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小説 【 あるハワイの芸術家 】 -12-

「誤魔化してない。ずっと考えてたんだ。絵だけでなんとか食えるようになって、依頼もたくさん来て、チャンスなんだ」

「――」

「楽しいからずっとこのままでいたいけど、ジェシーはともだちが大勢いる。これからもたまには遊んでほしいけど、いいタイミングだと思った。ジェシーのことは変わらず大好きだよ」

「ママのことは?」

「ジェシーと同じくらい好きだ。家族じゃないか」

「――」

「会いたくなったらいつでも連絡して。すぐに来る」

ジェシーがしつこく抵抗したのはクリスと離れるのが嫌だったのは勿論、「うまくいってると思っていたのになぜ」という疑問。

そしてまずケイトに話して、それは当然としてもはケイトは簡単に受け入れ、

「私が思うほど叔父さんを好きじゃなかった? 何かをもっと話したんじゃ? 別の理由があって――」

それを確かめたかったのもあった。

「私はママを傷つけてたのかもしれない。パパとそっくりの叔父さんを慕って、慕い続けて、それはママにとって苦痛だった?」

しかしあの時はうまく言葉にできず、クリスに聞いてもわからないかも、と思い、それでいてケイトにも確かめられず、ただゴネただけになった。

   ***

▼収録した短編集は6月20日に発売。ただいまHPで全文公開中です。ぜひ。

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