「片山さゆ里作品集④」解説
2023年6月22日「片山さゆ里作品集④」というCDアルバムをリリースしました。イェーイ!
6月22日からライブ会場の物販・オンラインショップで販売開始し、6月27日に各種ストリーミングサービスなどで配信リリースという形になります。
7月15日からはディスクユニオンオンラインでもお買い求めいただけます。店舗にも取り扱ってもらえるかは未定ですが、お店に並んだら嬉しい。
6曲入りで、バラエティに富んだ作品になりました。
私は自分の作品について語るのがとても好きなので、この記事で「セルフライナーノーツ」というやつを書いてみることにします。
作品を聴いていただいた方で、「自分の解釈を乱されたくないわ!」と強く思われる方は、読まないことを推奨します!
前半にまず6曲についてサラッと書きました。そして後半部分、有料記事にしました。個人的な話も含まれるし、メチャクチャ掘り下げてところまで書いているので。片山さゆ里に課金したい人や、この作品の【答え合わせ】をしたい人にオススメかもしれません。
それでは始めます。
1.シンガー
短い曲です。言いたいことを全部詰め込んだので満足です。
ノーマルチューニングで、カポタスト(ギターの演奏キーを変えるためにネックに挟む器具)を使わずに弾いています。私のライブ見てもらえると一目瞭然ですが、私はカポがないとほとんどの曲を演奏できません。だからカポなしの曲はとても珍しいです。
シンガーというタイトルですが、これはなんらかの理由で歌えなくなった歌手のことを描いています。
この人は3つの問いかけに苛まれています。その中でも3つめの問いが、彼をいちばん苦しめています。この人には、きっと、ずっと歌しかなかったんだと思います。
歌えなくなった自分には何もない。だから、役割がほしいんです。
役割がほしい。私も、これまで生きてきて、役割がほしくて、何度も何度も悩んで、苦しかった。
この歌は短いけど、密度は高いです。
2.女生徒
最初のタイトルは「太宰治」でした。しかしサブスク会社に配信申請をしたところ、固有名詞の曲名はNGなので配信ができない、曲名を変えて再び申請しろとのメールが来たので、10秒くらいで「女生徒」というタイトルに決めました。
「女生徒」は太宰の小説のタイトルです。これは太宰治の曲なんです。
私の中で、令和という時代と、太宰が出会って、この曲ができました。結構長い期間、あーでもないこーでもないと、いじくりまわしていた曲でした。
私は図書館という場所が好きです。本当に大好きです。過去に4年くらい勤めていた時期もあります。今も、すごい頻度で地域の図書館を利用しています。冗談でなく、図書館に命を救われていると思っています。
閉館の音楽が流れたら、もっとここに居たいのになって思いながら家に帰る。
この曲の舞台も図書館、かもしれない。(詳しくは後述します)
3.スーパーマーケット・ファンタジー
割と知ってもらえている曲だと思います。ありがたいです。だからいつかこれは録音して音源に残さなければならないと思っていました。
全編ポエトリー・リーディングです。
全編通してポエトリー・リーディングの曲は、たとえば「親の宗教から逃げたい」という過去作があるのですが、あれはギターでちゃんとコードを弾いているんです。でもこのスーパーは、ギターは伴奏でなく「でかい音を出す道具」の使い方をしています。コードを押さえてないです。語りのほうに全力を注ぐのでギターをまともに弾いている余裕が全くないのです。
内容は、元々ブログに書いた過去の日記でした。なんの嘘もない実体験です。
昔たまたま何かのライブで朗読をしてみたら、これはライブでとても「映える」のではないかと思い、時々ライブで披露していました。
大きく知ってもらえるきっかけとなったのは、ポエトリー・リーディングの大会「コトバスラムジャパン」での3分間のパフォーマンスで披露したことでした。すごく良いねと言ってくれる人もいれば、こんなものは詩じゃないとツイートをしている人もいました。
4.ギター
このアルバムに6曲を収録することになって、全部レコーディングが終わったあとにそれらの曲順を考えたのですが、いちばん頭を悩ませたのが、この曲をどこに配置するかでした。私にとってポップすぎたからです。明るい曲調です。歌詞も大変わかりやすいです。
でも、歌の中では人を殺しています。殺しちゃったあとの歌なんです。
だからとてもアンバランスです。難しい曲です。
RECをしてくれたエンジニアは「この人はさ、実際に人を殺しちゃったんじゃなくて、頭がおかしくなった人の妄言なのかもしれないね」と言ってくれました。言われて初めて、そのような聴き方もできるなと気付いたのですが。
どっちの解釈もアリだと思います。
でも歌詞で「人を殺しちゃった」と言ってしまった以上、そういう歌なのだから。
元々あんまり重い気持ちを持って書いた曲ではなく、軽い気持ちで、「あのミュージシャンが歌ってそうな曲(後述します)作ってみたいな」と思って作りました。でも、アルバムを構成する段になって、とても取り扱いが難しい曲になった。という。
それでも、私はこの曲大好きです。過去作でいうと「バスジャック」に匹敵するくらいのキラーチューンができたんじゃないかな、と思っています。
5.夜を乗りこえる
これもずいぶん長い時間をかけて作った曲です。最初はもっと言葉が詰まってたり、曲の構成が複雑で長かったりしました。
このアルバムを世に出す前に、2人の関係者にアルバム6曲を聴いてもらったのですが、その2人ともが「この曲がいちばん好き」と言ってくれました。それがとても嬉しかった。アルバムを通して聞くと顕著ですが、この曲のボーカルがいちばんやさしい声をしています。
この曲聴くたび、なんか私、大人になったなと思います。まだまだ人生は続くから、またいつか、乗りこえられない夜が来るかもしれない。夜は怖い、眠ったらそのまま死んでしまうかもしれない。不安に押しつぶされそうな夜が、これからもきっとある。けどその時は、この曲を聴いてみたら何かが変わるかな、と今は思えます。
この曲を作れて本当によかったです。
6.ソングライター
このアルバムの曲目を公開したとき、「シンガーで始まってソングライターで終わる、【シンガーソングライター】だ」と書き込みをしてくれた人がいました。シンガーソングライターは、シンガーでありソングライターでもありますよね。
でも、こればっかりは、私にとっては、違うんです。
もう言っちゃいますが、
これは1曲目の「シンガー」と対になる曲です。つまり「シンガー」と「ソングライター」は別々の人です。これは「ソングライター」が「シンガー」に宛てた曲です。たぶん歌詞よんだらなんとなくわかります。
私、片山さゆ里はシンガーソングライターです。つまりシンガーとソングライターを兼ねています。両方やってますね。
でも、シンガー/ソングライター、分けて別々の人の話を書いてみたいと思ったんです。というか書かなきゃと思いました。歌を歌うだけの人。曲を書くだけの人。
【シンガー】である私がいつか、体を悪くしたとして、人前で歌えなくなったとして(実際に肺と気管支など呼吸器系が生まれつき弱いのでいつまで続けられるかはわかりません)、それでも、創作をして、曲を作って、作品を残して、もしかすると誰かに託すことも、できる。だからできる限りはずっと続けたいです。
もしいつか歌えなくなっちゃう日が来たら…、ソングライターの私は、シンガーの私の折れた心を救うことができるんじゃないかな。人前で歌えなくなったとしても、どんな形でもいいから私はあなた(私)の歌が聴きたい。何もわからないままでもいいんだよ。この曲にはそういう祈りを込めています。
何言ってるかよくわからんくてすまんね。
ここから先は、より踏み込んだ話をさせてください。長いです。個人的です。
物好きな人だけ課金して読んでください
1.シンガー
私は大学生の頃、芸術とコミュニケーションと教育を専攻していました。そこである先輩が
「芸術は金持ちの娯楽」
と言っていたんです。どういう文脈かは忘れたし、先輩がそれに賛同だったのか反対だったのかも覚えてないんだけど、私はその言葉聞いて雷に打たれたような気持ちになりました。
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