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中野の電信柱で

君が僕のことを死ななくて手間のかからないペットを愛でるような気持ちで好いているということなら、ちょっと寂しいけれどもう金輪際僕の前に姿を現さないで欲しいんだ。
あと僕は君が思っているほど面白くもないし変なやつではない。かといってまともなやつでもない。いうとしたらただの怠惰なやつだと思う。
僕はいつも君の住む街や職場の街を通る時もしかしたら君とばったり会うかもなって妄想するんだ。いや別に君に関係する街を歩いていない時だって僕は君のことを考えている、かなり。でもよく言うじゃん、好きな人のことを考えすぎたり、病む原因のひとつは自分が暇だからだって。僕だって仕事もあるし生活もそれなりにしてる。趣味はそうだな、好きな音楽を探すこと、と道に落ちている素敵な物を集めること、かな。まぁ暇ではないけれど、君たちと僕たちでは同じ24時間の1日でも時間感覚が違うのかな。寿命も違うし。僕はもう若くはないから生きてあと4年くらいかな。1年くらい君と過ごしてみたい。いや半年でもいい。君の半年を僕にくれないか?なんて、嘘だけど。
僕にとっての3時間は君にとっての何時間なんだろう。僕にとってのバナナという存在は君にとっての何なんだろう。僕にとってのにんにくの香りみたいなものが君にもあるのだろうか。僕にとってのブルーハーツは君にとっての誰なんだろう。僕にとっての君のような存在が僕であって欲しいと願うと同時にまぁそれは無理な話で。じゃあ僕にとっての君みたいな存在が君にもいるのだろうか。きっといるんだろうな、いた方が生きるのがぐんと楽しくなるから。そいつはどんなやつなんだろう。僕は君のことが知りたい。君のことが好きだからもっと知りたい。でも知りたくない。こわい。なんて身勝手なんだろうと思うけど、きっと今君のことを好きでいられているのは程よく君のことを知っていて程よく知らないからなんだろうと思う。僕は本当に嫌なやつだ。
僕がハクビシンじゃなかったらこの恋は実ってたんだろうか。君がもし、私と同じ人間だったら好きになってたよ付き合ってたよ。と言って本当に僕が人間になれたとして、きっと君は僕のことを好きにならない。だから僕は僕がハクビシンで良かったなと心底思うんだ。

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