M−1 2024 真空ジェシカと令和ロマンを語りたい
M-1グランプリ2024で真空ジェシカが神格化した。
第1回大会からM-1を観ていて、完全に個人の主観ではあるが過去にM-1決勝で観た笑い飯やチュートリアル、NON STYLE、アンタッチャブル以上のネタにはもう出会えないと思っていた。
しかし、2024年の真空ジェシカは私の中でそこに並んだ。
今年のM-1に話を戻す。まずは令和ロマンの凄さから語りたい。
M-1 2024の令和ロマンについて
1本目しゃべくり+2本目コント漫才で幅を見せ、1本目は苗字や小学校の席順といった、義務教育を受けていれば誰もが共感できるあるあるをくるまの視点で深掘りしたネタ。
去年の1本目も少女漫画あるあるではあるものの登校にフォーカスしており、大衆向けに普遍的なあるあるを展開するというのは今後のM-1攻略の王道になりそうだなと感じた。
2本目はケムリを主人公にしたコント漫才。ケムリがされるがままタイムスリップして、だんだんその世界に馴染んで問題を解決するという流れ。
2024年最大のヒットといっても過言ではないバラエティ企画「名探偵津田」を彷彿とさせる内容だった。
最後の熊猿が敵を薙ぎ倒すくだりは、まさに「ずっと文句を言っていた名探偵津田が、1の世界の住人として犯人を追い詰めながら気持ち良くなる」あのお約束の流れのようだった。
2024年のお笑いファンが大好きな流れを、くるまがネタに踏襲するとこうなるのだろう。お見事すぎる。
この2本を鮮やかに決めた令和ロマンが優勝することは、全く異論がない。というかいうか非の打ちどころがない。「2024年のお笑いってこうだよね」を凝縮した鮮やかすぎる優勝だった。
M-1 2024 真空ジェシカについて
ただ、今回私が語りたいのは真空ジェシカである。
真空ジェシカの1本目は名作「商店街」。2020年の予選でもしていたネタで元からめちゃくちゃおもしろかったが、ここで決勝に持ってきたということは、完全に仕上がったタイミングだったのだろう。
真空ジェシカの強みといえば大喜利漫才。大喜利漫才で真空ジェシカと戦わなくてはいけない若手芸人は本当に大変だろう。真空ジェシカのネタは無駄がなくそれぞれのボケが洗練され、その集約が展開や伏線回収を導く。まさにぷよぷよである。
私はてっきり2本目も大喜利漫才が観られるだろうと思っていた。しかし出してきたのは「アンジェラアキ」。現地に行ったことがないなりに真空ジェシカのネタはできるだけ観てきたつもりだったが、観たことがないネタだった。
これはコント漫才といって良いのかすらわからない。「こんなライブは嫌だ」を突き詰めたらこのネタができたのか?かといって大喜利漫才ではない。歌ネタともいえないだろう。何もわからない。
令和ロマンが優勝したとき「しゃべくりとコント漫才で幅を見せてすごい」といったコメントがあったが、真に幅を見せたのは真空ジェシカだろう。
真空ジェシカはこれまで、M-1決勝では比較的題材のわかりやすい賞レース向きのネタを選んでいたと思う。その中でも遊びを作りすぎると点数が伸びず、わかりやすいネタに仕上げると奇抜さが足りないとまた点数が伸びず。
M-1決勝では真空ジェシカだけが真空ジェシカと戦わされていたような印象を受けた。
それが初のファイナルステージであんな単独用のようなネタを持ってきたことに、まず感動した。今までもこの時を待っていたのかと思うと底が知れないと思った。
しかも2本目のツカミが「ともはるさん」。初の2本目で原点回帰のともはるさんを全力で叫ぶ川北さんに本当の意味で心を掴まれた。さらにM-1決勝で初めての「まーごめ」。ママタルトが決勝に来るまで封印していた「まーごめ」の解禁に川北という男のアツさに胸を撃たれた。
アンジェラアキで優勝したらどれだけカッコよかったかと思わざるを得ないが、これからも地上波の決勝で真空ジェシカのネタを観られること、今年を超えるような本気ネタを観られるであろうことが嬉しい。
真空ジェシカのアンジェラアキは、私にとって「奈良県立歴史民俗博物館」や「チリンチリン」に並ぶ、忘れられないネタになった。そして、ここまでお笑いを楽しめるようになったきっかけをくれた真空ジェシカをこれからも応援するとともに、感謝を伝えたい。まーごめ。