映画のスーツスタイル
映画は最高のファッションの教材というのは誰かの名言だが、今日はそんな映画について。映画のファッション、特にクラシックなスーツに感銘を受けた2つの作品を紹介したい。
・華麗なるギャツビー
第一次世界大戦が収束し、空前の好景気に沸いたアメリカの狂乱を描いたアメリカ文学の傑作。男性の衣装をブルックスブラザーズ、女性の衣装をはプラダが手掛けている。
個人的にに注目なのは、3人の主要男性登場人物の衣装がそれぞれのキャラクターを上手く表現しているという事。
ギャッツビーのエレガントな淡いピンクのスーツは言うまでもなく、筋骨隆々で自信家のトムを引き立てるスリーピーススーツ、控えめで自らステージに上がろうとしないニックの落ち着いたアースカラーのスーツ。それぞれの衣装がキャラクターの魅力をさらに引き立てている。あるシーンでトムがギャツビーに「ピンクのスーツなんか着やがって!」と罵倒するシーンはまさにその象徴だ。
ちなみに、襟型もギャツビーはエレガントなピンホールカラー、トムはオーソドックスなレギュラーカラー、ニックはボタンダウンシャツやラウンドカラー(ここだけさりげなさすぎるニックの主張も注目)とそれぞれのスーツとキャラクターに合った襟型をチョイスしている。
女性のアールデコ調の豪華絢爛な衣装も素晴らしい。これは、僕がうだうだ説明を述べるまでもなく、実際の写真をご覧いただこう。
いかがだろうか。華麗なるギャツビーで女性陣に共感できない方もいると聞くが、当時「フラッパー」と呼ばれた自由で解放的な女性像を魅力的に美しく描くこの映画、ぼくは大好きな作品の一つだ。
・マリアンヌ
ロバート・ゼメキス監督による正統派ラブロマンスかつサスペンスでもある今作は主演のブラッド・ピットとマリオン・コティヤールの”コロニアル”な衣装に注目。
コロニアルスタイルとはコロニー(植民地)で駐在員が現地の気候や風土に合わせた色合いや素材を使ったドレススタイル。昨今人気のアースカラーをメインに用いたスタイルだ。
マリアンヌの舞台はモロッコのカサブランカ。この地にロンドンで着るようなネイビーのスーツでは堅苦しすぎる。当時からどこでどのように装うかがいかに重要だったかが理解できるだろう。
カジュアルもこの通り。ベージュを基調に、アースカラーと相性がいいグリーンの差し色のソックスがいいアクセントになっている。
2人で並んだショットもこのように背景とファッション、そして人が見事にマッチしている。特に、砂漠に2人がたたずむシーンはこの映画のハイライトの1つだ。このシーンでベージュと白シャツ以外何を着ればいいのだろうか。
マリアンヌが素晴らしいのは同じ場所を舞台にした名作「カサブランカ」へのオマージュが多用されており、白黒映画のカサブランカの色彩を補完した点だと思っている。是非とも2作とも観ていただきたい。
いかがだろう。
映画の中でファッションの果たす役割はとても大きい。
この2作品が素晴らしいのは、当時の衣装を再現するだけでなく、現代的なエッセンスを加え、さらにその衣装が各キャストにぴったりとマッチしている所だ。
秋以降には映画のスーツといえばこの人、ダニエル・クレイグ最後の007や、伝統的な英国紳士スーツのお手本キングスマンの新作も公開を控えている。
映画のクラシックなスーツスタイルに一層注目したい。
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