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金家鐔について

 鐔界の巨匠「金家」は、信家とともに多くの名品を遺していますが、その出自や経歴などについては、今日においても、確実な資料が全く見つかっていません。 
 しかし、金家に対する刀剣界の評価や人気は極めて高く、現在、国の「重要文化財」に4点指定されており、「重要美術品」にも16点認定されています。
 
 刀装具研究者の間では、金家鐔の作り込みが極めて薄いことから、古刀匠や古甲冑師の流れを汲む鐔工で、「絵風鐔の創始者」であると言われています。 
 また、金家鐔は薄造りで、打ち返し耳の鉄鐔に、その鉄と同じ材料で別途作成した人物や樹木、山や塔などをカシメて固定するいわゆる「共鉄象嵌」の手法が施されています。
 
 そこで、私は、手始めに古甲冑師鐔をいろいろ調べてみましたが、絵風鐔らしきものは発見できませんでした。  
 次に、古刀匠鐔の調査を開始していたある時、短冊(筏に似ているがその透かしの上下にズレがみられる)の透かしが施された丸形の古刀匠鐔を発見しました。
 
 その鐔には、表の上段左側に山が薄肉彫りされ、その横に淡く金象嵌された月がみられ、また、裏には、上段に三羽の雁を、下段には水草が線刻されています。まさに古刀匠鐔に絵画的な素朴な風景が加えられています。
 他にも類似の古刀匠鐔がないか探してみましたが、これまでのところ見つかっておりません。 

 この古刀匠鐔は、時代的には室町末期から桃山期頃に制作されたものと認められる古鐔で、未だ共鉄象嵌の手法に到達する前の無銘時代の金家の作品ではないかと、日々眺めながらひとり楽しんでおります。

 金家鐔にご興味のある方は、「刀と鐔の玉手箱」を是非ご覧になってください。


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