見出し画像

かすみを食べて生きる90:初鰹 青葉も鳥も 見えずとも

脳梗塞 発症2か月と27日目:リハビリ病院3か月目⑥

食事:脳梗塞(ワレンベルグ症候群)の後遺症のため、嚥下ができなくなり訓練中。食事形態はミキサー食からみじん食を経て、先週3食常食(普通食)にたどり着いた。首を左に向けると飲める。
状態:歩けるようになってきた。終日、館内フリー歩行自立。きょろきょろすると少しめまいがする。

病棟内。新緑の青葉は見えず、ほととぎすの鳴く声は聞こえなくても、お皿にのって夏はやってきた。
早く家に帰らなくちゃ。
退院まであと5日。

『かすみを食べて生きる 序文と目次』
<発症2か月と26日目:リハビリ病院3か月目⑤
発症2か月と28日目:リハビリ病院3か月目⑦>

朝ごはん#33

昨日の昼食で、パンを試して大丈夫そうだったので、今日から朝食がパンになった。

久しぶりの食パン

朝のおかずは品数は少ないけどしっかりした量。
献立はこちら。

  • ハムとキャベツのスープ煮

  • ジョア

  • パン

  • ジャム&マーガリン

  • キウイとオレンジ

食パン、久しぶり。
昨日丸パンは水分がないと飲みこみにくかったけど、マーガリンがあると油分があるからか水分がなくてもなんとかいける。
ジョアと一緒にいただいても食べやすい。
食パンおいしい。
ハムとキャベツのスープ煮はキャベツもハムもしっかり噛めば飲みこむことができる。
キャベツはもう少し煮た方が、のど通りはよさそう。
家で作る時は圧力鍋を使おうかな。
所要時間は40分。
おかず全量でもいいペース。

初鰹 青葉も鳥も 見えずとも:お昼ごはん#46

鰹のたたき!

すごい!かつおのたたき!
夏が、夏がお皿に乗ってやってきた!!
献立はこちら。

  • かつおのたたき、ポン酢

  • 南瓜と昆布の煮付け

  • 味噌汁

  • 軟飯

病院食で生魚を出すのは、恐らく大変なこと。
調理師さんや管理栄養士さん、食材を調達する人がすごく頑張ってくれて、このお皿がここにやってきたことが想像できる。
季節感を感じることが難しい病棟の中で、この一皿が私のところに夏を連れてきてくれた。
夏が来てしまう。
子どもの夏休みが始まる前に、早く家に帰らなきゃ。
料理に急き立てられる。

食べることができなくなったからこそ、食事はただ栄養補給するためのものではないことを痛感している。
味わうことの楽しさ、噛むことの気持ちよさ、食材や料理で感じる季節感。
食べることは心を健やかにして、「今」を生きていると実感することにつながると思う。

いただきます。
かつおのたたき。久しぶりの生魚。身がとろけておいしい。
生魚大好き。
また食べることができてうれしい。
かつおの皮は少し硬さがあるので、そのまま飲みこまないように注意。
薬味のねぎも口の中でバラバラになって飲みこまないように、他の野菜とまとめて食べる。

身がとろけるかつおのたたき

南瓜と昆布の煮付け。これはなかなかの量。
もともと芋栗南瓜系は咀嚼に時間がかかり、口の中でトロトロになるけど飲みこみに力がいる。
それがこの量。

南瓜がいっぱい

しっかり咀嚼して、がんばって飲みこむ。
ちょっとしたトレーニング。
所要時間は50分。
1時間はきった。

栄養指導

管理栄養士の竹中さん(仮)による退院前の栄養指導。
ちょうどかつおのたたきの感動が冷めやらぬタイミングだったので、興奮気味においしかったことと、ありがたかったことをお伝えする。
「それはよかったです!あれはちょっとがんばっています」
とのこと。
ほんとにおいしかったです!

そして本題の栄養指導。
退院後どのような食事を摂っていけばいいかというご指導。
事前に発症前、普段のどんなものを食べていたかをお伝えしていて、そこから竹中さん(仮)がざっくりカロリー計算をしてきてくれた。
私がに必要なカロリーは1日に1700kcal。
今まで家で食べていた程度食べることができれば、追加のアイソカル(栄養剤)はいらなさそうとのこと!
野菜は、加熱野菜なら1日に片手3杯は食べましょうとのことで、副菜の野菜たちをもう少し食べた方がよさそうだということがわかった。

アイソカル!退院までに卒業できるかもしれない!

夕ごはん#26

量がすごい

すごい量。発症前もこの量は食べたことない。
これでごはんが大盛りだったら、男子高校生の夕食かなと思う程。
献立はこちら。

  • 鶏肉のクリームシチュー

  • コールスローサラダ

  • ひじきの炒め煮

  • りんご

  • 軟飯

シチュー、食べやすい。具はしっかり咀嚼が必要。量との闘い。
困ったのが、ひじきの炒め煮
小鉢にこんなに大盛りのひじき。
かなり噛まないと飲み込みが難しい。
そして量が多い。おいしいけれども。
ひじきをこんなに食べたのは初めて。
小鉢の概念を超えてると思う。
りんごもしっかり噛めば飲み込みやすい。
噛んで噛んで噛みまくる。
それでも所要時間は1時間10分。
これは飲みこみやすさというより単純に量の問題。


ーー振り返って

心得もない俳句をうっかり詠んでしまう程、鰹のたたきに感動してしまいました。
食事の持つ力を感じた一皿でした。
経鼻栄養でもおなかが満たされる喜びがありました。
1か月前に食べていたミキサー食も、すべてペースト状ながら味やのど越しの違いを楽しんでいました。
でもこのかつおのたたきまで来ると、もうミキサー食には戻れないかもしれないと思いました。
栄養に季節感も考えた献立、調理、配膳、食事にかかるすべての手間に感謝を感じずにはいられませんでした。

そして、追加のアイソカル(栄養剤)からの卒業が見えました。
私の食べるモチベーションはさらに上がりました。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集