地方創生に関して
１ はじめに
筆者は、この半年間大学で授業を履修し、徳島県美波町と千葉県市原市の２つの地域をオンライン上で交流してきた。この２つの地域に共通していることは、少子高齢化の影響を受けてしまっている地域である。しかし、単なる少子高齢化の影響を受けてしまっている地域ではなく、その地域を深く関わっていくことで、そうではない部分が見えてきた。
２ 徳島県美波町に関して
徳島県というと無意識に過疎地域と思ってしまいがちな面があるが、美波町を深く見ていくと以下のことが分かった。それは、企業のサテライトオフィスが多く設置されている地域であるのだ。サテライトオフィスというと『サテライトオフィスとは、企業または団体の本拠から離れた所に設置されたオフィスのこと。本拠を中心としてみた時に衛星（サテライト）のように存在するオフィスとの意から命名されました。』（引用：総務省、お試しサテライトオフィスから）
さらにサテライトオフィスの中でも特にIT系の企業のサテライトオフィスの誘致に実績があるのが美波町である。言い換えれば、IT系のサテライトオフィスが美波町に進出しているので、IT企業が使う情報網がすでに美波町に整っているということがわかるだろう。都心ならともかく、徳島県の美波町にITの活用が発達していることこそ、サテライトオフィスを活用する企業が美波町に進出する理由の１つかもしれない。
サテライトオフィスを設置することで、事実上その地域に居住することが求められる。美波町には海や山などの自然が身近に存在しているので、仕事のリフレッシュするという面からも魅力が詰まっている。また、都心に比べて立地の面から見ても安く設置することができる。さらに、美波町は第一産業が発達していて、サテライトオフィスを設置した企業が、第一次産業から得られる新たな発見やサービスを見出す可能性を秘めていることも、美波町にサテライトオフィスがあるからこそ今後実現することができるのではないだろうか。
３ 千葉県市原市に関して
筆者が以前書いたnoteの記事を見ていただくとより細かいことを把握することができるが、市原市は千葉県という首都圏でありながら少子高齢化が進行している地域である。さらに、市原市の南部である加茂地区は特に高齢者の影響が強い地域である。加茂地区には小湊鉄道という存在があり、小湊鉄道が観光客や地域の人々を加茂地区へと運んでくれる移動手段となっている。その存在は加茂地区にとっては重要であり、小湊鉄道は古き良き日本を味わうことができる。
古き良き日本を味わえるというと、勝手に石川県の金沢市のような風情ある街並みのことを想像してしまうが、小湊鉄道でも十分にその風情を味わえる。それが千葉県という都心からもアクセスしやすい近隣にあるのだ。今の新型コロナウイルスになってから遠出をすることが難しくなった世の中ではあるが、都心からアクセスしやすい市原市の小湊鉄道に乗車することで、人が溢れる日常から自然を感じられる田舎感、非日常を味わうことができるのである。これこそ、市原市のコアコンピタンスではないだろうか。結論から言うと、都心にある田舎が市原市の魅力であるように、都心の中で唯一と言えるような田舎というものを目指して逆開発をしていくべきではないだろうか。
４ 地方創生について
以上の２つの地域には、高齢化が進行している一方でその地域にしかないコアコンピタンスをこれからも継承していくべきである。近年、首都圏に人が集結し田舎地域から移動する人口流動が当たり前となっている。都心にはアクセスしやすい環境が常にあり、多くの若者をはじめとした生産年齢層が首都圏に居住している。
そんな中、新型コロナウイルスが日本を襲った。今は、海外をはじめ日本国内でも自由に移動することが困難となってしまった。一方で、筆者は地方創生に関しては新型コロナウイルスの影響で地方の存在価値が今まで以上に高まったと考える。今までは利便性を重視してきた人々が、ステイホームなどを強いられることで、都心にいなくても仕事ができる環境が整っていることが分かったのである。これにより、今まで以上に地方がクローズアップされることが多々ある。美波町に関しては、情報網の環境はむしろ都心と同等レベル以上のものを活用できるのかもしれない。
交通アクセスの良い利便性の都心、そして自然あふれる田舎、この二つの地域性にはそれぞれ特色がある。普段は都心で仕事をして、休日にリフレッシュ感覚で田舎地域を訪れることもできるし、普段は自然豊かな場所で生活して観光目的で都心を訪れるという二つの立場を主張することができる。この二つの地域性はそれぞれ価値があり、どちらが正しいということでもない。地方に半年間クローズアップして、都心にない地方の魅力を改めて感じることができた。
＊参考文献＊