Fの村から。
エスコンフィールドHOKKAIDO。
北海道日本ハムファイターズが北広島市に作った「世界一」を志すこのボールパークに、何かしらの機会で行ってみたいとは思っていた。
四半世紀ベイスターズファンとして育ち遠征を幾度か経験してきた自分としては、ファイターズは東京ドームで開催する際誘われて時折観るくらいの感覚であり、行く機会は2球団の交流戦が行われる来年までないのかなと思いつつ(交流戦は年ごとに開催地が交代しており、去年札幌ドームでファイターズ戦を開催したため今年は横浜での開催となる)、ネットやテレビなどで話題になるたび少しずつ興味がわいてしまっていた。
そんな折、知人の伝手でシーズンシートを1枚手に入れてしまい(「ちょっと遠いとこだけど大丈夫?」と心配されたのだが「行く」と即答したのをよく覚えている)、決して安くはない席で観るのであれば目一杯そのボールパークを楽しもうじゃないかと思い立ち自費でもう1日観戦することに決めた。思い立てばフットワークが良く利くのが一人旅の利点である。
行く日程は4月28日・29日の福岡ソフトバンクホークス戦。推し球団が関わらないしいち観客として楽しんでしまおうと最初から観ることに決めた。
迎えた28日。早朝のAIR DO便は機内で一眠りして朝食代わりに羽田で買ったカツサンドを食べているうちに新千歳空港に到着。ホテルに荷物を預けるとそのまま北広島に向かうことにした。札幌駅から普通列車で25分。車窓の景色がビルや住宅街から原野風景に切り替わってしばらく経つと、それは現れた。
はやる気持ちを抑えて北広島駅に降り立つ。時間もまだ充分にあるのでのんびり徒歩で行くことにした。北口から伸びていく歩道はサイクリングロードを兼ねており、晴れている日に自転車で走るのもいいだろうなと思ってしまった。
(後で調べたら、北広島駅からレンタサイクルを扱っていたらしい。ちょっともったいないことをしたなあ)
チケットを譲ってくれた知人に軽く挨拶を済ませ、その後球場外周をぐるりと一回りしたところで、一部のゲートが開いていることに気づく。このボールパークは試合のない日やナイター前の時間帯、球場内を無料開放しているのだ。お昼時とのことで中のレストランはにぎわいを見せていた。早速ホットドッグとソーセージ盛り合わせを食べる。食品会社の日本ハムなだけあってお肉が本格的なものを使っており肉汁いっぱいでおいしい。
14時半になると開場準備のために解放が終了。球場周辺を散策する。「Fビレッジ」と名付けられたボールパーク周辺の区画は開発が進んでおり、まだ建築中の施設も多かった。これからアクティビティを楽しめるスポットもどんどんできるらしいのでそこは楽しみにしたい。
予定の16時から少し繰り上げて開場。球場内もどんなところがあるのかといろいろと散策する。ゲートに入ってすぐに目に入ってくる天然芝の緑が色鮮やかなグラウンド。3層に分かれている座席のどこからでも見渡しがよく、ここは野球を観るための所なんだなと強く印象に残った。レフト・ライトの上部に設置された「野球場として世界最大」のビジョンは遠くからでも充分大きさを感じられるのに近くに来るとより迫力が増した。この球場は何もかもスケールが違う。
ぶらぶらを続けてると試合開始が近くなってきたのでこの日予約した施設へ移動。「tower eleven onsen & sauna」。グラウンドに面した建物「TOWER11」の3階にあるこの施設は、読んで字の如くに温泉とサウナがあり、この温泉自体がグラウンドを一望できる立地にあるのだ。譲ってもらったチケットは頂き物なので、自分からもお金を使わないとと思い話の種にと予約を行った。試合中の入浴で5,000円。決して安くはないが試合が見れて球場内の散策ができてこの額と考えると決して無駄遣いをしたとは思ってはいない。
が。入場の際に問題点が突然現れた。この温浴施設は洗い場のある内湯を除いた温泉・サウナについては男女兼用となっており、エリア内は水着着用が義務づけられている。もちろんこの情報は調べてはいたしレンタルの水着もあるので大丈夫だろうと思っていたものの、入場時に言われた言葉にその想定を狂わされてしまった。
「本日人気となっており、レンタルの水着がSしかないんですが大丈夫ですか?」
まずい。ここまでの事は考えていなかった。やむなくその係員に紹介を受けて、階下のファイターズショップで急遽サウナ用ショーツを購入。8,800円。予想外の散財をしてしまったなあと後悔をしつつ再度温泉に挑むこととなった。
(フォローすると、サウナ用ウェアとしてメーカーとコラボして作られたオリジナルのウェアで、着心地はかなり良かったです。何かの機会を作って着倒したいくらい)
内湯にて体を洗い軽く暖まった後、温泉のあるテラスに出る。上から見てもグラウンドはまた綺麗で、決して遠さを感じさせない。外野とか真下の立地など見づらいところがあるのは否めないが、ところどころで中継のモニターも設置されているので全体がよく分かる。そして何より窓のない開けたところである開放感。「温泉に入りながら野球を観戦」という無二のエクスペリエンスは他では味わえない楽しみになったと思う。
試合自体は延長戦の末10回に柳田の3ランで勝負が決まりホークスが6-3で勝利。ファイターズは一時追いつくもその後の決定打に決めかねる展開が続く残念な展開となった。
また明日こそはと期待を抱きつつ22時前にホテルへの帰途につく。最初こそいろいろ言われていた帰りの交通の便だが、球場内で少し待ちさえすればシャトルバスに乗るには時間はかからなかったし、新札幌駅行きのバスだと観光バスの車両で割と快適に帰ることができたので悪くはなかったように思う。それでも札幌のホテルまで乗り換え含め90分弱の時間がかかったあたり北海道はまだまだ広いんだなと強く感じる。
明けて29日土曜日。遅く起きた朝、チェックアウトギリギリの11時前にホテルを出て、再度北広島へ向かう。この日はシャトルバス。これも割と問題視されてはいたけど、「Visaのタッチ決済か現金のみ」という支払い方法もあらかじめ広く周知しておけばそんなに支障は出ないと思う。
開場間もない正午過ぎにボールパークに到着。バスだとあっという間。この日誘われたシーズンシートはバックネット裏のなかなかいいところで、改めてグラウンドとの距離の近さを実感することになる。この「ダイヤモンドクラブシート」は席後方のラウンジと直結しており、無料提供されるドリンクを飲みながら試合観戦ができるラグジュアリーな席(さらに上級のクラスだとビュッフェ形式で料理を食べられるとか)。テーブル付きの座席はラグジュアリーらしい柔らかく広く快適でなかなか立ちたくなくなる(この後ドリンク取りに行ったりご飯食べに行ったりで割と席立ったりするんだけど)。
この日の試合は序盤から主導権を握ったファイターズが3-1で勝利。勝ったときの演出もまたいい意味で野球場には思えない。試合後はファイターズガールがダンス講座も交えたショーをグランド上で行ったり、日が暮れる頃にはボールパークのライトアップが行われたりと遅い時間まで決して飽きさせることはなかった。昨日入った温泉はこの日は21時まで開いているという。ナイターは難しいと思うけど帰り客の分散には精力的に頑張っているように思える。
帰りの飛行機もあるので名残惜しくも19時頃北広島駅へのシャトルバスに乗り、そのまま新千歳空港から東京への帰途につく。滞在時間の36時間のうち半分ほどをFビレッジで過ごす形となったが決して退屈になることはなかったし、是非ともまた来たいとも思えた。
もちろん開業したばかりの施設だからまだまだ改善点はあると思う。交通やホテルなどのインフラが十分でなかったりはニュースでも割と取り上げられていたが、自分が感じたところは球場外の施設(特に飲食店)がまだまだ多くないと言うところが気になった。また開場前に雨が降ると、雨宿りができる場所が多くなく少ない施設に人が多く集まって混雑になってしまう。
それを差し引いたとしても、現状でも十分に魅力的なところは多いし、一日をここで過ごしてもまだ余るほどの楽しさがある。ベイスターズがここで試合をやる機会があるとすれば来年か再来年かはまだ分からないが、そのときは必ずまたこのボールパークに赴くだろう。それだけここが「世界一のボールパーク」になれる可能性を秘めているから。
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