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スーパー銭湯で
都会の夜は暗い。
星の明かりも見えない新月の日の露天風呂は、仕事終わりの強ばって痛いカラダを癒してくれる。
ふーっとチカラを抜いた、その時、目の前をツツーっと黄色いアヒル隊長が通りすぎていった。
「あーー!ぼくのアヒル」
甲高い声と共にはしゃぐ男児。四歳位か。
「こーら。騒ぐんじゃない。」
たしなめるお母さんは、私と同じ位の年の頃だった。
なんだか、私が選ばなかった未来、いや、選ばなかった今をみているみたいで、子宮のあたりがいたみそうになる。
あの頃、彼にヒステリーおこさなかったら。
あの時、彼にワガママいいすぎなかったら。
彼に、サヨナラを言われないですんだのかな?
そしたら、今頃、私は、あの親子のような母親になれたのだろうか?
いまだに思い出す、彼。いまだに彼以上のオトコに出会えないまま、私は仕事に日々を費やしている。
いつの間にか貯まった貯金と、いつの間にか結婚に向いていそうなオトコは皆、既婚者。
独身のオトコは、いかにもモテなさそうなオトコか病気持ちか甲斐性のない貧乏人だらけで、魅力的な独身オトコ……と思ったら、だいたいバツイチ子持ちの法則さえ出来てきている。
若いオトコは、いつの間にか、私を相手にはしなくなっていった。
これが、婚期を逃したってヤツなんだろうか?
バツイチ組は、子あり子なし関係なく、結婚なんてこりごりという。私は結婚に向いてなかったのよ、と。既婚者組は、子持ちになってから、すっかり縁遠くなった。私と同じ未婚組で同世代は、珍しいんじゃないかって位、少なくなった。
子供を産んでみたいとか、結婚してみたいとか、深く思い入れてあこがれてがんばってみた時期もあったけど、一度縁遠くなっていた友人がバツイチ組になり、増えていくなかで、夢はあっさりさめていった。
子持ちの大変さや旦那や義理の家族のゲンジツを知り、私はもういいや、とさめたはずなのに。
やっぱり、経験して失敗したのと、未経験は違うものだな。
だからといって、好きでもないペットを飼いだして、ママ気取りになるほど堕ちてないと気取りたくて、仕事は誰よりも精を出してきた。仕事先では必要とされていたかったから。
カラダも毎日労ってみて、毎日自分にごほうびあげて。
だけど、私は、やっぱり、また恋がしたい。
母になりたいと言えるタイムリミットが過ぎてしまってから、オンナとしてオトコをさがすのは難しいんだな、とつくづく思う。
私は、なんだか優先順位を間違えたらしい。
都会の新月の夜は、一番暗い。
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