七 そこにあるもの
一月後にポールはあの公園に戻ってきた。彼は全身傷だらけで、疲れ果てているように見えた。彼は僕の姿を見つけると、ただ一言「久しぶりやな」と言った。
彼が帰ってきてから、僕は以前にもまして頻繁に彼と話をするようになった。僕はもっとポールのことを知りたい一心で、彼に多くの質問を投げかけた。少なくとも、その時はそう思っていた。
「いつから言葉を話せるようになったの?」
「何で関西弁なの?」
「ここに来る前はどこにいたの?」
「今、何歳?」
こんな具合だ。
僕の質問に対し、ポールはいつも笑っているだけで答えてくれなかった。時々僕がしつこく食い下がっても、
「まあ、ええやんかそんなこと」と言うだけだった。
僕はポールに心を開いて欲しかったのだ。
でも、実際に彼が心を開いた時、
そこには何もなかった。
「最近、わし、死んでもええかと思っとんのや」
彼はいつものように飄々と、僕にそう言った。
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