「強制労働は違法」と大阪高裁
旧日鉄大阪製鉄所徴用工訴訟の事実認定(大阪高裁)
日鉄大阪製鉄所元徴用工損害賠償請求訴訟の控訴審判決での被害事実認定(2002年11月19日)
「日本製鐵の経営する大阪製鉄所に付属する本件寮における控訴人らの居住状況と大阪製鉄所内での労働内容は、技術を習得させるという日本製鐵の事前説明から予想されるものとは全く異なる劣悪なものであって、控訴人らは、一部賃金の支払を受けたものの、具体的な賃金額も知らされないまま、残額は強制的に貯蓄させられ、多少の行動の自由を認められた時期はあったものの、常時、日本製鐵の監視下に置かれて、労務からの離脱もままならず、食事も十分には与えられず、劣悪な住環境の下、過酷で危険極まりない作業に半ば自由を奪われた状態で相当期間にわたって従事させられ、清津においても、短期間とはいえ、1日のうち12時間も土木工事に携わるというさらに過酷な労働に従事させられ、賃金の支払は全くなされていないことが認められ、これは実質的にみて強制労働に該当し、違法といわざるをえない」
原審:平成九年(ワ)第13134号損害賠償等請求事件
控訴審:平成十三年(ネ)第1859号損害賠償請求等控訴事件
●解説
旧日本製鉄大阪製鉄所に動員された呂運澤、申千洙が1997年12月に大阪地裁に起こした訴訟の控訴審判決では、大阪高裁は原告2人が強制労働を強いられたことを上記のように認定している。
この訴訟は、日本で新日鉄(旧日本製鉄)を相手に起こされた2件のうち一つ。1995年9月に東京地裁に提訴された訴訟は原告11人が全員元徴用工の遺族であったが、この訴訟の原告2人は、ともに生存している元徴用工本人であった。
2人は1943年に平壌で旧日本製鉄の募集広告(新聞、ポスター)を見て応募し、大阪製鉄所で働くことになった。そのため、裁判所は、事実認定において「強制連行」とは認めなかったが、その労働については「強制労働」と認めた。
判決全文は以下で読むことができる。 http://justice.skr.jp/judgements/53-2.pdf (「法律事務所の資料棚」)