【当代編】2.さようなら、おとうさま
数百年続いてきたスノードロップ家を、小さなリィンセルは七歳で継ぐことになった。
リィンセルを産んですぐにお母様は亡くなり、お父様に新しい奥方様を迎えられるそぶりがいっこうに見られなかった時点で、まわりの大人たちは皆、次代の女公のことを考えただろう。ただ、思っていたよりその時の訪れは早かった。旧き家名を、小さな白雪姫様が幼くして一身に背負われることを聞くにつけ、市井の片隅の人々、アルビオン大英帝国臣民の誰彼もが心を痛め、同情した。
リィンセルの愛するお父様……当代の白雪公、ハクロ・アレグザンダ・スノードロップ少尉が亡くなった春荒れの嵐の日、白雪公の執事、イヴォーク・ボイドも同じく死に至った。嵐とともに現れた黒き復讐者に、忠義な執事イヴォークは十字短剣<ミセリコルデ>で対峙し、逆にその短剣を奪われて、旦那様のスノードロップ少尉ともども心臓を刺し貫かれた。
雪花亭に仕える使用人の少年があやつる自動車に乗せられ、ずぶぬれのスノードロップ少尉とイヴォークが住み慣れた邸に戻ったのは、嵐の去りかかる午後になってからだ。
夕刻というのに夜のような暗闇に浸された玄関ホールでは、旦那様と執事の不帰のお戻りを待ち構えた雪花亭の人々が、つらい悲しみの思いを堪えていた。
女中頭のエヴァグリン夫人と家令のアダムシェンナ氏に、両側を守られ立つリィンセルは、いつも血色のいい赤い頬を今日ばかりは青白くし、こちらも色のうせた唇をきゅっとかみしめて、大きな玄関扉の前にいた。
リィンセルが生まれてすぐに亡くなったお母様のことは憶えていないけれど、今度は大の仲良しのお父様がいなくなってしまう。大切な家族を亡くすリィンセルの幼い心臓は、どきどきと破裂しそうに鳴っている。
邸の正面の車寄せで、自動車の発動機が切られる。車からおりた足音が大股に玄関へ近づくと、外側から扉をけたたましくノックした。
「サフィルでごぜえます、開けてくだせえ! 旦那様とイヴォーク様が戻りましただ!」
使用人の『双子のトーマス』の弟のほう、サフィル・トーマスの声だ。かなり興奮しているらしく、息があがっている。
「お待ちなさい、すぐに!」
アダムシェンナが急いで扉へ駆け寄った。エヴァグリン夫人は自身の青い家事服の胸元に、リィンセルの痩せた肩をきつく抱きしめる。雪花亭の人々は固唾をのんで、アダムシェンナの背中と地肌の見える薄い灰色頭のつむじを凝視した。
重々しく扉が開くやいなや、雨具をかぶっていても頭のてっぺんから水びたしのサフィルが、銀糸の前髪からしずくをたらし、褐色の顔をまるで油を塗りたくったようにぬめらせて、玄関ホールに飛び込んできた。
「イヴォーク様はまだ息がありますだ! ローズオンブレイ先生はどちらですかのう!」
「先生、先生!」
振り返ったアダムシェンナが、白く髭をたくわえた口元で呼びかけると、人々の列でひときわ目を惹くちぢれた赤毛の壮年紳士が進み出た。
「階下へ執事殿を運びたまえ。わたしは診察鞄を取ってこよう」
「お待ちくだせえ! イヴォーク様が、なにか喋って……!」
濡れそぼった執事の、瀕死の身体を担ぎ出すために、車のほうへ取って返したサフィルのあげる制止の声で、ローズオンブレイ医師のみならず、玄関ホールに集った人々の緊張がいや増す。
助手席に頭を突っ込むサフィルとは逆の、運転手側から上体を割り込ませた家令アダムシェンナ氏が、もはや指一本動かせないほど衰弱しきった執事イヴォークに向かって、何やらわめいている。
「……莫迦おっしゃい! そんな仕打ちをおまえにできるものか!」
歳若く割り切りのできるサフィルは、この非常時に至って尊厳を捨てきれない家令に焦れたのか、雨ざらしになった車の屋根ごしに血走った蒼眼を覗かせ、『双子のトーマス』のもうひとり、玄関ホールで棒立ちの姉ヴァイオラ・トーマスを呼びつける。
「姉《あね》さ! イヴォーク様を中庭のあずまやに運ぶのを手伝ってけろ! 先生もそちらにお願《ねげ》えしますだ!」
呼ばれたヴァイオラは、ただちに女中服の長いスカートをたぐって駆け出した。
双子はそろっていまだ薄っぺらな体つきのいたいけな少年少女で、ヴァイオラとサフィルの姉弟は、二人がかりで運ぶだけでもひどく難儀な、芯を失いなすがままにされる執事イヴォークの分厚い体躯を車の助手席から引きずり出した。
雷雨に打たれて乱れる執事のフロックコートがはだけて、イヴォークの胸郭に十字短剣が深々と突き立てられたままなのが見え、とっさにリィンセルの体をかばうように抱きこんだエヴァグリン夫人が短く悲鳴をあげる。
心臓を串刺しに貫かれたイヴォークが、みずからの末期の血に主人の邸を汚すことを憚って、苦しい息の下から「庭づたいにあずまやへやってくれ」とでも洩らしたのだろう。どこまでも執事たらんとする昔馴染みの友の言い草に、アダムシェンナが反駁したのも当然だった。
「あづまやだな、承知した。……家令殿! 旦那様もそちらへ!」
ガリア人を称する雇われ医師ローズオンブレイは、アルビオン大英帝国臣民を自負する家令アダムシェンナの感傷を、冷淡に叱責した。
泣く泣く腹を決めたアダムシェンナが、サルーン仕様の後部座席に寝かされる白雪公の遺骸を、苦心しいしい運び出した。
私室に備える重たげな診察鞄を手に、ローズオンブレイ医師が中庭のあずまやへ駆けつけると、みずからの短剣を丘に立てられた十字架のように胸に生やした執事イヴォークが、石卓に寝かされていた。かたわらでは、あずまやの長椅子に身を伸ばした白雪公スノードロップ少尉の、絞るほど濡れた軍級品の外套の袖に取りすがって、リィンセル姫様がしくしくと泣き崩れている。
長年、ともに白雪公をお支えしてきた女中頭エヴァグリン夫人と家令アダムシェンナが、両側からしきりに話しかけ、今にも事切れそうな執事イヴォークを励ましている。双子は、間に合わせの経帷子にする布帛を探しに行き、あずまやに姿がなかった。
「……コハクを呼んだわ。きっとマヌウがなんとかしてくれるでしょうから、それまで頑張ってちょうだい……」
「……おまえが多少遅れたからといって、今さら腹を立てるような旦那様でもあるまい。もうしばし滞って、大学からコハクが着くのを待て……」
同世代で歳の近い、執事、女中頭、家令の三人にしてみれば、ガリア人の皮肉っぽさで年長者に楯突くまだまだ青臭いエマヌエル・ローズオンブレイ医師を、少々子供じみた愛称の『マヌウ』で呼ぶこともしばしばだ。
そのマヌウは、使い古した診察鞄から、モルヒネカクテルのアンプルが並ぶ金属ケースを取り出した。
薬液を満たした注射器を片手に、ローズオンブレイ医師はアダムシェンナに場所を譲られ、イヴォークの腕に針を刺す。
しばらくの間、石卓を取り囲む大人三人で、十字短剣の突き立てられた胸郭の上下動を注視し、イヴォークの呼吸が落ち着くのをたしかめていた。
やがて、涙にくれていたはずのリィンセルが、ああ、と戸惑いの声を上げたことで、白雪公に仕える大人たちが、中庭の入り口に設けられた格子戸のほうを振り向く。
「コハク……?! まあ、コハクね! すっかり見違えて……! よかった、来てくれたわ!」
額でわけたまっすぐな黒髪を肩で切りそろえる長身の青年が、ちょうど格子戸を押して中庭に踏み込むところだった。
「エヴァグリン夫人……、父さんは……」
すっと通った鼻筋に銀縁の眼鏡をかけたうりざね顔のコハクが、もはや避けられない父の喪失を目の当たりに煩悶の色も濃く、小走りにあずまやへやってくる。
雪花亭とさほど離れていない大学からタクシーで駆けつけたコハクは、正面玄関の車寄せから点々と続く父の血痕を追い、不穏な予感に押し潰されそうな胸中をひた隠しながら、中庭に誘導されてきたのだった。
そのコハクは、秀でた額の怜悧な容姿をしているが、父の心臓を重く傷つけた十字短剣を目にしてついに表情が凍りつく。
父イヴォークの枕辺に近づくより先に、コハクはあずまやの軒下で絹の靴下の膝が汚れるのも厭わずひざまずいたリィンセルの、止まらない涙が幾筋も流れ落ちる頬をふっさりとした黒髪がふちどっている様子や、棒のように痩せた幼女の体が亜麻の普段着に包まれているのを一瞥した。
リィンセルは、不思議な風体の青年コハクを、涙の膜が張った丸い瞳で見つめ返す。スノードロップ家の先祖と同じ東夷人《ジーペン》を母に持つコハクの髪はまるでお稚児のようだし、体は黄禍とも揶揄される象牙色をしていて、銀縁眼鏡の下の切れ長の細い双眸に隠れかかった感情を読み取るのは難しい。
代々、執事を務めてきたボイド家は、邸の階上で生活する貴族が言うところの、地階で働く『階下の者』、つまりコハクは労働者階級の帝国臣民だが、リィンセルのお父様のハクロが教父ともいう名付け親になり、アルビオン大英帝国ではもっとも貴い白雪公の後見を得て、紳士階級の子息が学ぶ寄宿学校から大学へ進んだ。
リィンセルが生まれたときにはもう、寄宿舎暮らしのコハクは、休暇にも帰省しなかったので、二人が顔をあわせるのは今日が初めてだった。
(こんな日でなかったら、きっとすてきな出会いだったでしょうに)
幼いリィンセルは、物心つくころからずっと、「あなたがお家を継ぐのですよ」とまわりに聞かされていたし、自分でもそうするものと思っていたので、なにかにつけてひどく大人びた子どもだった。
イヴォークは、無駄口を好まない厳めしい執事で、リィンセルはつい最近まで彼に息子がいることも知らなかったぐらいだ。
その一人息子のコハクが雪花亭に寄り付かない理由を、なんとなくイヴォークに聞いてはいけない気がしたリィンセルは、エヴァグリン夫人にこっそりたずねたのだが、夫人としても、イヴォーク本人が話さないことを勝手に喋る気になれなかったらしく、「男子ですから、父親に反抗したい年頃なのでございましょう」とだけ答えた。
「―― なんです? 父さん、もう一度言って……」
虫の息のイヴォークの口元に耳を寄せたコハクは、じゃまな額髪を手でかきあげる。いよいよ迫る喪失に怯えるあまり、声が苛立っていた。
お父様に寄り添ったリィンセルが振り向くと、イヴォークが最期の力をふりしぼって、さきほどモルヒネを注射したほうの腕をわずかに上げ、乾いた血に塗れたふるえる指で白雪姫様を、リィンセルを指差した。
コハクの耳朶に触れんばかりに近づけられたイヴォークの唇が、かすかに動く。一人息子の彼にしか聞こえない言葉を受け取ったコハクは、眼鏡のレンズの下で、驚きに目を見開いた。そのコハクが視線を動かして見たのはやはり、イヴォークが示したのと同じリィンセルのほうだ。
いっとき、あずまやの下に集った人々の中で、リィンセルだけがイヴォークを見つめた。
刹那、リィンセルが、あっ、と声をあげる間もなく、注射の際にずぶぬれのフロックコートごとシャツをまくっていた血の気のないイヴォークの腕が、ばたりと石卓に落ちた。
「ああ?! イヴォーク!」
「……ッ! 父さん……!!」
のこされた大人たちが口々に悲鳴じみた声をあげ、事切れたばかりの体にとりすがる。
ただひとり、無言でリィンセルの背後に回ったローズオンブレイ医師が、先に逝かれたスノードロップ少尉のつめたい両手をうやうやしく取り、胸の上に組み合わせて差しあげた。
「……コハク? イヴォークはなんて?」
エヴァグリン夫人の問いかけに、コハクが一瞬、逡巡したのがリィンセルには分かった。
「頼む、と……」
「それだけかね?」
「ええ……」
重ねて問いただしたアダムシェンナも当惑している。
いくら忠義な執事とはいえ、たったひとりの家族に託した最期の言葉が、お仕えする主人の幼い娘の後事というのはあんまりではないかと、まだあまり世知長けない歳のリィンセルでさえ思った。さきほどの、コハクの双眸にうかんだ驚きや、逡巡の表情がようやく飲み込める。
「で、どうするのかね?」
ローズオンブレイ医師は、初対面のコハクにむかって無遠慮なほど率直にきいた。
燃えるように赤いちぢれ毛を、嵐が去ったあとの湿気で重たげに肩までたらしたローズオンブレイ医師は、スノードロップ少尉に仕えた年季がほかの人々より短いせいか、それとも死と喪失を常とする医者だからか、ただ悲嘆にくれたりせず、こんなときにも淡々としている。
問われ、コハクは再度リィンセルに目をむける。
幼くいたいけな白雪姫様、リィンセルはもう泣いていなかった。ゆるくうねった黒髪が、残る涙で頬に張り付く様子はいかにも哀れっぽい。
つい半刻ほど前までは、お父様の死に青ざめていた少女の顔が、泣いてしゃくりあげる熱にのぼせて、もとの血色を取り戻している。まさに白雪姫の、『血のように赤い頬と唇』だ。
コハクの目にも、出会ったばかりのリィンセルは聡明そうなお子と映った。次代の女白雪公にふさわしいにちがいない、といったふうに。それが、このように痛々しく、なにもできずに泣き濡れている。
最期まで心の通じ合わなかった父の、死に際に託されたから、という以上に、今ここで、このいじらしげな白雪姫様を見捨てて、学究をもとめる自分に戻ってしまっていいのか、との迷いや罪悪感がコハクの胸中にわきおこる。愛らしいリィンセルの姿は、見るものにそういった感情をおぼえさせ、庇護欲をかきたてる力があった。それに、コハクが学者として身を立てることを考えたのは、なにも高邁な志からではなく、父と異なる道であればなんでもよかった、というだけだ。
先に膝を泥に汚したリィンセルの御前へ、コハクは遅れてひざまづき、小さな女の子と目線をあわせるように屈み込んだ。
「お初にお目にかかります、姫様。イヴォーク・ボイドの一子、コハク・H・ボイドともうします。その……父が、あなた様を頼むとのことですが……」
「あなた、ひきうけてくださる?」
大人びたお子だとは感じていたが、父親と執事をいちどきに亡くした直後でこうもしっかりとした口をきかれては、コハクは大の男のくせに気圧され二の句を失う。
「お父様もイヴォークもいなくなって、わたし、どうしていいかわからないわ。あなたがあたらしい執事になってくだされば、ほんとうに心強いのだけれど」
リィンセルは思慮深そうに、いったん言葉を区切った。イヴォークの忘れ形見を頼りたいのはやまやまだけれど、出会ったばかりの相手に無理強いはできないと考えているのが、コハクにも手に取るように分かる。
「あいさつがまだだったわね。はじめまして。わたし、リィンセルといいます。リィンセル・カサブランカ・スノードロップ。白雪姫、なんて呼ぶかたもいらっしゃるわ。ねえ、コハクさん。あなたのお名前の『H』は、なんとおっしゃるの?」
「……ヒューイット。あるいは、ヒビキ」
「ヒビキは、琥珀《コハク》とおなじでジーペンのお名前ね」
ふたつの遺骸をかたわらに、三人の大人たちが見守る中でする会話としては、なんとも間が抜けていて滑稽だった。
「リィンセル姫様、もうしあげます。ボイド家の男は代々、姫様のお家に執事として仕えてまいりました。こう言ってはなんですが……、今日まで引き継がれてきたお役目を、自分の勝手で途切れさせるのもなんでございますし……。自分だけ免れることができるとも思えませんので……」
リィンセルの物言いにくらべて、コハクのほうはひどく歯切れが悪かった。
「お願いするわ、コハク。わたしの執事になってくださらない?」
父に反発し続けてきたコハクが、みずからすすんで執事になりたがらないことを承知しているかのように、リィンセルはきっぱりと言った。
さきほどの、コハクの迷いに心くばりをするふうな様子とはうって変わって、雨だれの滴るあずまやの軒下のリィンセルは、コハクと膝を詰め、青年の象牙色の手を小さな白い繊手に握る。スノードロップ家の嗣子姫として、ボイド家の息子にはどうあっても執事になってほしい、といった思いを肌からじかに伝えてくる。
リィンセルの手のひらは、雨とも涙ともつかないものでしっとり濡れていた。
絶対に父とは違う生き方をする、と子どものころからかたく思い定めていたコハクの決意は、次代の新しい女白雪公、リィンセル姫様のけなげなお姿を前にすれば、ただのワガママでしかないようで、否とは言えなくなる。
……いや、むしろコハクには、腹に二心を隠し持つコハクにだけは、執事になるべき理由があった。父が死んだ瞬間、その理由が忽然と生まれでた。
父と同じでないならば。自分が善良な人間であるならば当然、殺された肉親の仇を取りたいと願うのが道義にかなっている。それが人の情というものだ。不実な肉親にさえ義理立てし、おのれの性善をたしかに示すのが、自分のとるべき道なのではないか、との計算が、コハクの頭をもたげる。
コハクの父を殺したのは、黒太守ダネルだ。黒太守、すなわち黒馬公を屠るのは、執事ボイドと定まっている。白雪公と黒馬公の両者を縛りつける復讐の連鎖に加わるには、執事ボイドとなればいい。二心ありきのコハクは決して、リィンセルの頼みにほだされての、真摯な気持ちだけが理由とはならなかった。
「……承知いたしました。自分でよろしければ、微力ながらお仕えさせていただきます」
「ありがとう!」
泣き笑いの顔とはいえ、コハクの目の前で初めてリィンセルが笑う。
おのれの不純を突きつけられたように、リィンセルの笑顔が刃になってコハクの胸に突き刺さる。
「では、決まりだ」
スノードロップ少尉の嵐に乱れた黒髪を、生前のごとく後ろに撫でつけていたローズオンブレイ医師が、短く切り口上に言った。
そこで、母屋からあらわれた双子が経帷子にする布をかかえ、中庭におりてくる。ローズオンブレイ医師は、ただ白いばかりのその布を受け取り、白雪公と執事のつめたい遺骸をそれぞれ覆い隠す。
石卓のイヴォークにかけられた白布だけは、胸の十字短剣で山なりの稜線を描いた。