見出し画像

インチキ アーティスト スター 1

オレはアーティストだ。誰かに「働け!」と言われれば、そう答え拒否する。正直いうと、仕事がそんなにスキでもない。

もちろん、アンケートなどの仕事欄は無職に花丸し、上からキスをする。アーティストの天職は、無職だ。オレは幼少から致命的に集団行動がムリで、幼稚園を度々抜け出し、お遊戯は絶対に参加しなかったらしい。

子供時代の記憶など、覚えてないものだが、弟が同じ幼稚園のお受験で門前払いを食らい、知った。一応、お受験して受かったオレは弟より優秀だ。

物心もつき、精神病院に入らず生きていくため、普通の変わり者のフリをして学校に潜り込み、会社ではガマンする訓練をしたが、やはりムリなものはムリだ。

それでも三年働いたら、失業保険が出る、「石の上にも三年、石の上にも三年」と便所の壁に貼り付けガマンだ。

今年も七月いっぱいまで働いていたが、ある朝、会社の事務所から「ちーちゃん、おはよう。チーちゃん、おはよう」という女の声が聞こえてきた。インコを飼っていたが、普段オレたち社員を人生の敗北者と呼び、挨拶しない専務には、以前からむかついていた。

「インコもチンコもしゃべらんわ」と専務の前でチャックを開け、前を出し、すると辞表も出すことになった。もう三年以上、働いていたのでなんの後悔もない。

しかし、失業したからといって、すぐに保険をもらえるわけではない。三ヶ月間の支払い猶予期間がある、まあ三年も辛抱したんだ、たいした期間ではない。便所に貼ってあった紙を「石の上にも三ヶ月」に書き直した。

「なんのアートをやってるか」って? いろいろだ。アートの総合商社だ。絵も描けば、詩も書き、俳句、短歌、あと何がある? 絵本も出したな。履歴書に沢山の資格を書くヤツと同じ考え方だ。

どれも、まったくと言っていいほど売れないが、気にしていない(気にしろ!)。アーティストというのは自分の作ったモノが好きすぎる人間のことだ。それは違うと言われれば、その人にとって違うだけのことで、オレには関係がない。

オレはオレの作ったモノが大好きだ。それで、幸せなのだから仕方がない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?