ジャイアンシチュー小論
ジャイアンで小バズりました。
ジャイアンリサイタルの衣装が80年代のLAメタルやグラムロックがモチーフなんじゃないかって話を聞き、「ってことはアレは音痴じゃなくて、わざとシャウトしたりデスボイスっぽく歌ってたのでは?」というだけの与太話だったのですが。
皆さん、やっぱりジャイアン好きなんですね。
ということで、せっかくなので前から温めていたジャイアンに関する考察をもう一つ、蔵出ししようと思って帰宅して爆速でこのテキストを書いています。
音楽と双璧をなす彼の迷惑趣味と言えば料理です。
「♪ボエ~」がデスメタルだった可能性を考えるなら、「ジャイアンシチュー」も本当にただ適当に作ったデタラメ料理だったのか再検討する余地があると思うんです。
ジャイアンシチューにも、もしかしたら彼なりの理想形があったのかもしれない。
そこは、お小遣いも乏しい実家住まいの小学生ですから、材料を思うように揃えられず、家にあるものでなんとか代用して作ったのがアレだったんじゃないか……という考察です。
ジャイアンシチュー(てんコミ13巻他「ジャイアンシチュー」)の材料と言えば、
①ひき肉
②たくあん
③塩辛
④ジャム
⑤煮干し
⑥大福
ディナーショー回(てんコミ41巻他「恐怖のディナーショー」)ではそこにさらに⑦セミの抜け殻とか入るわけですが、これを一個一個、好意的に解釈してみようじゃないかと。
①ひき肉は普通にコンソメを作るときに使われる食材なので措くとして、
たとえば、③塩辛と⑤煮干しは、「カタクチイワシの塩辛」であるアンチョビを本当は使いたくて、その代用として2つ選ばれたのではないか。
(パスタで、アンチョビの代わりにイカの塩辛や酒盗を使うアレンジレシピはよく聞きますよね)
⑦セミの抜け殻も、「甲殻類の殻と成分はキチン質で同じ。アジアではセミは食材」という情報を彼が持っていて、出汁を取るためのエビの頭の代わりと思っていたのかもしれません。
⑥大福は、シチューのルウに必要な小麦粉と、具材となる小豆(イタリアのズッパ・ディ・ファジョーリやブラジルのフェイジョアーダなど、アズキは豆類として普通にスープの具で食べられる食材です)を兼ねての投入。
そして②たくあんはシンプルに「大根として」の投入なんじゃないかと。
だから、大根類(あるいはカブ類)が入ってとろみがあるシチューということで、方向性としてはボルシチっぽいものを作りたかったのでは?と想像します。
ボルシチにかかせないテーブルビートは、形状や食感から「ウズマキダイコン」「サトウダイコン」なんて呼ばれたりしますからね。
④ジャムはおそらくベリー系だと思われ、ボルシチに欠かせないビートの甘みと赤い発色を補うために入れてるんじゃないかと思います。
傍証なのですが、ジャイアンシチューってアニメになると毎回、紫色で表現されてるんですよ。これ、ボルシチの色ですよね?
アンチョビと豆が入っている(勝手に言ってるだけです)ので、イタリアの豆とトマトのスープ「ズッパ・ディ・チェーチ」がモデルかもとも思ったのですが、調べてみるとウクライナやポーランドなどでは、クリスマスと復活祭前の断食(陸生動物性の食品を食べない)期間が重なるために、このホリデーシーズン独自の御馳走として、「お肉を入れない魚介の出汁のボルシチ」があるそうで、ジャイアンシチューの起源はこれ説を提唱したいです。
……ひき肉で出汁摂っちゃってるんで断食期間に食べたらたぶん怒られますが。
ポーランドなんて、デスメタルが盛んな国だったりしますからね。ジャイアンがカルチャーを追ってる可能性ぜんぜんありますから。
これ、みんなびっくりしないでほしいんですけど、漫画の「ジャイアンシチュー」の回の初出って「小学三年生」1977年1月号なんですよ。
つまり、1976年の12月に出てる月刊誌に掲載なんです。この話、クリスマス回なんですよ!
実はジャイアンはポーランドのクリスマスを祝いたかったんですね!はい論破。お疲れさまでした。
というわけで、私が妄想する「正式なジャイアンシチュー」のレシピは、
(1)炒めたひき肉とエビの殻で出汁を取り、スープストックを作る
(2)1cm角に切った大根(本来ならビーツ)と小豆、エビの身、アンチョビを鍋に入れ、小麦粉を振り入れて粉っぽさがなくなるまで炒める
(3)スープストックを数回に分けて入れて具材がしんなりするまで煮込み、塩コショウで味を調え、最後にベリーのジャムを隠し味に入れてひと煮立ちさせる
こんな感じのスープだったんじゃないかと思います。もしジャイアンにアドバイスするなら、ジャムの砂糖甘さよりも、アンチョビに合うキャベツとか玉ねぎで野菜の自然な甘さを引き出して、色はトマトピューレで出した方がコクも出るかなぁ、って感じです。
(「恐怖のディナーショー」では味噌で味を調えよう、とも言っているので代わりにトマトピューレやケチャップを入れるのはそんなに抵抗ないはず)
さてさて。明日も仕事だってのに私は日曜の夜に何を一生懸命書いてるんだ……。
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