息子生後27日のときの過去日記
息子がまだ生後27日のときの日記を探し出したのでnoteにものせます。
たぶんみんなこういう「私だけが特別にだめなんじゃないか」とおもう瞬間あるよね。
今まさに精一杯な毎日をがんばっている方、もしも読んでくれていたら毎日本当に本当にすごい、生きて、生かすだけで100万点と熱烈に伝えたいです。
息子のことぴーすけ(あだ名)って呼んでるのだけなつかしくて笑ってしまった。
きょうのぴーすけは本当に眠らなかった。
さいきんは少しずつ夜寝て昼間さわぐ、のリズムができつつあったような気がしていたのだけど、朝の4時から夜10時まで泣きっぱなしだった。おっぱいを飲んでいるときと新生児用の横抱き抱っこ紐に入れているとき以外はずっとフルスロットルで号泣していて、「火がついたように泣く」とはこのことか、とぼんやり考えてしまった。
ぴーすけはからだが大きいので、泣き声も人一倍大きい。ふだんは全力泣きに至るまでの段階でおっぱいをあげたりあやしたり、どうにか気を紛らわすことに成功するので、こんなに大暴れされたのは久しぶりのことだった。
力が強いからわたしに抱かれながら必死に足をばたつかせておなかを蹴りとばしてくるし、ぴーすけが手を振り回すたび、わたしははだけた胸元をがんがんにひっかかれる。(まめに爪を切って いるので伸びてはいないはずなんだけど、加減なしでがりがり来られるとやっぱり痛いものは痛いのだった。)
一瞬でもおろすと大泣きなので、ほとんどなにもできなかった。トイレに行くにも水を飲むにも、まるでわたしが何日も食事を与えずに虐待しているかのような泣き声が追いかけてくる。
夜の9時ごろ、降参だ、とわたしは思って、ぴーすけと一緒にまた泣いてしまった。こんなにくるしそうに泣いているのに、わたしお母さんなのに、ぜんぜん泣きやませてあげることができない。
ふたりで泣いて、わたしは泣きながら抱いておっぱいをあげておむつを替えて、終りが見えなくて、たまにお互い電池切れをおこして呆然と10秒くらい動けなくなって、でもまたぴーすけは思い出したように全力で泣いて、ほんとうにどうしていいかわからなかった。
そういう日に限って両親の帰りも遅く、わたしたちは薄暗い部屋でふたりきり、完全に煮詰まってしまった。
10時ごろ母が家に帰ってきたとき、わたしは上半身授乳ブラジャーにカーディガン、むすんだ髪もぼろぼろ、授乳のし過ぎで顔面蒼白、睡眠不足で人相が変わっている地獄のような状態で、これまた泣きすぎて梅干しみたいな顔になった息子を泣きながら揺らしていた。
一瞬、どっちかが病気をしたとか、私が息子の出生にまつわる手続きで何か大変な思いをしたとか、いろいろな心配が頭をよぎったと母は言った。
ただ単にとにかく泣き止まなくて煮詰まっている、とわかると、息子に向かってやさしい声で「こらぴーすけ!わたしの大事な娘を泣かせて!そんなわるいこはお仕置きですよ」と言って抱っこをかわり、神の手で途端に機嫌をしずめてくれた。
その直後父も帰ってきたので、今度はあやすのを父にかわり、母はスープをあたためてくれて、わたしのすきな甘いたまごやきを焼いてくれて、りんごを剥いてくれて、「大変だったね、がんばったね」と言ってくれたのでまた泣いた。
わたしが新生児のころの母も、どうにも煮詰まっておんなじようになってしまったことがあるそうだ。「かわいいと思う余裕ができたのはもっと後のことで、とにかくあんたを死なせないことと、じぶんが死なないことで毎日精一杯だった」と言っていた。
わたしはずっと、じぶんだけが特別にだめな母親だという気がいつも、どうしてもしてしまっていたので、そういう話をしてもらえることは本当にありがたいことだった。
わたしは息子をあやすのが壊滅的にヘタクソだ。父や母を見ていると、話の通じない宇宙人みたいな相手に、ずぅーーーっと絶え間なくやさしい声で話しかけ続けている。わたしにはそれができない。
内容なんてなんだっていいのだ。大切なのは声のトーンや笑顔なんだと思う。わたしにはそういう「余裕」というものが壊滅的にたりていない。
じぶんに置き換えて考えてみても、無表情の巨人がなんの宣言もなく無言でパンツを脱がせてきたり、高い位置に持ち上げて揺さぶったりしてきたら、そりゃあ絶叫するに決まっている。
何を言っているかはわからなくても、笑顔で声をかけてくれていたらとりあえず友好的な相手だ、と安心もするだろう。
ひとしきり母に甘やかしてもらい、食事とシャワーを済ませたあとはわたしも気分がすっきりし、両親は寝室に向かった。
再び二人きりになった後、ぴーすけはそのまま深夜2時までぐずっていたけど、父や母とくらべたらヘタクソながらもわたしはわたしで「おむつ替えまーーす!」とか「つぎは左のおっぱいいきまーーーす!!!」とかむだに宣言してから世話をするようになった。
これは思った以上の効果があって、ぴーすけはきょとんとした顔でいったん泣き止んでくれたし、自分でもあまりに不自然でばかばかしいのでどうしてもおもしろくなってしまい、切羽つまった息苦しさを感じなくて済んだ。
そうやってどうにか寝かしつけたあと、ぴーすけは誕生以来最長の連続4時間睡眠を達成してくれ、わたしもひさしぶりに3時間まとめて眠り、洗濯をやっつけたり食事をとったりすることもできた。
息子もわたしもこうやって、ひとつずつ世界に慣れていくんだろうなと思った。
本当に母に感謝した一日。
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