完走した感想
この画像だけ見て、なんのゲームか分かる人がいたら凄いですね。
これだけだったら、「パワポで作ったスライド」って言われても、確かになあってなりますね。
と、いうことで、今回遊んでいたゲームはこちらです。
ATRI-My Dear Moments-
というゲームです。
ノベルゲーの類ですね。
物語を簡単に要約すると、
「ロボットみたいな人間と、人間みたいなロボットが、廃れた町で一夏の青春を過ごす」
みたいな感じです。
感情の乏しい人間が、感情豊かなロボットに出会って、一緒に生活をしていく中で、人間は感情豊かになっていくが、ロボットの方は……みたいな。
感情豊かな……とまで行かずとも、感情のあるロボット(アンドロイド)と、人間の物語っていうだけなら、最近だと「プロジェクトセカイ カラフルステージ!feat.初音ミク」が、古いのだと、「フルメタル・パニック!」のアルが当てはまりそうですかね。同じロボットの系列だと、「翠星のガルガンティア」のチェインバーとかもそうですかね。あっちの場合は、お互いに感情がほぼほぼなかったですが。
ただ、上記のこれらは「人間とロボットのバディ物」みたいな感じです。
現に、プロセカにおける、「初音ミク」といったバーチャル・シンガーは、登場キャラたちの「サポート役」として動いています。それはフルメタのアルも、ガルガンティアのチェインバーも同じですね。
このATRIも、最初はサポート役でした。
しかし、話を進めていくと、徐々に関係を深めていき、それは「人間」と「ロボット」の垣根を超えた関係になっていきます。
簡単に言うと、恋愛関係ですね。
あっ、ネタバレ注意です。
あらすじ
そういえば、タイトルにある、「ATRI」って、これはなに?って方はいると思います。
簡単に説明すると、このATRIは「アトリ」と発音します。そして、名前が題名を冠している時点で、お察しの方は多いと思いますが、このゲームのメインヒロインのアンドロイドです。劇中では「ヒューマノイド」と呼ばれていました。
一見すると、とてもかわいい幼い女の子にしか見えないと思いますが、その実態は、家事をはじめとした、何からナニまでお世話してくれる高性能ヒューマノイド!
などではなく、家事はマトモにできなければ、下世話な話も「ロボット倫理規定」に抵触するから禁止という、なにもできないポンコツロボ子でした。
ぶっちゃけ、これを高い金で買わされたら、僕ならまあまあキレると思います。顔がかわいいので、電源を切った状態で犯す奴は出てきそうですね。
ですが、この子はなにを隠そう、実は戦闘ロボットなのでした!
家事なんてできなくてもいい!戦え!正義の怒りをぶつけろ!
それがロボットってもんですね。
Net Flixで配信中の「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」でも、悪しき虐殺テロリスト系クソカス宇宙人共に、我らが正義のガンダムが、正義の怒りをぶつけていましたね。
このアトリも、弱き者を虐める悪人に、正義の怒りをぶつけた過去があります。宇宙世紀くらい人権が軽く、混沌とした世界なら、英雄扱いになりそうですが、実はこのアトリの世界は、現代日本からそう遠くは離れていない時代が舞台。人権意識高めなので、ロボットには原則という縛りが設けられています。その原則の一つに、「人間に危害を与えてはいけない」的な条項があります。
つまり、ロボットは人間を殴れないように作られているんです。
なのに、アトリは人間を殴ってしまったんです。
それには、「マスターである女の子がいじめられているのを助けるため」という理由があるわけですが、でもバグはバグですね。となると、即刻回収・解体が普通です。それは、あんなにかわいい少女の見た目でも例外ではないです。
ですが、なんとこのアトリは、解体工場から逃げ出してしまいます。横でプレス機によってグシャグシャに潰されていく仲間を見て、生きたいと思ってしまったわけです。
そうして、また解体工場に連れていかれないよう、バレないようにと彷徨ってから、数十年が経ったある日。マスターを見つけます。しかも、トンネル崩落事故に巻き込まれたマスターを、です。悲しいですね。しかし、ロボットに悲しんでいる暇はない。マスターが危機的になっているのを見たロボットは、プログラムの通り、もう助けるしかないわけです。そうしてトンネルに突っ込んでいき、マスターの元に駆け寄ると、なんと死にかけでした。その死にかけのマスターは、アトリにこう言います。
「子どもをよろしく」、と。
はい、この子どもが主人公の夏生です。
この夏生は、トンネル崩落事故で母と片足を失い、では父はというと、多忙でほとんど家に帰ってこない。いわば、孤独なわけです。
そのため、祖母のいる田舎町に引き取られるわけです。
しかし、孤独は増すばかりで、それに耐えきれずに自殺を考えていた時に、アトリに出会うわけです。
そして、アトリにギュッと抱いてもらいます。
母親を亡くしてから久しく抱きしめられたことがない夏生は、もうボロボロ泣いてしまいます。
そして、アトリに恋をしてしまうわけです。
そんな夏生ですが、ではこのままこの片田舎に住み続けるのかというと、そうではありません。そんな器じゃないのです。
この夏生には夢がある!
それは、「地球を救う」という夢です。
そして、それを叶えるために「アカデミー」という学校に通うようになります。このアカデミー、例えるならフランスのエコール・ポリテクニーク、日本なら東工大付属校みたいなものです。
なんとなく分かりましたか?
要するに、理系のエリート排出学校です。
そんな学校に行っても落ちこぼれるやろと思うかもですが、夏生は、周囲より頭一つ出て優秀でした。だから、周囲を見下します。
「平凡なお前らを、俺が救ってやるよ!」
みたいな、尊大な自尊心を持つようになります。
そうやって、周りを見下して知識を身につけていく夏生。
ですが、知識を手に入れれば手に入れるほど、あることに気付いてしまいます。
「地球は救えない」。
まるで、風刺画みたいですね。
そうやって、風刺画の右の人みたいになった夏生は、やる気を失い、成績は急降下。かと言って、今まで見下してきた他の生徒に、今更助けを乞うことなどできず、それどころか、いじめられるようになります。この家系は、いじめられる系譜なんですかね。
そうしているうちに、父親はアカデミーの学費を工面するのが困難となり、夏生はアカデミーを退学させられてしまいます。
行く場所もなく、田舎に帰ってきた夏生は、細々と暮らすことになります。そんな夏生を、不幸が襲います。
唯一の親族である祖母が死にます。
思い出の場所でもある祖母の家は、海面上昇の影響で海の中へと沈みます。
実は、祖母には多額の借金がありました。
夏生が代わりに背負います。
そしたら、キャサリンとかいう借金取りが来ます。
キャサリンに「海に沈んでるババァの家に、なんか高価な品があるらしいぞ、取ってこい」と言われ、夏生は、潜水艇で祖母の倉庫を探す日々に追われます。
そしたら、なんか寝てる奴を発見します。
アトリだー!
はい。
あらすじはこの辺にして、ここからはダラダラと感想を書きます。
感想
正直、ノベルゲーム……というより、ギャルゲーですね。こういった類のゲームをやったの、高校生以来なので、めちゃくちゃブランクがありました。
というのも、文章を読むゲームって、その性質状、どうしても退屈になっちゃうので、なんかしてないと気が休まらない、多動性な自分からすれば、割と不向きなところがあるんですよね。
なので、場面が変わるごとにタバコ吸ったり、お酒飲んだりしていました。
でも、物語が佳境に入っていくと、なんか見入っちゃってました。
ゲームが終わるころには2箱目に入ってるかなとか思ってましたが、まだ1箱吸いきってないです。
それくらい、面白い話ではありました。
最後まで読んで、「なるほどね、そうやって落とすのね」と、割と勉強になったところもありましたしね。
メインヒロインの子も可愛かったですし。
ごめん、アトリ……
途中から、「水菜萌ちゃんまだ?」ってなってた……
ごめん、ロリ趣味はあまりないんだ……
「MINAMO-My Dear Moments-」にしようぜとか思ってた……
物語自体は、近未来SF×青春みたいでよかったです。
序盤は、「まんがタイムきららのラノベかな?」ってくらい日常が多かったので、割と飽きはじめてましたが、伏線回収のターンになるにつれて、目を引き付けるような展開になっていって、とても良かったですね。
ラノベで思い出しましたが、2020年に、第27回電撃大賞を受賞した「ユア・フォルマ」も、感情の乏しい人間と、感情豊かなアンドロイドのバディ物でしたね。あれは結構面白かったので、お勧めします。
話をATRIに戻しましょう。
近未来SFだけあって、結構直近の未来予想図に対する警鐘的なメッセージを多く読み取れました。
海面上昇による町の水没、人口減少によるアンドロイドの繁栄、アンドロイドの持つ危険性etc……
環境問題はもちろん、少子高齢化によるなり手不足、からのロボットに仕事を奪われるという話題、そしてアンドロイドの危険性はそのまま、「AIの危険性」という文脈で語られることは多くなったと思います。
環境問題については、「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」の作中で、マフティー名乗るハサウェイが体験した通り、「100年後の環境より、目の前の貧困を解決したい」という意識が多くの人の中にあるだけで、悪化を止めることはできません。そういった刹那主義的な考え方を、若年層を中心とした人々が共通して持ってしまっている現代社会では、人口減少も止まりません。結婚して、子どもを産むことによって生じる、目の前の不自由より、結婚せず、子どもも持たない自由を選択する人が増えるからですね。それは、今ある快適なサービスを供給してくれる人の減少に直で繋がるので、50年といった長期的なスパンで見れば、不自由になります。しかし、「そうなったら、安楽死なり、自殺なりでこの世から消えればいい」と安易に考えてしまえるからこそ、この問題を解決するのは難しいでしょう。
そうした現状があるからこそ、農業やゴミ掃除といった、今の人があまりやりたがらない仕事を代わりにしてくれるアンドロイドの開発に希望が持たれ、人間はその傍らで絵を描いたり、本を読んだりするのを思い描いていたわけです。しかし、実際には、それらより下位にある家事といったものを全てやってくれるロボットすらいまだに現れず、代わりに、AIは絵を描き、文を要約するようになりました。AIは高度情報通信社会が産み落とした赤子なわけですが、赤子故の倫理観のなさを利用した人間に悪用され、ディープ・フェイクといった危険性を簡単に発現してしまいました。
AIは、人との間にある「使う-使われる」という関係を、割と簡単に逆転してしまうかもしれませんね。僕はまだ学生なんですが、周りの学生は、「文章を要約せよ」という課題を、すぐにchat GPTに任せ、それを提出しています。
この現状を見るに、思考力も、知識も、AIの方が上でしょうね。いずれ、人間が自らの意思でメンテナンスするのでなく、ロボットに「そのネジをまた絞めてくれ」や、「足にオイル垂らしてくれ」と命令され、はいはいと従うようになるでしょう。まあ、そちらの方が便利ですが。
上記のもの全ては、人間の猿真似のように見えますが、「坂の上の雲」で語られていた話によると、日本は西洋の猿真似で発展してきた国です。では、今の日本は西洋の植民地的に発展しているかというと、そうではなく、その猿真似に国家、ひいては民族的なアイデンティティを反映し、独自の発展をしてきました。東京はロンドンに見劣りしない街ですが、東京とロンドンで全く同じ景色を持つことはありません。
つまり、AIには、人間と同じようで違う、特有の感情が芽生える可能性はあります。人間には感情があるから、と言いますが、AIも人間と同じように、複数個が連携し、コミュニケーションを取るようになれば、特有の感情を持つことができるかもしれません。これが俗にいう、「シンギュラリティ」でしょうか。
そうなったときに、果たして感情や気持ちの有無だけで、人間とロボットの間に優劣をつけられるのでしょうか。
ATRIは、それを、世界で初めて感情を持ったロボット「アトリ」の存在とともに教えてくれていると思います。
このATRIの最後には、「人類は、ヒューマノイドを友達として扱うことで、人間とロボットの共存を可能とした」という記述があります。
友達。
その関係には、今のロボットが抱える問題である、倫理観や権利を無視した悪用といったものが少なくなっているかもしれません。
人類社会か、ロボット社会。
このような二項対立にせず、ロボットも人間と同様の教育を以てして、人類社会の構成員になることが、お互いにとっての理想的な到着地点であるように、私は考えています。
ロボットに農業を任せるのではなく、お互いに農業をするような。
人間は結局、労働から抜け出せないわけですが、しかし、有史以来人間は、それが肉体であろうと頭脳であろうと労働に勤しんできたので、それを今更になってロボットに一方的に押し付け、投げ捨てるのは、人間の傲慢とも、怠惰とも言えますね。
とはいえ、現代の仕事量はロボットによってもっと減らし、人間は楽を享受してもいいように思いますが。
その楽を享受するとき、人間だけが孤独にいるのではなく、その傍にはロボットがいて、人間とロボットは共に苦楽を味わい、喜びや悲しみを共有する関係になることが、表面でどう取り繕うと、最終的に孤独を嫌う人間の、理想的な社会だと思います。
そう。
それはまるで、ATRIのように。
あとがき
このATRI、実は結構前にもらってはいたんですが、やろうと思ったのは最近なんですよね。だから、今になって感想を出しているわけで。
で、なんでやろうと思ったかというと、これです。
この曲は、Adoと初音ミクのデュエット曲なんですが、なんといいうか、人間とボーカロイドの共演って、胸にクるものがあるんですよね……
僕は、インターネットに接続できるようになってすぐに、当時はボーカロイドから出ていた「IA-ARIA-ON-THE-PLANETES」ちゃんを好きになったような、生粋のボカロ好きなので、ボカロと人の共演は、本当に感動してしまうんですよね。
古くは、BUMP OF CHICKENの「ray」でしょうか。
今でも泣けます。
そんな、人工音声と、人間のコラボという話を聞いて、そういえばそれに似たような話のゲームを貰っていたような……で、ATRIを思い出して、始めたわけです。
ATRIはもちろんですが、「桜日和とタイムマシン」も、是非とも聴いてみてください。
泣けます。
タイムマシンに乗って、ねえ、あの時に戻してよ。
IAちゃん……
https://youtu.be/nIWZfhpnq6M?si=PswOcIWqFmqNp7yh
ちなみに、魔女こいにっきで好きだった子は「真田 甘楽」ちゃんです。
もう話の大部分は忘れていますが、この子がとにかく可愛かった印象です。
本当に最後に、序盤で「ノベルゲー苦手」という供述があったと思いますが、「じゃあ、なんでATRIやったの?これ、フリーゲームとかじゃなくて、何千円とかするでしょ」と思った方。
勘がいいですね。
だが、理由は語りません。
全てを知ろうとするのは、人間の傲慢ですよ。
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