている、これまた農業大学校の同期が格安で仕入れてきた豚である。
ほろ酔い加減の僕は、先ほどの竹を割ったような性格そのものの彼女、の近くに折りたたみチェアを持って移動した。
「で、彼がきちっと就職したら、結婚するんだ?」と僕。
竹割の彼女、「うん。ま、そうかな。彼氏、デザイン科の大学院出てるんだけど、就活へたくそでね。今は、ガソリンスタンドでアルバイトしてる。」
僕、「???」
僕の想像力が乏しいからなのか、それともビールの量がそこそこいっていたから、思考がつながらなかったのか。デザイン科の大学院卒とガソリンスタンドのアルバイトのキーワードをうまく頭の中で接続することができなかった。
いや、職業に貴賤はないので、今の仕事をどうこういうつもりはない。
ただ、僕は、その状態でプロポーズする彼の素朴さに心を打たれたのだ。
僕も今まで、他人からみて予測不可能な行動(とくに職業絡み)をとって来た身なので、彼の思考回路は理解不能なものの、より深いところで共感していた。
そして、彼女にこう提案した。
「良かったら、彼の履歴書と職務経歴書を送ってよ。添削するよ。」と。
そして、早々にメールで送られてきた履歴書と職務経歴書の添削をし、送り返したところ、彼から返信が来た。
どこまでも実直な彼である。
そこで僕は、履歴書の自己PRと面接の対策をするために、以下の質問リストに彼女と相談して答えてほしい。そして、完成したら見せてくれるように。と頼み、最寄りの駅前のカフェで待ち合わせをした。
そのやりとりの3日後、カフェで会ったのが、6月21日。
彼女と一緒に考えて記入してくれた質問リストをもとに、どんな仕事を選べばいいか、面接ではどう話せば彼の良さが伝わるか、2時間にわたり語り合った。
そして、翌月、7月15日、彼からメールが届いた。メールのタイトルは、
『内定を頂けました』
でしょ。君のような実直な性格の若者がいたら、企業は放っておかないよ。
ただ、その内定が出るまでの早さは想像を超えていたけど。。
そして、その年の年末、農業大学校時代の同期の忘年会。
竹を割ったような性格そのものの彼女が、彼女らしい、きっぱりとした口調でこう言った。