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二十歳の集い(旧:成人式)祝辞 「自立」とは

 昨日は、初めて卒業学年を務めさせていただいた卒業生の皆さんの、二十歳の集い(旧:成人式)に招いていただきました。そこで述べた祝辞を記録としてここに残します。(一部、加筆や修正あり)

 成人、および二十歳を迎えられたこと、まことにおめでとうございます。当時5・6年生という、可愛らしくも、だんだんと逞しくなっていかれていた皆様が、こうして二十歳という人生の節目を迎えられたことを私も心から嬉しく思います。

 成人されるにあたって、「自立」という言葉を多くのみなさんが意識されているかと考えます。さて、「自立」とは何でしょう。私の恩師の言葉をお借りすると、「自立」とは、一人で独立することを指すのではありません。たくさんの人々が支え合う社会の輪の中に、自分も加わることを指します。

 家庭科を専門とする私の視点で言い換えるとすれば「働いて収入を得ること。その収入を使って衣食住・消費・子育て・介護に関わること」。全てが誰かの手で紡がれた輪の中で生まれるものです。それに自分の力で関わっていくこと。それが、「自立」です。

 例えば今日みなさんが着ている素晴らしい着物やスーツ。これらのの素材は綿花や絹、ウール、化学繊維です。その原料を育てた農家さんや採集に関わった皆さんがいるということ。それを運んだ方がいるということ。それを加工して織物にされた方がいること。染められた方がいるということ。それをデザインし、衣服や飾りにされた方がいるということ。それぞれの方が使う道具や機械、建物をつくったり、販売したり、仲介をしたりした方がいるということ。土地の売買や整備に関わった方がいるということ。そこで使われたエネルギーを生産し・届けた方がいるということ。

 そうしてできた今日という日を迎える大切な宝物を用意するために、命の一部を使って収入を手にし、あなたに贈った人がいること。

 衣服の分野だけでも、ここには書ききれない、想像しきれないほどの人がいます。その、人々の輪の中にみなさんも「自立」し、飛び込んでいきます。

 不安なこともあるでしょう。そこで、みなさんの「自立」の支えになる3つの言葉を贈ります。これも恩師より受け継いだ言葉です。

「自己開示」・・・自分をすすんで伝えましょう。例えば好きなもの。趣味で結構です。職場を共にするみなさんにもそれぞれに好きなものがあります。共通の趣味が繋がれば、自然と心がほぐれて、自分の力を仕事でも発揮することができるでしょう。今の嬉しい、悲しい、つらい、励みたい。そんな気持ちを表すことも大切です。同じ道を歩むどなたかが必ず力を貸してくださいます。

「他者貢献」・・・・人のためになることをすすんで行いましょう。先に述べた社会の輪も、誰かが誰かのためにしていることが紡がれてできたものです。誰かのためになることが需要と供給を生んで、それが収益を生み出しているのです。だから、人のために行動することは、とても大切な行いです。社会の輪に飛び込んでいく心構えとして、この言葉も心に残しておいてください。

「感謝」・・・感謝の心をもちましょう。そして、伝えましょう。もっと詳しく表すならば、感じ取るところから始めましょう。「ありがとう」とは漢字で「有難う」と書きます。本来「有ることが難しい」ことをしていただいた。だから「有難う」。やって当たり前と思うことがあっても、やってもらって当たり前ということは一つもないように、私は考えます。だからこそ、心からの「ありがとう」を、感じた人に伝えてください。

 祝辞のはずが、どうも説教くさくなってしまいました。しかし、やはり愛おしいみなさんに幸せになってほしいという親心で、伝えられずにはいられないのです。

 今日は「自立」という言葉を軸に、「自己開示」「他者貢献」「感謝」という3つの教えを、恩師から皆さんへと届けました。この言葉は必ず皆さんの力になってくれます。これを私からの祝辞とさせていただきます。

 本日は、まことにおめでとうございます。


 書いていたらだいぶ増えました。もしこのページが卒業生に届いたらと考えると、思いが強くなってしまいました。だって、一人一人が大切な存在ですもの。

 このメッセージが卒業生の皆さんのお役に立ちますように。そして、卒業生でなくても、ここまで読んでくださった方々のお力になりますように。心からそう願っています。