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【アートラインかしわ2022】「共晶点」柏ゆかりの作家展を鑑賞|by志村麻衣

初めまして! 柏のキになる探検隊・フリーライターの志村麻衣です。
柏駅周辺で毎年秋に開催される芸術プロジェクト、アートラインかしわ。今回はその恒例企画で、盛況のうちに11回目の幕を閉じた作家展の鑑賞レポートをお届けします。

「共晶点」2022年会場の様子

■11年目を迎えた「共晶点」

“いきものゆかし”をテーマに、11/20まで催されたアートラインかしわ2022。命あるすべての動植物に心を寄せるさまを表現した芸術作品が、街や店舗を彩りました。
中でも私が魅かれたのは、11/9~13までパレット柏 柏市民ギャラリーを飾った「共晶点」。日本画、油画、彫刻、金工、刺繍、折紙など、柏にゆかりのある若手から中堅17人の作家展です。

そもそも、共晶点とは物理用語。複数の成分が混ざり合う溶液から共融混合物が生じる温度のことで、陶芸ではこの作用を生かすことも。作品と真摯に向き合う作家たちが集うことで起こる化学反応――無限のエネルギーを感じずにはいられません。

■柏ゆかりの作家に会える特別感

私が伺ったこの日、幸運にも7人の作家さんが在廊していました。地元で活動する芸術家への憧れから探検隊になった私、鑑賞後にインタビューさせていただきました。

「共晶点」会場にて。写真左から勝川東さん(折紙)、宮田琴さん(金工)、筑紫百合子さん(陶芸)、むらいゆうこさん(日本画)、福永明子さん(日本画)、羽室功二さん(彫刻)、島田由子さん(襖絵)

◆福永明子さん(日本画)

最初にお話を伺ったのは、「共晶点」主宰で日本画家の福永明子さん。柏育ちでアートラインかしわの実行委員、柏美術学院カルチャー教室の講師でもあります。

日本画家の福永明子さん

凛とした女性が心に響く人物画「咲き誇れ」など、展示作品はいずれも新作。同展に向けて数日前に描き上げたものあり、みずみずしい生命力に満ちています。

純白×真赤が象徴的な「咲き誇れ」

この「八仙花」は、私もよく知る柏市内のある場所に咲くアジサイが題材と聞いてびっくり。福永さんが切り取った美しい瞬間を身近に感じて、ぜいたくな気持ちになりました。

福永さんもお気に入りの「八仙花」

◆羽室功二さん(彫刻)

愛らしい“いきものゆかし”な作品を見せてくれたのは、彫刻家の羽室功二さん。柏の葉アトリエ所属で、同展には初回から参加しています。

彫刻家の羽室功二さん

「ましゅろん」は、今年11/1から東京・人形町にある老舗の革財布店、山藤(やまとう)の直営店「人形町ウォレテリア YAMATOU」に飾られているオブジェ。原物は銅製ですが、こちらはFRP製。真っ白なカール毛だったましゅろんを思わせる優しい雰囲気。

写真左から「ましゅろん」と飼い猫がモチーフの「ハレルヤ!」

◆宮田琴さん(金工)

“ぶらり”な旅番組にも出演、柏市ふるさと返礼品の銅製コーヒードリッパーも好評な金工作家、宮田琴さん。熱してやわらかくなった金属板を金づちで叩いて成形する伝統技法の鍛金(たんきん)は、繊細さと力強さが求められる芸術です。

金工作家の宮田琴さん

今年の展示は、一点もの揃いの華やかなお茶道具。抹茶を入れる棗(なつめ)は、銅を磨いて温もりのあるピンク色に。茶杓(ちゃしゃく)は、銅の丸棒を叩いて潰して酸化させることで茶色く仕上げています。

制作は、柏市内に構えた「アトリエ鍛(たん)」で

◆筑紫百合子さん(陶芸)

静×動の展示が印象的だったのは、柏の葉アトリエ所属の筑紫百合子さん。3人のお子さんを育てながら創作活動に励む、ママ×アーティストです。

陶芸作家の筑紫百合子さん

こちらが静かに存在感を醸していた「鰐(わに)の種」。赤土をラスター釉で仕上げることで、生命を感じるツヤと輝きに。

鑑賞するほど興味がわく「鰐の種」

「悩み≠課題」は、溶液などを撹拌(かくはん)するステーラーという器具を使った動きのある作品。白く塗装したステーラーには水と黒い玉が入っていて、モーターの回転で発生する竜巻のような縦方向の渦がぐるぐる……。

「悩み≠課題」の黒い玉は、心に抱えたあのことかしら!?(笑)

◆勝川東さん(折紙)

最後に会えたのは、柏市出身で東大折紙サークルOrist『東大折紙』出版主導の勝川東さん。正方形1枚の紙に細かく折り線を入れて、子どもから大人まで誰もが驚く作品を創り出しています。

折紙作家の勝川東さん

これは赤と黒の両面折り紙で作った「anaphylaxis(スズメバチ)」。精巧なハチの顔、創造された2本の毒針、台座のペンチにまでこだわった逸品。

新作「anaphylaxis(スズメバチ)」

隣には、「anaphylaxis(スズメバチ)」の展開図をステンドグラスにした作品も。ハンダ付け部分が折り線だと聞いて、頭部の細かさやシンメトリーの美しさに感心しました。

「anaphylaxisの展開図(ステンドグラス)」

■「共晶点」2022年の鑑賞を終えて

作品を鑑賞しながら、作り手のコンセプトや制作秘話を伺ったひととき。他の来場者も作家さんとの距離が近く、とてもいい雰囲気でした。貴重な機会に感謝しつつ、今から次の開催が楽しみで仕方ありません。

17人の作家さんは柏市をはじめ、日本で、世界で注目されています。私もファンの一人として、皆さんと一緒にその活動を応援していきたいと思っています。

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「共晶点」柏ゆかりの作家展
https://2022.kashiwa-art.com/1029/
アートラインかしわ2022
https://2022.kashiwa-art.com/

レポート:志村麻衣(パレット柏・柏のキになる探検隊/フリーライター)



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