マスクとタピオカとコバンザメ
野良マスク屋さんが巷にあふれて久しい。
日々マスク価格は下がり、「コロナ以前の価格」に戻りつつあるという。とはいえ、正規のドラッグストアではまだまだマスクは品薄であることにあまり変わりはない。大阪の心斎橋やミナミ界隈、東京では大久保あたりに野良マスク屋が多いが、タピオカドリンクでかつては行列があったところが突然タピオカではなくマスクを売っている光景が目に付く。これは一体どういうことか。
①タピオカ屋が増えたわけ
そもそも、この半年前、中心都市の繁華街はどこもかしこも観光客があふれ、鄙びた商店はタピオカ屋へと変貌していった。
しかし、誰もが思っていたはずだ。「タピオカ屋が多すぎる」と。
ちなみに筆者は、とある不動産屋から大阪難波駅から徒歩5分ほどの、有名なPCやソフト販売店があるがその1本裏で人通りが多いとは言い難い物件を進められたことがある。12平米で、坪当たり5万円ちょっとだったような気がする。『タピオカ屋にどうですか?』と。ちなみにタピオカの仕入れルートも紹介しますとのことだが、速攻で断った。どうすれば1杯500円のタピオカで月20万円以上の利益を出せるというのだ。
ただ、この時期黒門市場(大阪では最も観光客の密度が高いと思われた)では、路面店の家賃坪7万円で出ていたらしい。
タピオカ屋が増えたのは「ブーム」であるが、それにしてもまともな会社なら、店を出しすぎたら競合しあって売り上げが悪くなることは分かり切っている。いきなりステーキの出店戦略のようだ。でも増えてしまうわけには「コバンザメ」の存在がある。
②コバンザメ商法はだれがそそのかすのか
コバンザメ商法は昔から知られているが、これ自体が悪というわけではなく、『コバンザメが増えすぎると悪』になる。しかし、この増えすぎたコバンザメは淘汰されても淘汰されても次から次へと湧き出る。なぜかというと、「他にすることがない」からだ。もっと言うと、「他に何もできない」からである。また、こういうコバンザメをたくさん飼っている人がいる。
「人脈こそビジネスの価値を導く!」とか「無料で商売の勝ち抜くノウハウ教えます!」とか、やたらキラキラしている人だ。
日々勉強会やら経営塾やら交流会やらやっているが、本人がビジネスをしているところを見たことがない。せいぜい、太陽光発電少しやっているくらいだろう。この類の人は、なにかとこういう「流行もの」に手を出す。
そして、ある程度その事業のカタチが見えてきたところで、それを飼っているコバンザメに情報という餌を与え、手を出させる(稀に自分もやる)。結果、その「流行もの」は増えていく。
筆者が声かけられたのは、ネットワークビジネスを除けば
・中国に日本のミネラルウォーター売る事業。代理店になってくれたら、500ml1本当たり0.2円だか何だかの手数料が得られる。または関連して、水源持っている人紹介してほしい。とかなんとか。あのころは、とある企業の社長が「1本20円で販売権利を代理店になりたいという人に投げたら、10日くらいして、全然別の人が、私に『1本21円で、中国に売れる水(もともと自分の20円の水)がありますよ!』って話持ってきてた」
・タピオカ屋(前述)
・太陽光パネル置く場所の土地探し
いずれも、『あなたの人脈ならすぐに利益が産れますよ!』といううたい文句だったが。でも、実はある程度の人が知っている話なのである。「これは秘密の情報なんですが、あなたにだけ話します、、、」という旨い話なんて存在しないのである。賭け事は胴元だけが儲かる仕組みなのだ。
③疲弊するコバンザメ、暗躍するコバンザメのボス
さてマスクの話になると、「コバンザメのボスに、タピオカ屋やればもうかるよとそそのかされたコバンザメの末端が、売れなくなって、今度はマスクをコバンザメのボスから買い取って売っている」状態である。稀に他のことをやっていたが、やはり稼げなくなったコバンザメの末端がマスクを売っている。
コロナ19の影響で大きく仕事を失った中国の製造業(特に繊維産業)はいち早くマスクの生産に切り替えていた。この情報を聞きつけていた人々(これが大手企業だったりする)や、中国製造業とつながりのあった企業が生産を依頼し、日本に入ってきた。ただ、この商流にいっちょかみしたコバンザメのボスがいる。いくらかのマスクを買い付ける約束を大手企業の社長と個人的にして、それを配下のコバンザメたちに売りつけるのだ。当然、今年の2月3月はそれでも大人気であった。
ところが、中国の生産力はすごかった。数億枚のマスク(※ドラッグストアなど、今まで流通されているものとは別物である。なのでドラッグストアなどではまだ品薄傾向なのである)を生産できる能力が確立されてしまったので、いざコバンザメたちの手元にマスクが届いたときには、『みんなマスクを売ろうとしている』状況であった。コバンザメ末端は驚く。「マスク、俺だけでなかったの、、、?」と。ネット販売も限界がある。また、炎上しやすい。かくして野良マスク屋が乱立しつつある。
結局、いつの時代も騙される人が多い。コバンザメ末端には同情をすることもできないが、親玉の方には怒りを感じることはある。まあうまく逃げているのでいいのだろうが。「私は〇〇(有名人)さんと知り合いで、一緒にビジネスもしている」などの言説でコバンザメボスに振り回される若い人やまじめな人、そして何より「なんとかこの苦境を乗り越えようと頑張っている、経営に苦しんでいる人」を食い物にしないでほしいと思う(真面目だったり、苦しんでいるからこそコバンザメ末端は量産され続けるのだ。ただ、彼らには悲しいことに判断能力はない)。キラキラした派手な魚たちはそいつら同士で食べあって滅びたらいいと思うのだが、天性的に人を騙すのがうまい魚が多いのである。
願わくば、ビジネスの本質をしっかり理解して、こういう人がいたら距離を置いてフェードアウトすることに成功しますように。