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健康で不感症な僕らのための異常心理学

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2019年4月の記事一覧

名残香 前編

「まど、閉めるね。」
季節は春、若者は周期的に浮かれる。最後に僕らが浮かれたのは、大学に入った2年前のこと。彼女も同じなはず。
付き合ってもないのに、昔別れたっきりのはずなのに、彼女はどうしてか僕の下宿に来ていた。わざわざ親に嘘をついて、親戚の家には「友達の家に泊まる」と言って、ゴールデンウィークでもないのに東京を出てきた。なにも思ってないふりをして、なにも期待してないふりをして、僕は文句を提案も

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