『一部修正』詐欺行為?農産物支援プロジェクトのスキームとは
さて、最近Twitterでこのような投稿があった。
実は以前にもマンゴーなどでも同じような「行き先を失った農産物を買ってください!」という謎のプロジェクトが沸き起こり、多くの方が疑問を呈するうちにその投稿者は消えてしまった。
『追記』そして安納芋でも似たような投稿があり、先程その方と会話した。本心から農家の支援をしたいということがわかったのでTwitterのリンクは外すが、その発信の仕方の過ちやそもそも規格外に関する意見などは折り合いつかなかった。
いくつか新しい疑問すら発生したのだが。
今回の上記イチゴはマンゴーの再来かと思われたが、こういった「支援プロジェクト」が実は最近ちらほらと現れ始めていて、かつ、その大半は非常に怪しいものだと思われる。
なぜ怪しいか
1.プロジェクトの「主体」となり「購入」を呼び掛けている人は、本来農業者でも何でもない。その農家とどういう関係かすら書いていない。なぜ頼まれたかすらあやふやである。
また、最大の理由として「なぜ行き先がなくなったか」の理由が不明である。収穫が遅れた、虫の被害などによって『契約が一方的に打ち切られた』ということが多いが、そもそもそれなら裁判ものである。そんな会社がないとは言わないが、競合が多い商品ならまだしも割と引き合いの強い商品でそういう事が起きるのは不思議である。後述するが、もし収穫遅れや虫の被害というのであっても、それが「行き先を失った」というのは筋が違う。※ちなみに安納芋は、仕分けした上で出荷したものが、取引先で再選別した事で発生した不良品との事だった。それは生産者での選別甘かっただけでは、、、
2.農産物を購入するにあたり、その仲介者拡散者も手数料を貰っているとのこと。ということは商流が発生している。この時点で主体となっているインフルエンサーはその商品に対して責任が生じていることを自覚しているのだろうか。これで商品に「訳あり」とはいえ過度の瑕疵があった場合、道義的責任は免れないのだが(買った人は問題ないという。実はそれがまた問題で、正規の値段と流通に問題を及ぼすのだが。。。
あくまで(手数料をもらっていなくて)紹介だのようにすることは、とあるコンサルからの指摘で『不特定販売だと特商法の対象になるから、あくまで個人の『おすそ分け』の相対個人間取引としての回避』という手法ではないかとわかった。ただ、この場合拡散者が個人情報を預かるのを「相対個人間取引」として行うのであれば、当該農家から拡散者が販売手数料をもらった瞬間アウトになる。それは個人間取引ではなく、不特定商取引である。この疑問は消費者庁に直接聞いてみたい。
不特定取引の通信販売を行う場合、下記の表示等を遵守する必要がある。
広告の表示
事業者の氏名(名称)、住所、電話番号などを表示しなければなりません。
誇大広告等の禁止
未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止
特定申込みを受ける際の表示
前払式通信販売の承諾等の通知
契約解除に伴う債務不履行の禁止
顧客の意に反して申込みをさせようとする行為の禁止
これらのいずれもさつまいものLINEには案内がなく、問い合わせレベルで対応しようとしているのは、特定商取引をかいくぐろうとしている証拠といえる。他にも優良誤認の可能性がある。
3.商品が、「支援」という割にはこの時期の価格からしてみて相当割高である。
※当人いわくそこに農家に価格設定権があると、、、そう言われるとそうなんだが、では訳ありで『弾かれたもの』にあの値段をつけるのかというのは、企業努力で安く美味しく綺麗な芋を出していた会社の人間からすると感情的には同意できなかった。
『訂正』二重価格表示ではないという説明があり、確かにネット販売を日頃からされていることは分かったが、訳ありの理由が「病気が出て」「例年より多く発生」という事だったが、上記のように取引先から選別した上で弾かれたものであり、優良誤認の疑いは残った。取引先が悪いわけでなく、取引先がどこまでが許容するかをしっかり確認できなかっただけで、突然取引先からダメだと言われたわけではないだろう。そのあたりの説明が不足していると指摘はしたが、Twitterでは他の人にツッコミのネタを与えるという理由でできないと言われた。
※なお、筆者が数年前まで茨城県のサツマイモ紅はるかを中国四国九州地方のスーパーに卸ししていた時は、送料込みで卸価格10キロ3500円程度であった。訳ありはおおよそその半額。
4.相当量(数トン)の廃棄になってしまう、、、というような表現をしているが、市場出荷をすればそれ相応の金額になる数量であり、育成している品種が事実であるならば、市場で相応の値が付く商品である
※ただし、まっとうな育成をしていれば、である。
今回はイチゴでこの行為が見られたが、両方ともにこの時期引き合いは強く、契約を切られることも考えにくければ、代わりの出荷先を見つけられないものでもない。もし発生するとしたら、この生産者が 予定回数を超える薬を使わざるを得なくなり、契約先に出せない(もちろん人体に影響はないが、低農薬と謳っていた契約先に出せない) 、育成作業で重大なミスがあり納品ができない 等の理由くらいしかない。
そういった育成におけるミスは農業界ではよくあることだ。しかし、その事実を隠して、あたかも契約先に非があるような書き方は優良誤認に問われる可能性が高い。
5.品質に関して丁寧な説明書きがない
訳ありを販売するにしても、その後のクレームを防ぐために注意書きを正しく行う必要がある。
例えば、リンゴなどであればサイズ不揃い、柔らかいなどの細かな説明書きをする。例としてはこんな感じ
つまり、こういう表記がない時点で、ビジネスとしては雑。およそ野菜や果物など生鮮品の流通をやっている人であれば細心の注意を払うことができていない。
後述するが訳あり品を出す事は悪貨は良貨を駆逐するにしかならない。農家が良い商品を作るために頑張る事、産地のブランド化を進める事、この努力は規格外などを廉価販売することで阻害されるのだ。
6.Twitterなどの反応に対して、疑問を呈する人などの反論にまっとうに応えない、もしくは無視をする。
※芋については、過去いろいろ投稿によってやり合った事があったらしいがこちらはそんな事知らん。
7.規格外で、かつ品質が不確か、あるいは品質が劣化したものを一定量流通させてしまうことが、産地にとって、農家にとってどれだけブランドイメージを損なうことかわかっていない(今回の安納芋は、写真で見る限りプロの農家ならC品として出荷するかどうかも迷うレベルで、基本的に行き先は牛の餌である。なお鹿児島県種子島は畜産も盛んなのでそれでもお金になる)。そして、本来こういった傷物の規格外は農家は織り込み済みであり、天候で多少多くなったと言うても、小売りをしてブランドイメージを毀損するくらいなら廃棄も許容範囲という考えが一般的である。ちなみに種子島の安納芋だけで生産量は1万トンあり、3トンの規格外品など屁でもない。
このことから、生鮮品流通に関してまるで素人といえる。また、わざわざ個人に配送という一番リスキーでお金の入金確認や出荷手間やクレーム対応等の方法をとるという方法をプロの生鮮品流通者は選ばない。その分の手間で、残された野菜や果実の世話にかける時間も無くなってしまうのだ。
では、彼らは詐欺なのか。
私の見立てとしては、前者は詐欺の意識はあるが、後者は純粋に騙されている可能性がある。
おそらくスキームはこうだ。
その1.拡散者も騙されているパターン
A:悪人●氏が市場関係者と知り合い、普段から発生する大量のC品等の仕入れルートもしくは現物をもらう
B:その会社と結託あるいは別途出荷してくれるような倉庫業者と組み、出荷体制を整える
C:いわゆるインフルエンサーに対して支援を持ちかける。人助けとして。
D:インフルエンサーは上記取引法等に留意したり、SNSでの拡散や疑問を呈するコメントに対する対応スキームを解説していただいた上で、SNS等で拡散し、売り上げの一部手数料をもらう。販売に対してインフルエンサーは顧客リストをゲットできるという見返りがある(NGだが)
この場合、悪人●氏が諸悪の根源だが、拡散者も上記のように景品表示法等に問われる。むしろ、拡散者のみが問われて、悪人●氏は逃げ切れる可能性が高い。また、これで手に入れた顧客リストを基にメルマガなどを打った時点で個人取引法違反の可能性は高い。
その2.生産者と悪人●氏結託パターン
A:悪人●氏が農業関係者もしくはそれに近しくて生産物を確保できる関係者と語らって、大量のC品を確保、あるいは予定数を確保。
B:別途出荷してくれるような倉庫業者と組み、出荷体制を整える(これは外部委託もありうる)
C:いわゆるインフルエンサーに対して支援を持ちかける。
D:インフルエンサーは上記取引法等に留意したり、SNSでの拡散や疑問を呈するコメントに対する対応スキームを解説していただいた上で、SNS等で拡散し、売り上げの一部手数料をもらう
その3.拡散者も主犯
A:悪人●氏が農業関係者もしくはそれに近しくて生産物を確保できる関係者と語らって、大量のC品を確保。
B:別途出荷してくれるような倉庫業者と組み、出荷体制を整える(これは外部委託もありうる)
C:悪人●氏はインフルエンサー(もしくは企画を手伝ったインフルエンサーがいる)でもあるため、SNS等で拡散し、売り上げの一部手数料をもらう。
マンゴーに関してはその2、イチゴはその3、サツマイモはその1ではないかと思う。論拠は2つあり、イチゴの方は承認欲求が高い昔から謎の人物で実は大阪で評判がある(いい評判ではない)。サツマイモの方はSNSでの疑問に関して馬鹿正直に反論しているが、あまりにも稚拙な反論で指摘が相次いでいるが、本来ならこういった悪徳スキームで一番いいのは炎上に対する「静観」である。それをしないのは、本人が本当にいいことをしている気になっているからではないか。まあ、だまされる方が悪いのだが。
ともかく、こうした『困っている人を助けよう』の衣を着た悪徳ビジネスは、応援消費のブームに乗っかったものだと推測される。2011年の東北大震災の時も、悪徳ビジネスや寄附詐欺サイトがはびこり、コロナの時も応援消費として多くのサイトが乱立されたが、2重価格のチェックなど誰もやっていないため、玉成混合状態であった。いまコロナが落ちついたころでもこういったお気持ちビジネスを行っているというのは、ある意味間が悪いというか、間の抜けた話というかだが。
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