『僅かばかりの暗がりの果てを探しに』 1.
もうやらない、もうやらないぞ、と自分に言い聞かせて14時間と少しが経った。
日付をまたいで今日もやっている。
いつからかこんな自ダ落な(漢字が出てこない)生活態度になっただろう、と思ったが、生まれつきであったような気がする。いや、小学校では真面目な一児童だったはずだ。大人は怒ると怖いと私は知っていた。
昨日の話をしよう。
はっきりと印象に残っている。コンビニの前、太ったノラ猫と赤いベンツが、合わせて路駐してあった。
ベンツの上に居座り、じっとにらみつける猫。気分悪そうに私を睨んでいる。別に私からガン飛ばした訳じゃないのに。コンビニからベンツの持ち主とツレが帰ってきた。私はこの時、もうやらないと決めたのだった。何を?
若い女とセックスすることを。
まてまて、急に何をと思うな。飛ばして読んでしまった奴はちゃんと上から読め。
だれだって若い女とセックスしようとがんばっているだろう。私は特に変なことだと思わないが、女の私がそう話を始めても、大げさではないだろう。
ベンツの主は車のエンジンをかけて猫に退去を促した。ツレの女性も助手席に乗り込む。彼女と目があうと、ようやく私に気付いたようで、かなり驚いていた。彼に悟られないように、猫を指差してはマゴマゴと目と口を動かしている。
重い腰を上げて猫が降りてきた。それは全く落ち着き払った、もう少し粘っても良かったがな、というノリで、ただただ面倒臭そうだった。
昔の話をしよう。
私はたくさん若い女とセックスしたのだ。目標もなく遊び耽り、ホテルでアイスを口移ししたり、病院で果物とかを口移しされたりなどした。
「まよちゃん、びょーきうつっちゃうよ」
びょーき、というときのちょっと意地悪な言い方が好きだった。今も好きだ。わたしの名前はマヨリという。
びょーきだったあのお姉さんはまよちゃんと呼んだ。
「うつるびょーきじゃないでしょ」
なんてタメ口きいて、カーテンで二人だけの花園を楽しんでいた。他人には、この世界はどう映るのだろうね。
いつの日か、女は男のものになる。現代になっても、ほとんどの女がそうで、ほとんどの男がそうだ。私は女を先取りしていた。君たちよりも早く、私のものにしていた。これは私の自慢だ。