【臥龍山荘】 数寄屋建築のディテールの宝庫
肱川流域随一の景勝地「臥龍淵」に臨む数寄屋造りの建物で、「大洲の桂離宮」の異名を持つ。細かい個所にも贅の限りを尽くした意匠が施されていて、その美しさは日本を代表する名建築家・故黒川紀章に「桂離宮にも劣らない。借金してでも手に入れたい!」と言わしめたほど。澄んだ空気が心を洗い流し、静寂な時が俗世間を忘れさせてくれる。日本古来の美と品性に出会える風情漂う稀代の名建築。国指定重要文化財。2011年には、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンの一つ星を獲得しました。そのせいか、最近は海外の方がよく来ています。
凄く魅力があるのですが、表立っては知られてはいないような気がします。何となく訪れてしまうと分かりにくいので、これからここを訪れる人に見るポイントを紹介。
●どんな所?
昔はローソクは木蝋といって、ハゼの木から材料を取っていました。この木蝋貿易で富を得た河内寅次郎が、十年余りの歳月をかけて、京都の職人を呼び寄せて建てた建物です。
当時、京都だと変わったことをすると周りの噂の的になり、批評が飛んでくるので突飛なことはできなかったのですが、ここ愛媛ではかなり自由にアイデアを盛り込んでいます。そしてそのやり方が洒脱。お金も手間もかけてるけれど、それを全面に押し出さない粋なセンスがあります。
●特徴
農村風の藁葺き屋根を採用。
不老庵・臥龍院・知止庵の3つから成っています。
不老庵・・・最初にできた建物。こちらは気取ってない風で、まさしく山荘といった趣。臥龍淵を眼下に見る崖の上に懸り造りに建てられています。まるで川の上の船のよう。
臥龍院・・・清吹の間(せいすいのま)、壱是の間(いっしのま)、霞月の間(かげつのま)があります。この3つの中では一番作り込みがあります。
知止庵・・・元々浴室として建てられ、戦後に茶室に改装されています。”知止”とは、”とどまるべき程度を心得る。分を知って度を過ごさないこと”という老子の言葉から来ています。
●ディテール
【不老庵】
・捨て柱
外に出て裏に廻ると生きた槇の木を使った「捨て柱」が見られます。
不老庵を支える支柱に見立てられたものです。実際は奥に柱があるのですが、あたかもこの木が不老庵を支えているような演出がなされています。
・天井の反射
夜になると下を流れる肱川に月の光が反射し、さらに室内天井に反射して室内が明るくなる作りをしています。これも最初から計算していたのでしょうか?凄いですね!
私は昼に行きましたが、天井に太陽の光が反射していましたよ。
【臥龍院】
・仏壇の明かり
仏壇があるのですが、ここに火を灯すと、霞月の間の円窓が光り、月明かりのようになるんです!面白い仕掛けですよね。
月に霞で霞月の間ということ。洒落が効いてます。灯がついた所を見たかった・・・
・廊下床の板張り
これ、板が何枚か貼ってあるように見えますが実は仙台松の一枚板が使用されてます。一枚板にあえて溝を入れているんです。
1枚板だといかにも高級な作りになってしまう所を、あえて溝を入れて肩肘はらない造りにしているんです。
よく見ると木目の柄が繋がっているという仕掛けです。
・縁側の出隅金具と飾り釘
ここの出隅は普通は金具を入れない所です。やりたいからやっているのでしょうね。
飾り釘はこの建物のためだけの特注です。一箇所だけ名を刻印してある釘があります。時間があれば是非探してみて下さい。
・建具の戸袋の見せ方
縁側の建具の戸袋の裏側を見るとダミーの収納になっていました。
おそらく収納風の襖を開けると中が連動引き戸になっていて、メンテもできるようになっているはずです。私はこういう工夫にグッときます。
・清吹の間
欄間の透かし彫りが障子を越しに見えます。
【庭園】
・飛び石
飛び石にてまり石や臼を使っています。
窪みがあるので雨が降ったらそこにも水が溜まって、表情が出そうですね。
飛び石には建物を大きく見せる効果があります。
飛石を踏んで移動するときは、足元を見るようになります。
そして、家の入り口に立った時には必然的に目線を見上げる形になり、建物を大きく感じるんですね。
・灯籠のぼたん苔
珍種の苔で、100年かけて育ったらしい。
臥龍山荘、なんといってもここのいい所は縁側の気持ちよさ!
私は秋に行きました。お庭も見えてひなたが暖かく最高でした。日本建築っていいなあと思わされます。写真で見るより現地で良さを実感できる場所です。
そして臥龍山荘に行くなら 4月〜10月の日曜、祝日がおすすめ。
不老庵内で創作和菓子付き抹茶を400円で頂けます。(※2023/11/3現在の情報)
アクセス
公式サイト
●周辺おすすめスポット
・盤泉壮
井國五郎氏によって大正15年に建設された別荘。
・和菓子
大洲名物『志ぐれ』。
何件かお店があります。
・うなぎ、鮎
是非川魚を。
お昼は14時頃に閉めてしまう所がほとんどなので気をつけて。
・うどん
老舗のうどん屋さん。手延べです!ここは昼過ぎまで営業されています。柔らかめのうどんで甘めのお出汁。(※2023/11/3現在の情報)
・大洲城・街並み
清流・肱川が流れる大洲は「伊予の小京都」と呼ばれています。
「おはなはん通り」は、昔の連続テレビ小説のロケ地。
宿泊は、街の歴史建築に泊まれる分散型ホテルがあります。
家族や友達、恋人と歴史を感じながら滞在するのはいかがでしょうか。
また、面白い試みとして大洲城に泊まれるプランがあります。
1泊¥550,000〜で城主気分を味わえます。
こちらのプラン、臥龍山荘での朝食付きでした。
以上、臥龍山荘とその周辺の見所案内でした。
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