動物に愛はあるのか
私は動物が好きだ。見るのも好きだし触れるのも好きだ。ここで言う動物というのは人間以外の多細胞生物全般のことで、犬猫から魚にクラゲ、植物やミジンコだって好き。豊かな色彩や動いてるところを見ると癒されますよね。
同じ生物といえど、さすがにアメーバとかミトコンドリアとかバイ菌とかウイルスとかになると正直なところかわいいとは言えなくなってしまいますが。
さて本題です。動物に「愛」という概念は存在するのか。
人間で言うところの愛とは、キリスト教や仏教とかの宗教でも説かれ、定義付けられていると言えますね。一般的に、「打算や対価に拠らない慈悲の心」が愛と呼ばれていると思います。これらの宗教が興る以前にも人間の間に愛と呼べるものは存在していたでしょうが、ここでは人間の愛については深く考えないことにします。詳しく知らんしややこしくなりそうなので。
今回例を挙げるのはカラス。カラスは卵が孵って子育ての時期になると、雛のいる巣に近づくものすべてに対して攻撃的になります。しかしそれは雛を守るためであり、決して周りのものをいたずらに傷つけようとしているわけではありません。
これは生物としての生き残るための本能なのか、「愛」ゆえの行動なのか。
雛を守ることができなければ、そこで彼らの血が途絶え、いずれは種として滅んでしまう。愛がなくともかよわい雛を守るのは必然と言えるでしょう。これだけではカラスに「愛」の概念があるとは言い切れません。
ところが以前、私は成鳥のカラス同士が口移しで食べ物を分け合っている瞬間を目にしました。場所は都会のど真ん中。お互い体格は大きく、食べ物に困っているようにも見えません。
彼らが親子かカップルだったかはわかりません。この時その場にいたカラスは4羽、うち3羽はまるで家族のように固まって行動してました。
鳥が口移しで仲間に食事を与える行為、これは給餌と呼ばれる求愛行動の一種ですが、雌雄間だけでなく飼育下なら人間相手にもやったりします。傍目にはただゲロってるようにしか見えないので病気か嫌がらせにも思えてしまいますが。
なおカラスの給餌は、親から子が雛の時に行なったように、成鳥した雛が親鳥に対して行なうこともあるそうです。ことわざにも「烏に反哺の孝あり」「慈烏反哺(じうはんぽ)」というものがあります。親に養ってもらった恩を返すために、雛の頃にやってもらった口移しで親鳥に食べ物を渡して親孝行するという意味です。このようなことわざが存在するということは、子供のカラスが親鳥に口移しをするというのは昔からよく見られた事象なのでしょう。
子よりも先に死にゆくであろう親鳥に食事を分け与える。種を繋いで生きていくだけならこんな非効率的なことはないのに、カラスはそれをしている。これこそ動物にも「愛」の概念が存在する証左なのではないでしょうか。
今回のお話については自分の体験をもとに書いただけで、慈烏反哺のことわざを調べた以外はなんら学術論文等を参照したわけではありません。ひょっとしたらもっと詳しく調べている人がいるかもしれません。
なにはともあれ、愛の概念は動物にも存在するものです。これは断言しても良いでしょう。動物と触れ合う時は、愛情を持って接したいものですね。