香る花の名前
秋から冬に差しかかるこの時期に、良い香りを漂わせる白い花をふたつ知っている。
ひとつはビワの花。
初夏に実が生るビワの白い花は、萼が薄茶色の細かい毛に覆われているので見た目はとても地味だが、良い香りがする。
あたり一面に香るというほどではないが、花の香りがして見回すと頭上に咲いていたりする。
ビワの木は昔から「人の泣き声を聞いて育つ」と言われて、庭木には好まれないらしい。
私が育った長崎県はビワの生産量が日本一で、ビワの木は普通にあちこちで見かけたし実家の裏庭にもビワが生えていた。初夏には小ぶりだが甘い実をつける。
ビワの葉は煎じて飲むと胃腸にいいとか、皮膚病に効くとか、温灸にも使われる。
草木染めの染料にもなる。
趣味で染織をする知り合いが「ビワの葉で布を染めたいが買うと高い」というので、実家からスーパーのレジ袋ふたつ分ほどの葉を持ち帰ったらとても喜んでくれた。
どんな色に染まるのか尋ねると、媒染剤によって違う色になるが、黄色く染めたいと言っていた。
庭木に好まれないどころか、むしろ一家に一本植えておいたらよさそうだ。
さて、もうひとつの良い香りのする白い花は、ヒイラギモクセイだ。
葉はヒイラギのように棘があり、ギンモクセイに似た小さな白い花と香りを持つ。
正月に爽やかな甘い花の香りが漂ってきたら、近くにヒイラギモクセイがある。花が小さいのでなかなか見つからないが、ヒイラギのような棘のある葉を探すと早い。
ちなみにヒイラギは、クリスマスケーキの飾りとして昔から定番の、ギザギザな葉が二枚と赤い実のついたアレである。
ところで今日、神社の境内で良い香りがしたので花を探すとやはりヒイラギモクセイの木があった。
いやでも、この葉のトゲトゲ具合はヒイラギか。
しかし、同じ木の別の枝には葉に棘がない。
さて、この花はヒイラギかヒイラギモクセイなのか?
両方ともモクセイ科モクセイ属なのでどちらでもいいのだけど、どこかの刑事のように"細かいことが気になってしまう"のが癖なのだ。
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