4時間で中国の歴史を駆け抜ける
1.オリンピックとナショナリズム
この数年のオリンピックの開会式ってサッパリしているのね…と感じた方。
私もそう感じております。
ほとばしった情熱を感じ、涙してしまうものだったはずなのに、
私が年をとって感動しなくなったのかしら?
そういえば、東京オリンピック2020(開催年は2021年)などは
「…日本のナショナリズムはこれでいいのか」と疑問に思ったものでした。
さて、「ナショナリズム」とは、
各国の政治的・民族的単位の一致を指す言葉。
開会式は開催国のナショナリズムのプライドをこれでもか!と、
政治的・民族的な見せ方が一目瞭然になるはずなのに、
いわゆる愛国精神の演出は控えるようになった感じがいたします。
理由は様々あるのでしょうね…。
ナショナリズムの有無以前に、国際情勢の見極めが難しくなっているのも
大きいかもしれません。
2.日本文化がお好きな方へ見ていただきたい
猛暑日が続いておうち時間が多い、和文化好きのそこの貴方。
是非、2008年の北京オリンピックの開会式を
ご覧いただきたいとシェアします。
日本文化に触れていると、どうしても外す事のできない中国文化要素。
紙でも墨でも、儀礼でも式典でも、文学でも思想でも・・・
中国の歴史のお勉強をしなければならないけど、
東洋史はボリュームがありますよね。
そんなとき、たった4時間で中国の歴史を駆け抜けられることができる魔法があります。
それが「北京オリンピック2008 開会式(の動画)」なのです。
3.なぜ、オリンピックの開会式?
なぜ、オリンピックの開会式がよいのでしょうか?
開会式を通した国家と民族の演出は、驚くほどたくさんの中国文化要素が使われ、それら全てに象徴的意味が込められており
日本人なら知っておきたい大陸文化の教養があふれているのです。
・開会式の日時は旧暦において縁起の良い吉日
・カウントダウンをするのは中国古代の日時計
・BGMは中国の古代楽器
・敦煌壁画の飛天
・孔子の三千弟子
・剛柔相済と天人合一の精神を表す太極拳や舞姿
・中国絵巻は史書をベースに歴史文化の進展を語る
・文房四宝、万里の長城、シルクロード、鄭和の大航海、
・四大発明や科学技術の要素
・「朋あり遠方より来たる」「四海の内は皆兄弟なり」などの儒教の言葉
がこれでもかと詰め込まれ、
数十分の間に絶世の音楽と才子佳人によって、中国の歴史を駆け抜けたように思える素晴らしい演出なのです。
あの式典の演出こそ、中国の人々のナショナリズムであり、愛国主義であり、プライドの体現なのです。
つまり、政治と民衆が互いに『自国』を想うとき、同じ思想と感情を持ち、表現・行動することがナショナリズムの理想なのですが、
あの開会式は大陸のプライドを見せつける素晴らしい演出だったのです。
これらが、日本に伝わり大きく影響を与えたのは皆さんが知るところ。
蛇足になりますが、開会式のクライマックスで鮮やかな民族衣装を身に纏い中国国旗を運んだ「56民族の少年少女たち」も
(実は全員漢民族だったというオチはあったものの)
民族が違えども一つの領域内でまとまっている
(または、まとまろうとする)中国の理想の体現だったのですよね。
4.はたして「日本」のプライドは何でしょうか?
この開会式の動画をご覧になって、日本のナショナリズムを考えたとき
今の日本は「自国のナショナリズム」を世界に堂々と披露することができるのでしょうか。
政治と民衆が思う「日本のプライド」は一致するのでしょうか。
この動画を拝見するたびに、考えさせられるテーマです。
日本人として「日本のナショナリズム」をありありと説明でき、
子どもに伝えられる大人になりたいですね。