断髪小説 強制校則散髪(刈上げおかっぱ)
由佳は東京から親の仕事の都合で越してきた。
喘息持ちだったこともあり、空気がとても綺麗で、この土地をすぐに気に入った。
そしてこれから通う中学校に挨拶に行くことになった。
生活指導の先生と、校長先生、由佳と、由佳の母、の四人で面談室に入る。
授業内容など、説明が終わった後、生活指導の先生から、
「由佳さんはいま髪が長いですが、この学校では校則で禁止されていますので、次の登校日までには直してくるようにお願いしますね。」
と言われてしまった。
由佳は内心かなり動揺したが、髪型についての詳細の書かれたプリントを渡され、はい、と言うしかなかった。
いまの由佳の髪は、腰に届くほどの綺麗なロングヘア。
しかも月に一度トリートメントもするほど、とても大切にしているものだった。
しかし、先ほど貰ったプリントを見ると、このように書いてあった。
・前髪は眉毛よりも3cm以上でまっすぐに切り揃えること。
・横髪後髪の長さは耳たぶよりも上で切り揃えること。
・それより下は2㎜のバリカンでさっぱりと刈り上げること。
「規定がありますので、必ず従ってください。」
由佳は逃げ出したいほど嫌な気持ちだったが、その場では何も言うことができなかった。
「お母さんどうしよう…」
「どうしようって言われても…切るしかないでしょ」
「この辺にいい美容院ないかな」
「刈り上げるなら、床屋に行きなさい」
「床屋!?そんなの嫌だよ」
「仕方ないでしょ、ほら」
母に財布から5千円を渡され、家を出た由佳だったが、床屋の場所もわからず、ふらふらと街を彷徨うこととなった。
ふと、サインポールを見つけ、中の様子を伺った。
すると、店員とみられる人が出てきて、「お嬢ちゃんのカットはやってないんだ、やるならミサキ床屋がいいと思うよ」と親切に教えてくれたが、
恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまった。
どうしよう、私、緊張しすぎて変になりそう…
「あっ、これだ」
目の前に先ほどのミサキ床屋があった。
カランカラン…
何周かしてから、勇気を出して中に入ると、男の子がバリカンで頭を刈られているところだった。
「いらっしゃい、ちょっと待っててな!」
「はい…」
由佳は待合スペースに座り、男の子の様子を伺っていた。
頭の前から入れられたバリカンはかなり短いのか、バリカンの通り道は青白くなっていた。
耳周りや、襟足も丁寧に何度も刈られて、あっという間にきれいな青坊主になった。
「はい、お嬢ちゃんお待たせ」
「あ、あの…その…」
「あー、転校生だろ、だいたいわかるよ、思いっきりバッサリいっちゃっていいよな?」
「…はい、お願いします…」
「遠慮して長めにやると、学校で直されるから、短めに切るな」
「…はい」
嫌なワードが飛び交って、由佳は心が震えた。
手を出せないようなお子様向けのケープをかけられ、首に強くネックシャッターをつけられた由佳は、もう不安で爆発しそうだった。
「じゃあ切るね」
ジョキン
バサッ
床屋は由佳の耳上のラインで一気にハサミを入れた。
反対側に回って、同じラインにハサミを入れると、すぐ伸びてきちゃうからな、と独り言のように呟いた。
「短い…」
由佳は予想していた以上の短さに、戸惑いを隠せなかった。
そして床屋は後ろの棚に向かったと思えば、大きな黒光りするバリカンを手に取って、コンセントに差し込んだ。
「え、それ、使うんですか?」
「当たり前だよ、刈り上げないとダメだからね」
カチッ…ビューン
「頭倒しといてな」
床屋は由佳の頭を前に押さえつけると、耳から繋がる長さにバリカンを当てて、そのラインよりも下の髪を、どんどん刈り落としていった。
ヒューン…ガリガリ、ザリザリザリザリ、ヒューン…バリバリ…ビィーン
何度も何度もバリカンを往復させて、アタッチメントを交換しながら、由佳の髪を刈り上げていく。
私の髪、どうなっちゃっているんだろう…
目の前の鏡に映る自分は、耳ラインのおかっぱで、横に流した長い前髪だけが浮いている。
後ろはよくわからないが、手を出すことができないので、長さもよくわからない。
「ちょっと、目、瞑ってて」
チャキ、チャキ…
前髪を持ち上げられ、何度かハサミを入れられた。
落ちてきた髪を払うと、鏡には、眉上3㎝の眉の太い、イケてない田舎の女の子がうつっていた。
「はい、こんな感じだね、またすぐに伸びてきちゃうから、定期的に来てね」
そこで鏡越しに見せられた衝撃的な姿に由佳は頭が真っ白になった。
分厚く切られた前髪は、手で押さえつけても眉毛より3cm以上、上でまっすぐに揃っていた。
横髪は、まっすぐに揃えられて、耳たぶよりも上で切り揃えられている。
それより下は、バリカンで青白く、さっぱりと刈り上げられ、たわしのような感触がしていた。
確かに校則には引っかかっていないけれど、青すぎる刈上げに、動揺してしまった。
家に帰ると、母が苦笑いで迎えてくれた。
これであと何年か生活すると考えると、由佳は倒れてしまいそうになった。