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刀装具の鑑賞方法とマナー

刀の鑑賞作法は至るところに情報が載っていますが、なぜか刀装具の鑑賞作法については見当たりませんでした。
刀装具に興味がある人が少ないからでしょうか。

しかし刀装具も刀同様に鑑賞する際に注意しなければならない事が多いので私が学んだ事をまとめておきます。
(※他にもあるよ、という方、追記しますので教えて頂ければ幸いです)

①基本的なマナー

・手袋をはめる

最も基本で大切な事です。
刀装具は様々な材質の物で出来ています。
例えば四分一や赤銅などは指紋が付くとそのまま残ってしまい一度付くと取れない物もあります。
拵なども漆塗も指紋が付くと長い目で見ると痛むので、手の油分が付く事は避けるべきです。
尚鉄鐔は素手で触っても大丈夫です。
刀の茎を素手で触って良いのと同じ理論です。
但し赤銅などで象嵌が入れられている物もありますので、別素材の部分は素手で触らないように注意しましょう。

滑らないように滑り止めの付いている手袋を使われている方もいるようです。
確かにそちらの方が落としづらく安心ですね!


・刀装具に触る際は一言聞く

手袋をしているからといって許可がない限りは刀装具に勝手に触れてはいけません。
トラブル防止の為、例えば鑑賞会などでも係の人以外は触れてはいけないというルールのある会なども多いです。
所有者や係の方に聞いて触って良いと言われた場合は落とさぬよう慎重に扱います。

その上で一つコツですが、目貫や小柄、笄、縁頭などは落とし箱に(刀装具の形に段が彫られておりはまり込んでいる)なっており、指で直接取ろうとしてもはまり込んでいて取り難いです。
その為、まずは何もない所を指でトンと以下の様に軽く叩きます。
すると落とし箱から外れて取りやすくなります。
間違っても思い切り叩き箱などを落とさないように注意してください。


・鐔などの持ち方

鐔は表面に象嵌や色絵を施した物も多く、そうした面を何度も触る事でそれらが剥がれ落ちてしまう事や、経年で付いた色(風合い)が取れてしまう場合があります。
その為、鐔を持つ時は耳の部分を挟むようにして持ち、鐔の表面と裏面は極力触らないように持つべきです。

上から見た様子
横からみた様子


・床に近い所で鑑賞する

初心者の方が一番しがちなのが、立っている状態で鐔などを手に取りついつい顔の近くに持っていく事です。
しかしこれだとテーブルから1m近く離れた高い位置で鑑賞する事になり、万が一落とした際に刀装具に疵がつく可能性が高くなります。
手袋をしているので落としやすくもなります。
明確な高さななどは決まっておらず個人的な感覚ではありますが、テーブルから10㎝位までの高さで鑑賞すると安心なイメージです。
刀装具を顔に近づけるのではなく、自分が刀装具に近づいていきましょう。


・ルーペを使う場合は樹脂製のものを

ルーペは必ず樹脂製の物を使用しましょう。
金属の物は刀装具に触れた際や、ルーペを落とした際に刀装具に疵をつけてしまう恐れがあります。
また万が一落下しても刀装具に当たらない位置(刀装具に対して斜めや横)からルーペで見るという配慮が出来ると更に素晴らしいです。

因みにルーペですが、私は今はエッシェンバッハを使用しています。
覗いた際のレンズの歪みが少なく、肉眼で見たままの色(変にレンズの色が加わらない)で楽しめる気がします。
倍率は個人的には6倍あたりが使いやすいです。
10倍はレンズサイズが小さくなり過ぎるので6倍に比べると少し使いづらい印象です。
私は持ち運んでも嵩張らないサイズを使っていますが、レンズ部が大きい方が見やすいです。手元ライト付きの物もあるので色々探してみてください。

使用しているエッシェンバッハの6倍ルーペ


・拵の扱いは特に慎重に

刀装具で個人的に一番神経を使うのが拵です。
現代物は良いのですが、江戸時代以前などの古い物になると柄糸や下緒が劣化し、触るとボロボロと落ちるものがあります。(糸が一番劣化しやすい)
その状態で手袋を見ると真っ黒…だなんて事も。
そんな事もあり、拵を触る際は私はかなり躊躇してしまうのですが、許可が出た場合は左手で鐔部分と鞘を持ち、右手で鞘部分を持つ(柄糸や下緒を極力触らないように)と良いかもしれません。
尚鐔を抑えないで柄を下向きにすると当然抜け落ちる可能性がありますので注意してください。
鐔を抑える時も極力外周部分を触るようにしましょう。
拵の持ち方についてそこまで気にしない方もいるかもしれませんが、所有者からすれば結構ハラハラするポイントも多いので、この点も頭に入れておくと良いと思います。


・刀装具の箱なども大切な物

他にも鐔などが収められている箱そのものがとても貴重な物もあります。
箱だからといって許可なく素手で触ったり雑に扱ったりしないよう注意してください。
大抵如何にも古そうな箱に墨で鑑定結果や伝来(誰が所持していたか)などが書いてあります。


②終わりに

刀装具は刀に比べて安くて手が出しやすいと私は常々言っていますが、そういう物が多いというだけで、高い物では1点3000万円以上するものもあります。
とにかく刀の鑑賞と同様に、とても貴重な品である事を自覚した上で、傷つけないよう扱うにはどうすれば良いかを自分なりに試行錯誤してください。
取り扱い方が気になる場合は所有者の方や鑑賞会にいる係の方(必ずいます)に遠慮なく聞いて下さい。
むしろ思い込みで触る方が後々トラブルになり危険です。

刀装具は手に取りルーペで見ると、肉眼では気づけなかった超絶技巧に気付く事が出来、とても面白いです。
刀をガラス越しに見るのと手に取って見るので凄い差があるのと同じ位に感動出来ると思います。
是非出来る事なら手に取って鑑賞してみてください。


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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