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【研究計画書】Commonsに集う人々のビジネスモデルを集めたら、働き方は変わるか?

この記事は、ランサーズが運営する「新しい働き方LAB」の指定企画のひとつ、「LivingAnywhere Commons~旅先での出会いによって、働き方はどう変わるのか?〜」に関する研究計画書です。

◆実験の目的と背景

2019年12月からの新型コロナウイルス感染症の流行下では、私にとって仕事へのポジティブな影響が3つあった。

  1. 取引先がテレワークを前提とするようになった
    この結果、これまで1時間の打ち合わせのために片道2時間かけて出張する機会がだいぶ減った。旅好きの自分にとっては出張も楽しい機会ではあるが、体力や気力には代えがたい。

  2. 企業がテレワーク前提となった結果、今までに市場に出てこなかった仕事のアウトソースが始まった
    それなりの企業勤め経験はあるものの、何でも屋で過ごしてきたおかげでそれぞれの専門性が低く、「ライター」「イラストレーター」「コンサルタント」などと名乗れない事務系フリーランスの私には、クラウドソーシングで単身仕事を勝ち取っていくことが非常にハードルが高かった。
    ところが、企業がテレワークを前提とした結果、今まで内製でやってきたと思われる仕事の外部委託が進んできた。もう使うことがないだろうと諦めてきた過去の経験を活かすことができ、面談で「こんなピンポイントな経験がマッチするなんて」と喜ばれた機会が何度もあった。

  3. 結果、売上増に加え、気持ちのゆとりが生まれた
    現在私は、チームで企業をサポートするオンラインワーカー集団に属しながら、個人でいくつかの仕事を受託している。自分をひとことで名乗れないのは相変わらずだが、自身に必要な業務量を確保でき、仕事を探すストレスからはかなり解放されている。「仕事が取れない」という恐怖から離れたことで、自分がやりたいことに目を向けられるようになった。

ところが、アフターコロナの働き方では、テレワークが減少傾向にあるという。2023年5月8日、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行した。普及が進んだはずのテレワークの実施率は、少しずつ低下してきているという。

都内企業のテレワーク実施率の推移(2023年5月)
都内企業のテレワーク実施率の推移(2023年5月、東京都調べ)

テレワークが終わると、都会のサラリーマンはもとの生活に戻ってしまうのか。そうではないような気がしている。
なぜなら、コロナの前から、私のまわりには会社勤めだけでなく、自分を活かし、地域や社会に貢献したいがどうしたらいいか、という相談が数多く寄せられていたからだ。私に近い40〜60歳代、地域の負を解決するために起業を志す女性たち、さまざまな思いを抱きながら農業の道を志す人々……すでに道を進みながら悩む人もいれば、踏み出す前に迷う人もいる。私自身もそのひとりだ。

テレワークの浸透で仕事のやり方が大きく変わり、それまで大きな断絶があった「公」と「私」、「都会」と「地方」が近づき始めていることを強く感じる。この流れが元に戻ってしまわないため、50歳を過ぎた自分に何ができるのか、多拠点生活を営みながら働く個人と、彼らを受け入れる場を運営する人々からヒントを得たい。

◆検証したいこと

LivingAnywhereCommons(以下、LAC)やその周辺にいるひとびとの「なりわい」をビジネスモデルとして可視化することで、コモンズが関わるひとびとがどのように働いているのか、それは周囲にどのような影響を与えているのか(与えないのか)を明らかにしたい。
このように考えた理由は3つある。

1.コモンズを運営する人や訪れる人は、地域に何をもたらすのか

LACをはじめ、コリビングサービスの多くにはコミュニティマネージャーがいる。コミュニティマネージャーは地元の人の場合もあるが、地域おこし協力隊など外部から訪れる人のことが多いように見える。
本来客人だった地域おこし協力隊の人が、こんどは主としてコモンズを運営する。そしてそこに新たな訪問客が訪れる。比較的閉鎖的といわれることの多い地域に越してきた私にとって、そういった動きがどのような流れをもたらすのかはとても興味深い。

2.コモンズが断絶を呼ぶことはないか

「コモンズ」とは、日本語でいう「入会」の英訳である。だが、本来、というか英語での「コモンズ」は、誰の所有にも属さない放牧地(草原を広範囲に移動する遊牧民でも自由に利用できる放牧地)などを意味しているはずだ。
一方、日本の入会地は、ほとんどが入会団体などの特定集団によって所有・管理されている。私のうがった見方にすぎないが、世の中のコミュニティスペースなるものの多くは、日本的な入会地になっているような気がする。
なんでも多様にすればいいとは思わない。心理的安全性を担保し胸襟を開いてコミュニケーションを図るには、ある程度閉じる必要もあるだろう。

3.私自身の、多拠点生活者やコモンズに対する印象はどう変わるか

エラそうに述べたが、私自身これまでほとんど、LACのようなコリビングサービスを利用したことがない。知らないから壁を感じているだけなのかもしれない。
というわけで今回、利用者として体験し、新しい時代の「縁側」ともなりうるだろうLACの中の人、まわりの人にお話を聞いてみたい。

◆活動の概要

今回の活動では「ビジネスモデル」に着目したインタビューを実施する。
ここでいう「ビジネスモデル」とは、何で利益を確保しているかということではない。自身の強みをどのようになりわいに活かしているのか、その結果将来どんなことを目指すのかなど、その人「らしさ」がなりわいやLACを交えた生活にどう関係しているのかを表していきたい。
旅の途中で遭遇したものの、インタビューがかなわなかったビジネスについても、可能な範囲でビジネスモデルの記述にチャレンジしたい。

1.多拠点生活者のビジネスモデルを描く

ひとつは、LACの主人公である多拠点生活者のビジネスモデルだ。利用者自身はもちろん、コミュニティマネージャーの中にも多拠点生活者がいると聞く。ただ、研究員の諸先輩方の記録などを見ても、多拠点生活といってもほんとうに多種多様なようだ。できれば類型化を目指したい。

2.拠点そのもののビジネスモデルを知る

LACの拠点にも、それぞれの歴史や背景がある。行政をはじめとする街のプレイヤーの関与の強弱にも違いがありそうだ。可能な範囲でそういった話も伺い、この拠点がコモンズたりうる理由を知ることができればよいと考える。

3.場所にコミットしながら自由に生きるには? 「多拠点生活」のグラデーションを探る

私自身には家族の事情があり、LACが提案する「場所に縛られない自由なライフスタイル」を実践するには限界がある。しかし、各地に仕事などの関係地があり、コロナ禍でも年100泊くらい出張している。自分自身では、「いくつかの場所にコミットしながらも自由でありたい」と願っているし、こういった層は少なからず存在するのではないか。
そこで、インタビューに加え、「多拠点生活」に関するイメージや受容性を定量的に把握するアンケートを実施したい。

なお、今回の実験にあたっては以下のサポートをいただける。

【サポート内容】
①最大60泊分:LivingAnywhere Commonsオリジナル拠点特別利用権
最初に10泊分付与。その後はインタビュー1名につき2泊分が加算
②LivingAnywhere Commonsパートナー拠点割引権
③LivingAnywhere Commonsオンラインコミュニティ参加権

新しい働き方実験(第3期)指定企画の概要【LivingAnywhere Commons】

◆アウトプット・成果

この実験では、LACのユーザー・コミュマネ・地域の方などと積極的に話をし、内容を自身のTweetで発信することが求められている。
加えて、私自身では以下のアウトプットを予定している。

アウトプット①:活動記録

もともと、この指定企画の実験テーマは以下のように定められている。

場所の制約がない暮らし方(LivingAnywhere)のなかで起こる人との出会いは、自分の内側を見つめ直すきっかけとなり、そこから自身の暮らしや働き方に影響を及ぼすものです。

今回の実験では、みなさんにLivingAnywhereな暮らしを体験してもらい、そのなかで出会う人とコミュニケーションをとるなかで得た発見や気づき(Discovery)が働き方にどんな影響をもたらすのか?を実験していただきます。

新しい働き方実験(第3期)指定企画の概要【LivingAnywhere Commons】

自身の発見や気づきの記述を長らく怠ってきた自分だが、今回の実験参加をきっかけに、自分自身を記述することに慣れていきたい。

アウトプット②:多拠点生活関連ビジネスモデル20選

インタビューなどで聞き取った、あるいは観察したビジネスモデルをnoteで発表する。
ビジネスモデルの記述には、原則としてビジネスモデルキャンバスを用いる。ビジネスモデルの表現にはさまざまな図が考えられるが、そのなりわいに向かう「想い」などの非財務的要素が表しやすいと考える。加えて、私がいちばん使い慣れているツールでもある。

アウトプット③:多拠点生活に関するイメージ調査

活動の概要「3.場所にコミットしながら自由に生きるには? 「多拠点生活」のグラデーションを探る」の調査結果をnoteで発表する。

期待される成果

残念ながら、現時点で確実に「これが期待できる」という成果は思い浮かべられていない。しかし、いくつものビジネスモデルを描くこと、それらに出会った自分の心の動きを記述し、記録することで、何かが得られるはずという確信めいた予感はある。実験の過程で徐々に明らかにしていきたい。

◆実験の測定方法

「検証したいこと」1〜3をダイレクトに測定することは難しいが、一定の活動指標として、以下を記録し、まとめていきたい。

  • インタビューに関する数(依頼件数、実施件数、会った人の数)

  • 発信数(Twitter、note、その他SNS)

  • 反響数(いいね・スキ、リツイート)

◆スケジュール・進め方

2023.06.30時点では以下のように考えている。

  • 6月末:実験計画書提出(本稿)

  • 7月中:訪問場所・スケジュール作成

  • 8月〜11月中旬:LAC滞在(3〜4か所)、インタビュー実施

  • 10月〜11月末:アンケート調査実施

  • 12月中旬まで:最終報告書作成

毎月末に活動報告をnoteで発信する。また、随時noteで活動記録を発信していく。

新しい働き方LAB「研究員制度」とは
本記事は、ランサーズ新しい働き方LABの「研究員制度」に応募するために、私個人が行う「働き方実験」についてまとめたものです。
「研究員制度」にご興味のある方はこちらへどうぞ。
https://hosting.lancers.jp/lp/lab_researcher/

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