「エルピス」を見ながら絶望と希望を味わうよ
本日、待ちに待った「エルピス」の日であります。
「エルピス」は渡辺あやさんの民放初ドラマです。
「ジョゼと虎と魚たち」(素晴らしいので観てほしい!)でデビューされた渡辺さん、比較的寡作ではありますが発表された作品はクオリティが高いものばかりで、私もずーっと追っかけておりました。
NHKの朝ドラで名作「カーネーション」を経て近年は社会問題をとりあげた作品を書かれていまして、昨年はNHKで「今ここにある危機とぼくの好感度について」で大学を社会の縮図として隠蔽問題などをコメディタッチに書かれていらっしゃいましたが。
まるで「今ここ」とツインのような作品と思える「エルピス」をついに民放で!書かれ、当然ですがかなり話題になっています!
「実在の複数の事件から着想を得たフィクション」とあるように、
私たちがいつかのどこだったかで見聞きして、ちょっとひっかかっていたりモヤったりして、でも身の回りの自分事で精一杯だから通り過ぎて行った事を主人公である浅川や岸本たちが立ち止まって見つめて関わって本当のことを知ろうとします。
でも、それはあらゆる人に阻止されてゆく。
このドラマはリトマス試験紙みたいなものだと私は思います。
ここで起こった出来事や、それに対しての登場人物たちの言動を見た視聴者自信がどう思うか、どう反応するか。
そして、ここに出ている登場人物の誰に自分が近い立ち位置かとか。
それによって自分の観念が浮き彫りにされたりします。
だから人によってはイタタタ、だし、そのイタタタタを感じたくなくて怒ったり嘲笑したりするかもしれない。
個人的には、この作品は普段ドラマを見ない、社会の事を「わかっている」「男性」に見てほしいって思います。
想像だけれど、なんとなく「フッ・・・・馬鹿馬鹿しい」とか「なにもわかってないね」みたいな(斎藤みたいな感じ?)反応をされるのではないかしらんと思います。
そして私自身はといえばお恥ずかしながら「知らなくていい人」になってしまっているよな、としみじみ思います・・・。
冒頭の台詞は前回の岸本の心の台詞ですが、
この世界にはびこる不条理な出来事を生み出しているのは
「わかってないね」や「知らなくていいや」な私(たち)なのであります。
それをことごとく突きつける「エルピス」というドラマは
だから、世に放たれることが6年もかかってしまったそうです。
これがどういう意味なのか。
そんなことでいいのか・・・・。
そんな平和っぽい世界を私(たち)は生きています。
**
とても痛くて鋭いドラマですが、
エンターテイメントとして面白く見られるのは渡辺さんの
脚本力の賜物だと思います。
加えて演出(大根仁監督!)、役者も素晴らしいです。
役者は全員達者すぎですが、やはりメインの3人の繊細で的確な芝居は
思わずうなってしまうくらい・・・。
岸本役の眞栄田郷敦さんは最初はなんかちゃら~~っとしたちょっと周りをイラっとさせちゃう感じから話が進むにつれて過去の事件や現在の状況がからまってどんどん別人のようになっていく様が見ていて緊張するし、
斎藤役の鈴木亮平さんのめっちゃスマートないい男であると同時に嫌になるくらい頭がキレてエリートでマッチョな感じが見ていて「うわあああああ」って身体かきむしりたくなるし(爆)
主演の浅川役の長澤まさみさんは、言葉になりませんね‥‥毎回彼女の演技で胃が痛くなりますよ・・・・おかあちゃん心配だよ・・・・。
村井プロデューサー役の岡部たかしさん、大山役の三浦透子さんはドライブマイカー同様、名演っぷりを発揮されています。
劇中音楽はありがとうございます!と言いたくなる大友良英さん!
そして錚々たるメンバーが揃った主題歌のMillage CollectiveはSTUTSプロデュースですって!
そう!大豆田とわ子と3人の元夫の、です!
これだけのクオリティのものが話題にならないわけがなく。
そして、また内容の話に戻りますと、
社会に当たり前のようにある不条理や「これっておかしい」や隠された真実の影で苦しんでいる人がいて、それをどうにかしようと立ち上がるようなドラマを作るのが渡辺さんであったり野木亜紀子さん(次回作は沖縄の性的暴行事件!)であったりと、女性であることは注目する点だなと思います。
女性のますますのご活躍をこれからも応援したいです(もちろん男性もガンバッテほしい!)
副題は「希望、あるいは災い」です。
このドラマは(安易ではない)希望が描かれるんだろうなぁという思いを抱きつつ今は「イタタタタ」をしっかり受け止めて自分を客観的に見つめていきますよ。
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