#12 「Let It Be」 - 帰る場所はどこ?【The Beatles Album Review】
今回はいちばん最後にリリースされたビートルズのアルバム「Let It Be」をレビューします。
基本情報
オリジナルリリース 1970/5/8 (UK)
Two of Us
Dig a Pony
Across the Universe
I Me Mine
Dig It
Let It Be
Maggie Mae
I've Got a Feeling
One After 909
The Long and Winding Road
For You Blue
Get Back
Total Time 35:13
発売日から遡ること1ヶ月前、1970年4月10日に
「ポールがビートルズ脱退の意向」ということが報じられ、
世間にビートルズ解散の衝撃が走った後で世に出たアルバム。
ビートルズはもう終わったのかぁ、と実感しながら
当時の人はどんな気持ちで聞いたんでしょうね。
自分が産まれた時にはもうビートルズ解散してたし、
なんならメンバー4人が揃うことも無理でしたからね。
2021年、ドキュメンタリー「Get Back」と同時期にリミックスが出まして、
例によってデモ音源や当初「Get Back」のタイトルでリリース予定だった
お蔵入りマスター音源なんかも含まれています。
この「Get Back」が聴きたくて思わず入手しちゃったよね。
これとは別に、フィルスペクターが最後に施した
オーケストラアレンジなどを除いて、
シンプルなバンドサウンドの状態でリミックスが行われた
「Let It Be...Naked」というリミックスも2003年にリリースされています。
歴史修正主義そのものな姿勢はあまり好きじゃないですが、
このアルバムでしか聴けないシンプルなバージョンは好き。
レビュー
☆☆☆☆☆☆☆★★★(7/10) (オリジナル)
☆☆☆☆☆☆☆★★★(7/10) (Naked)
ビートルズの緊張状態が漏れ出ているアルバム。
ホワイトアルバム完成後、1969年初頭から作業が始まったのに、
慣れない環境で撮影されながら楽曲制作を行ったりしたことで
メンバー間の諍いも絶えなかったようです。
先述のように一旦「Get Back」というタイトルで完成したものの
あまり完成度が高くなかったせいかそのままペンディングに。
一旦気持ちを切り替えて「Abbey Road」を完成させますが、
そこで精根尽き果てたというか、もう限界がきてしまったというか。
言い方は悪いですが、「あと1枚出しとかないといけないから」
と仕方なく引っ張り出してきたような感じを受けます。
揺るぎない名曲も入ってるんだけど、
アルバム全体の雰囲気としてはちょっと散漫な印象。
楽曲解説
以下、アルバム内で特に好きな曲について一言ずつ。
Two of Us
ジョンによる語りで始まるフォークっぽい曲。
「僕ら家に帰るんだ」という強い意思が感じられます。
Across the Universe
元妻の喋りに辟易したジョンがイライラしてるうちにできた曲。
マントラを歌詞に取り入れていたりして神聖な雰囲気になりました。
フィルスペクターのオーケストラアレンジが効いています。
Let It Be
何も説明しなくてもみんな知ってるよね。
制作が難航しているアルバムのタイトルが
「Get Back(帰ろう)」から「Let It Be(なすがままに)」に
変わった瞬間を裏付ける象徴的な曲。
これはNakedのバージョンで聴いて欲しいと思う。
最初のサビ前で入ってくるリンゴのハイハットの音に
ディレイがかけられてるのが個人的にすごく嫌。
ポールもピアノ間違えてるし。
シングルVer.とアルバムVer.ではギターソロが違いますが、
どちらのVer.でもよく耳を澄ますと聴こえる
「埋もれたギターソロ」がありまして、
Nakedではそれが残っている状態のものを聴くことができます。
One After 909
アップル社の屋上でのゲリラライブからの1曲。
ビリープレストンのエレピが良いですね。
ごく初期の頃からあったらしく、
「Anthology 1」では全く違うアレンジで
若かりしメンバーが演奏しているものを聴くことができます。
The Long and Winding Road
これはもう、Nakedの方を聴いてください。
分厚いオーケストラアレンジがなくなって
「当初」の音を聴けます。
これに関してはマジで「スペクター余計なことしやがって」と思ってる。
21世紀に入ってからオーケストラなしVer.を出そうと思うあたり、
ポールもずっと不満だったんでしょうね。
(ジョンもジョージもいないし、
リンゴは文句言わないだろうって思ったのかもしれないけど)
Get Back
当初のタイトル曲。
先述の屋上コンサートでは3回も演奏されています。
ドキュメンタリーを見ていると、
3回目の演奏では騒ぎを聞きつけた警察が屋上まで上ってきていて、
ヤバイと思ったスタッフにアンプの電源を切られて
ギターが無音になる瞬間があります。
しかし「アレ?」と思ったジョージは
再びアンプの電源を入れて演奏を再開するんです。
アルバムに収録されているのはそのテイクではありませんが、
Let It Be関連で唯一、バンドとしての結束を感じた瞬間だったもので。
まとめ
決して嫌いな訳じゃないし、悪いものではないんです。
ただ、「Abbey Road」の完成度が高すぎた。
歴史にIfはないものの、もしビートルズが
「ラストにふさわしいアルバムを最後にもう1発作って終わりにしよう」
ってなってたらどんなものが出来ただろうかと考えると想像が尽きません。
それでは、かしまさでしたー。
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