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一 六月の雨とエセ関西弁

 ポールは柴犬だった。

「でもそうは見えないね」と僕が言うと、ポールは怒って

「失礼な奴やなー」と言った。彼はおかしな関西弁もどきを使う。

「ま、たしかにしょぼくれちまっとるがな」

 彼の言った通り、僕と初めて会った時、すでにポールはけっこうな歳になっているように見えた。

 ポールは僕の住むアパートのそばの公園に、六月のある日突然あらわれた。帰宅途中の僕がそこを通りかかった時、降りしきる雨の中ポールはこちらに背を向けて座っていた。

 僕は足を止めて彼を見た。雨に濡れた背中はとても寒そうだったが、それはいっさいの同情を受け付けない毅然とした姿に見えた。

 それで翌日また公園に彼がいるのを見た時、僕は彼にフライドチキンをあげてみた。ポールはまるで嬉しそうな様子もみせずに、目の前のチキンを平らげた。

 そして僕の顔を見ると、表情一つ変えずに

「おおきに」と言った。


> 二 いつものミルクティーと四年ぶりの彼女

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