小説【 dreamers 】13
放課後英理はひとりで買い物に行き服を買った。今まで着たことがないデザイン、大人っぽい上下で試着すると自分でも苦笑するくらい似合わなかった。でもそれでいい。だからいい。
同じ店でサングラスも買った。あまり色が濃いとかえって目立つと薄めにした。伊達メガネでも十分変装になる。
それらの代金で今月の小遣いはほとんど飛んだ。思わずため息が出る。「なんか踏んだり蹴ったりじゃない?」
帰宅すると廊下の奥、トイレからキッチンに恭子が入るところで、
「おかえり」と振り向く。「なにそれ」と紙袋を見る。「買い物?」
「うん――」と英理は目をそらし、
「服? 見せて見せて」と来る恭子に、
「いい」と英理は強めに言って階段を上がった。見られては意味がない。
「いいってなに」と恭子は階下で見上げ「洗濯でどうせ見るし」
「いいの!」と英理は自室に入る。ドアを閉める。
閉めてすぐ自己嫌悪になった。服を見られないためだったが強い口調は苛立ちがあった。不倫中のくせに、と思う。娘に関心寄せないでよ。買い物に興味持たないでよ。
でも娘のこんな態度が母を寂しくさせてるんだろう、と落ち込む。英理は高校に入ってからあまり両親と話さなくなった。中学時代の反抗期よりはマシだったが、それでも小学校の頃とは違う。干渉が嫌で普段から壁を立てていた。それが原因の1つかも、と昨日から思っている。ママが不倫に走ったのは無愛想になった私のせいもあるかも。
机に学生鞄と買い物袋を置き、英理は1階に下りた。ダイニングを覗くと恭子はキッチンにいて、
「夕飯なに」と英理は普通に聞いてキッチンへ。
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