神社にあるのは歴史か信仰か
小戸公園編①
福岡市西区の小戸公園にはふたつの神社がある。
小戸公園といえばヨットハーバーが有名で、タモリさん主催のヨットレース、タモリカップの福岡での開催場所としても知られている。
私が行きかったのは、公園内にある”小戸大神宮(おどだいじんぐう)”と”小戸妙見神社(おどみょうけんじんじゃ)”。
小戸大神宮はイザナギが黄泉の国から戻った際に禊祓を行った「筑紫(ちくし)の日向(ひむか)の橘(たちばな)の小戸(おど)の阿波岐原(あわぎはら)」という祝詞にある”小戸”の候補地だというので、一度は見ておきたかった。
小戸妙見神社は小戸大神宮のすぐ近くにあり、由来も何もわからないまま、「神社があるなら行ってみよう」という程度の興味で行くことにした。
小戸公園の東側の丘陵地にある”小戸大神宮”は、静かな森の中にひっそりとあった。
事前の調べでわかってはいたもののコンクリート製の社殿は簡素で、建物から歴史ロマンとか古代の情趣を感じ取るのは難しい。
今もそうなのか、かつては伊勢神宮にならって20年に一度の遷宮を行っていたようなので、そのせいで社殿が新しいのかもしれない。
境内の脇道に入ると、小戸地蔵尊や十三仏などもあり、ここ一帯が信仰の場だったようだ。
社殿よりもむしろ興味をそそられたのは社の左手にあった、ふたつの大きな石。
「安産石」と表示があるその石は、神功皇后が応神天皇を懐妊中に腰掛けられたという伝説がある。
福岡には神功皇后の伝説が数多あり、「腰掛け」の石は他にもあるが、ここの石は扁平で大きく、意図的に形を整えているように見えた。
さて、小戸大神宮から小戸妙見神社へ向かう。
妙見神社は小戸公園の北西、海に突き出た妙見岬にある。
新しい木製の鳥居をくぐって舗装されたのぼり道を少し上がると、御祭神の表示と「昇龍の松」という札のある松の木が現れる。
その松の木の奥にあるのが小戸妙見神社の社だ。
テントの中にある小さな社は見るからに新しい。
神社の由来によると、奈良・平安時代に盛んだった「妙見信仰」が、すっかり衰退して何の痕跡もなくなっていたところに、1990年代頃ある人の夢枕に龍神が現れ、お告げによって地中に埋まっていた社殿の屋根部分の石を掘り出した。そして2002年に社が再建されたらしい。
写真お社の屋根部分、レンガ色の部分が掘り出された石と思われる。
妙見信仰というのはものすごく簡単に言うと「北極星(北辰)」への信仰で、インドや中国、仏教の思想とが入り混じって、さらに日本の神である「天之御中主(あめのみなかぬし)」と習合し・・・難しくて素人にはよくわからない。
ただ、この神社が誰かの手によってとても大切にされているのは、供えられた榊や、神具に汚れがないこと、社周辺の清掃が行き届いていることから見て取れた。
妙見神社は人の手の温かみを感じる神社で、それは歴史の長さや社の大きさと関係のない部分での気持ちよさを感じさせてくれた。
そしてこの妙見岬、神社以外にも私にとって面白いものがいくつかあったので、ページを改めてもう少し書いてみたい。
(小戸公園編②はこちら)
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