トヨタの社長交代はサプライズではない
トヨタ自動車は4月1日付けで佐藤恒治執行役員が社長に昇格する人事を発表しました。豊田章男社長は代表権のある会長となります。
なぜ、いま社長交代かという声が聞こえてきますが、私は納得できました。
というのも、トヨタはいま、モビリティカンパニーへの変革という大きな課題に直面しているからです。
大変革に臨むにあたり、章男さんは、「私はもう古い人間」と率直に発言しました。章男さんは常々、「誰よりもクルマを愛す」と述べ、マスタードライバーを担ってきましたが、それだけでは、この大変革を乗り越えることはできないという趣旨の発言がありました。
デジタル化、電動化、コネクティッド化など、クルマは新しい時代に入っています。100年に1度の大変革にあるといいますが、世の中はコロナ禍、ウクライナ戦争、加えて世界の分断で根底からひっくり返りました。クルマ以上に時代そのものが変わりました。歴史的な危機です。
「一歩引くことが大切」「意識的に引かないとどうしても頼ってしまう」と、章男さんは会見で述べました。
章男さん自身がとてつもない危機感を内に秘めているに違いありません。じつに正直な感想だと思います。
新社長に佐藤氏が就くのもサプライズではないと思います。
私は、新社長は佐藤さんではないか……と感じたことがあったからです。実際、昨年4月、ポスト章男の候補として3人が選ばれたとき、「あれっ、なぜ佐藤さんが入ってないのか」と思ったのを覚えています。さわやかな印象、強いリーダーシップ。「男が惚れる男」という印象を受けていましたからね。
モビリティカンパニーへの変革。佐藤氏がクルマをどう進化させていくか。佐藤氏率いる新チームがいかに未来をつくっていくか。どんな新しい経営チームをつくるのか。
ともあれ、章男さんの今回の決断、じつに〝賢い〟と思いました。タイミングもギリギリだったのではないでしょうか。断じてサプライズではないと思います。