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気象大学校のリアル

気象大学校は、学生数がかなり少なく、その実態に関する詳細な情報がネット上にほとんどないのが現状です。それはそれで入学してからのお楽しみ、という感じがして良いのですが、やはり気になる方や不安に思う方のために、気大生の私が学生側からの視点で、忖度なしのリアルな気象大学校をお届けします。


気象大学校のココがすごい!

まず、私が気象大学校に入って良かったな〜と思う点をいくつかご紹介します。

お給料

気象大学校の学生は、学生という身分であると同時に、国土交通技官(気象庁職員)という肩書きを持っています。つまりは国家公務員なわけです。正確な俸給額は、国家公務員行政職俸給表(一)の1級5号棒の欄に記載されていますが、そこから税金や社会保険など色々引かれて、学生の手元に入る金額はだいたい月13万円程度です。それに加えて、6月末と12月末にはボーナスが入ります。ボーナスとして学生の口座に振り込まれるのは、だいたい30万円ずつくらいです(1年生の6月末のみ8万円程度)。ただ、国家公務員なのでアルバイトを含めた副業は出来ません。でも毎日お勉強するだけでこれだけのお給料がもらえるのです。魅力的ですよね?

水道光熱費はタダ

気象大学校には寮があります。強制入寮ではありませんが、気大生は9割方寮に入っています。寮生はなんと水道光熱費が無料なのです。その代わり年に数千円の寮費が徴収されます。これは多分寮の共用物品の購入に充てられているものと思われます(もちろん寮生はその内訳を確認することができます)。

人脈

実はこれが1番の気大のメリットだと私は思っています。
まず学生間についてです。気象大学校に入学する前から学生が少人数であることは知っていたので、自ずとその人間関係も濃くなるということは予想していたのですが、その予想をかなり上回るレベルで濃密です。どれくらい濃いかと言うと、同期はもちろん、しゃべったことない先輩や後輩(いるかな?)も、とりあえず全員の顔と名前はお互い一致する程度です。気大は必修の授業が多く、日中はほぼ同期全員と授業を受けます。授業がない時間もみんな寮で生活しているので、同期とは一緒に過ごそうと思えばずっと一緒です。授業外の時間で1人になりたいな、と思えば寮の自室にこもってれば良いだけです。また、同期以外とも、部活やイベント(後述)など様々な機会で先輩・後輩とかなり親しくなれます。在学中はここで先輩から課題や試験を上手く切り抜けるアドバイスなどをもらうことができます。また、部活によっては、既に卒業して本庁などで働いている気大OBと顔を合わせる機会もあります。気大で得た同期や先輩・後輩間の関係は、卒業してからもずっと続き、かなり役立つようです。
次に学生・教官間について。教官にもOB・OGが数人おり、この方々は学生として気大に在籍していたので、気大のことをよくよくご存知です。気大卒ではない教官とも、学生側から能動的にコミュニケーションを取りに行けば、たくさんお話することができます。教官室にお邪魔すると、たとえ講義の質問などがなかったとしても、多くの(というかほぼ全員の)教官は快く迎え入れてくれます。これは、教官に単なる無駄な世間話の話し相手になってもらうのではなく、将来気象庁で働くときのための人脈が作れるという点で重要な意味をもっています。気大で常勤教官として働いている方々もまた気象庁職員であり、教育職に就く前に、行政職や研究職として気象庁で働いていて、その中でも優秀な職員だった方がほとんどです。なのでそこで得る人脈というのは、かなり貴重かつ大事なものになると思います。これは他の大学では得られないものですね。将来気象庁で働きたいという希望があるなら、この点においては気象大学校が断然おすすめです。

イベント

これが良い点だと思うかは人によりますが、気象大学校は割と特徴的なイベントがたくさんあります。この中には先述の人脈作りに大きな影響を与えるものもあります。
具体的にどんなイベントがあるかというと、
・体育祭(年2回!)
・文化祭
・泊まりがけの観測実習、職場実習
などです。ここで紹介したいのは体育祭です。
体育祭は4月の後半と3月の前半にあります。体育祭という名ですが、内容は球技大会のような感じで、2日間かけてソフト、バレー、サッカーなどの試合をします。4月の体育祭は学年対抗、3月の体育祭は先輩・後輩ごちゃ混ぜの縦割りチームで戦い、それぞれ(特に3月のは)前夜祭・中夜祭・後夜祭という名の飲み会があります(もちろん参加は任意)。イベント事や飲み会が好きな人にはもってこいですね。一緒のチームで戦う同期や先輩・後輩とはとりあえず仲良くなれます。

就活が不要

気象大学校の学生は、入学が決まった時点で気象庁職員として採用されることになるので、卒業後も気象庁で働くのであれば、気大卒業前に就職活動をする必要はありません。なので、在学中は自分の勉強や研究に集中することができます。

気象大学校の残念ポイント

良いところもあれば、悪いところもある…それが世の摂理というものです。以下に気大の残念な点を挙げてみます。

寮が古い

気象大学校の寮はとても年季が入っています。なんと築50年だそうです。それゆえ、色んなところにガタが来ています。建て替えの話はあるそうですが、いつになることやら…これを読んで入学してくださった方の在学中に建て替えが終われば良いですね、というレベルです。
気大の寮はひとつの建物の中に男女共用スペースと、鍵付きパーテーションで分けられた男人禁制の女子区画があります。つまり男女で建物は別れていません。これが気になるようでしたら気大への入学はあまりおすすめできません(まあ退寮すればいい話なのですが…)。
私が寮で1番気になったのはカビでした。部屋にはものすごいカビが生えます。1年の春に入寮した時点で、部屋の白い壁が真っ黒になるほどカビが生えていました。棚などにも放っておくとすぐカビが生えます。掃除するのは結構大変です。健康にも多分悪いです。ただ、空調はたまに業者の方がお掃除に来てくれます。多分エアコンの掃除を自分でするのは大変なので、これはありがたかったです。
そしてお風呂。男子は大浴場、女子は1人用の風呂に順番に入ります。女子のお風呂もシャワーの水圧が弱く、風呂の時間帯は洗濯機の使用をなるべくしないようにするなどの工夫が必要ですが、問題は男子のお風呂です。何台もシャワーがあるにも関わらず、同時に使うと出なくなるという理由から1台ずつしか使えず、冬はなかなかお湯が出ないなどの不具合が多発しています。これに嫌気が差し、寮のお風呂には入らず、近くの銭湯やジムのお風呂などを利用する寮生もいるようです。
タダで寮に住まわせてもらってるのだからこれくらい我慢して当然でしょ、と言われればそうなのですが、いくらタダと言えど耐えられなかった人々は退寮していきます。

国家公務員としての制約

先述したとおり、気大生は立派な国家公務員で、お給料ももらっています。それゆえ、一般の大学生とは違いさまざまな制約を受けます。
まず、アルバイトは不可です。お金の面からすればバイトする必要はないのですが、社会経験には欠けてしまうかもしれませんね。
次に、勤務時間中(8:30〜17:15、昼休憩1時間挟む)は寮・校舎含む敷地から出られません。私用で敷地から出る場合は有休をとる必要があります。また、夏休みは他の大学に比べて短いです。一応7月の終わりから8月31日まで通常授業がない期間があるのですが、その間にオープンキャンパスや実習、官署見学などの、いずれも参加が義務付けられている行事が入っており、フリーの日は少ないです。その上、お給料は8月も支給されるので、授業はなくとも、勤務時間内に敷地(テレワークする寮外生は自宅含む)から出る場合は、通常通り有休を取らなければなりません。

世界が狭い

気象大学校の大きな特徴として学生の数が少ないことが挙げられます。1学年だいたい15人程度、4学年合わせても60人程度しかいません。これは一般の大学で例えるなら、ひとつのサークルのような感じです。これが気大の良いところでもあるのですが、同時に少し苦労を要するかもしれない点でもあります。
学生数が少ない、かつほぼみんな寮で共同生活しているので、うわさ等はすぐに広まります。なので、秘密にしておきたいことなどは、一切誰にも言わないことが一番安全です。他の人に「これ、誰にも言わないでね」などと言って秘密を打ち明けても多分無駄です。人はゴシップが好きな生き物ですからね。
また、自分から他の大学のインカレサークルなどに出向いて行かない限り、4年間で気大生以外の学生と会うことはほぼありません。卒業してから働く職場にはもちろん気大卒以外の人もいるので、気大での常識が通用しない、ということも有り得るでしょう。

院がない

気大では学士号はとれますが、大学院が設置されていないので、修士や博士の学位はとれません。しかしながらWMOなどの国際機関で働くには最低でも修士、研究の道に進むとなるとやはり博士号まで必要なようです。ただ、気大卒の教官の中には、卒業後気象庁で働きながら他の大学で修士号や博士号を取った方もいるので、気になるようでしたら入学後にその方々に経験談を聞いてみると良いでしょう。

最後に

気象大学校はこんな感じのところです。個人的には、気象庁人生に活かせる人脈が作れるというのがとても大きくて、デメリットはあれどやはり気大に入学して良かったなと思います。
読んでくださったみなさまの進学先選びに、この記事が少しでも参考になれば幸いです。

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