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小説 【 あるハワイの芸術家 】 -1-


その日ジェシーが訪れたのはロイヤル・ハワイアン・センターの2階にあるフレンチレストランでランチタイムを終えた2時すぎに店の「オススメ」のフルコースを食べた。

その後35歳のオーナーシェフにインタビューし、「ハワイで一番のフレンチレストランにすることです」という彼の夢をICレコーダーに録音した。「オアフに来たら絶対この店に来ないと、そう世界中の人に思ってもらえるように。うまく宣伝して下さいね。期待してます」

笑顔で言う彼にジェシーは一瞬固まったがすぐに「ありがとうございました」と微笑し「掲載日が決まったら連絡します。あ、最後にもう1枚」と首にかけたカメラでシェフを撮影した。

店を紹介する記事だとしても飲食代はちゃんと払うし広告ではない。なのに『うまく宣伝して下さいね』そんな風に言う取材先は多かった。いちいち反論してもしょうがないし客商売なら当然の返しとも言えてジェシーは流していたが、日々そんな扱いをされるとだんだんたまる。


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