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#3 え?金型部??🥝

さて、配属部署発表の日。
新入社員は食堂横のミーティングルームに集められ、一人ずつ発表される。
廊下には各部のメンターが集まってきてて、発表後に連行される仕組み。
手作り部、注型部、検査部、光造形部、金型部の面々。
ん?CAD/CAM部の人がいない??予想は的中するのである。

この年の同期は6人で、1人は研修期間中にドロン。5人がこの5つの部署に配属されるわけであるが、既に5人のメンターがいるなら、CAD/CAM部はないのではないか。と予想できてしまう。
1人ずつ発表され、最後は私。

まるお君。金型部。

この一言で私の社会人と人生が金型と共にスタートするのである。

さて、その金型部。
私は研修期間では回らなかった部署だったが、他の5人も回っていない。研修対象になっていなかった唯一の部署だった。
故に、何をやっているのかさえよく知らない部署で、メンバーも、どこにあるのかさえ知らなかった。
また、部署の歴史は一番若く、3-4年目だったと記憶している。

ちなみに、この会社の建屋は大きく分けると3つの大建屋と4つの小建屋でできており、増築、増築を繰り返して大きくなってきた。それぞれの建屋同士は後付けの廊下なり、屋根でつながっているが、構造そのものが異なり、内部は迷路状態だ。
モノづくりで成長してきた中小企業あるあるかもしれない。

発表されると金型部のメンターが「よろしくな」と「ついてきて」だけを言い、歩き出した。
私はただついていくだけだった。

メンターは会社の正面玄関を出て、道路に出るとスタスタと歩き出し、50mくらい離れたところのプレハブみたいなところに到着。
会社名の看板が付いていたが、この建屋の存在すら知らなかった。
扉には押し番号型のロックが掛かっており、番号を伝えられる。

0220

なんともすぐ分かりそうな番号で、聞いたらメンターの誕生日だという。
失笑するしかなかった。

プレハブは10畳くらいの部屋で、作業台が3つ、大量の段ボールとなんかの成形品が壁側の棚に雑多に置かれている。
天井の蛍光灯は工場あるあるで垂れ下りタイプだが、数が少なく薄暗い。窓は入り口の所だけで、作業台に備え付けの卓上ライトがメインの光源だった。

エアコンは完備だがトイレは本館まで行かないとない。
明らかにただの倉庫でしかないと思った私は、まずはこのプレハブの掃除からスタートと認識したが、華麗に裏切られる。

今週はこの製品の仕上げサンプルを見ながらバリ取りをやって。
道具はここにあるから。
休憩は適当に。
外に出る時は施錠を忘れずに。

それだけを言い残し、メンターは去っていった。

途方にくれるしかないとはこのことで、部署の紹介もなければ、メンバーの紹介もない。
そもそもどこに部があるのかすら知らない。
なんて部署に配属されたのだと思い、なんとなく手を動かし始めたのを薄らと記憶している。

バリ取りは研修期間中にもやっていたので、やり方は分かる。
仕上げサンプルもあるから、カッターナイフ片手に段ボールを開ける。
が、そこにはバリだらけの製品が敷き詰められていた。

製品はタイトル画像の試験管の遠心分離機の部品で、試験管を入れる板状の円盤部品。
円盤のサイズが450mmくらいあり、そこに試験管固定用の穴が60個くらい空いている。
中央には可動部と固定するであろう形状が付いているが、そこにはΦ20mmくらいのダイレクトゲート跡がしっかり残っている。
また、外周や押切形状のあらゆるところはバリで塞がっていて、仕上げサンプルと比較すると形状自体が別物ではないかと錯覚するほどだ。
その製品が1つの段ボールに40個ずつ、計5つの段ボールが作業台に積まれていた。

NT Cutter製のバリ取りカッター

さて、相棒を紹介しよう。
NT Cutter製のモデル用カッターナイフである。
コンシューマー用のカッターとは異なり、一刃毎交換できる。替刃は親切に本体背面に収納可能。
このカッターナイフがこれから約1ヶ月、唯一の相棒になるのである。

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