9章:(男の子の話)僕は救う
さびれた街道に子供が座っている。住む家がないのだ。
学者風の痩せた人が通りかかった。
学者風の人は子供に言った。
「おいで。」
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きれいな服と食事、そして物語風にした子供が楽しめる教育(魔女はとても教えることが得意だ。)、毎日を過ごす暖かい部屋と眠る場所、そして小さな子猫、
魔女は子供に全て与えた。
わあ、と子供ははしゃぎだした。風呂に入れて髪の毛を整えて服を着せてやればなかなか可愛いものだった。
子供は男の子だった。
男の子は魔女に質問をした。
「他の子にも同じことをしてあげられないの?」
「無理だ。石には限りがあるから。」
「どうして僕は助けたの?」
「目の前にいたからだ。」
魔女の傍らには病気の猫がいる。
これを見て魔女はどう思うか聞いた。
男の子は「かわいそう」と答える。
「そうだな、だから看病する。だが、他にも病気の猫はたくさんいる。それにこんな年寄りの猫よりもっと若い猫を助ければ長く生きられる猫もたくさんいる。だが歩いてそこまで行って看病しようとは思わない。」
それを聞いた男の子は
「それでも僕は助ける」
と思った。
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男の子は町中の猫を集めて、飼おうとした。町の猫は、世界中全ての猫ではないが、男の子にとっては、自分が歩いていける範囲が世界のすべてだった。それ以上のことは深く考えていない。
魔女には魔法の石が足りなくなるので私からは石をあげられないと断られた。
「しかし、お前が石をつくるというなら、それと交換してやろう。おまえには石をつくる素質がありそうだ。石が生まれるように念じて見なさい。」
男の子は石をつくれた。ドクッと緊張が走り、高揚感のような恐怖のようなどちらとも言い難い感触を得た。最初に感じたのは怖いという感情だ。
しかし男の子は猫を飼いたかった。
何度も石をつくるうちに恐怖感はなくなり、それが誇らしく、楽しく感じることもあったが、しかしあまりにもたくさんの石を作りすぎると苦痛だった。
町中の猫を救うのは難しい。
そのうち、少年は悪い猫と良い猫を分けて、悪い猫を追放するようになる。
”自分が石を作れないからではない、猫が悪いから罰せられるんだ。”
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ある日、遠出した魔女が暫く帰ってこなかった。
男の子は、魔法の石で猫の餌と自分の食事を作ることができないので、帰ってこない魔女が約束を破ったと憤慨する
暫くすると、深手の傷を負った魔女が帰ってきた。
男の子は最初はそれに気づかず、帰ってきた魔女にまず「遅いよ!」と怒鳴りつける。
扉を開けると魔女の鋭い目に気圧され、怒られると思ったが、肩に深々と刺さった矢を見て、痛みに耐えていることに気がついて呆然とする。
男の子は魔女が死ぬということを想像したことがなかったのだった。
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