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『雲を紡ぐ』を再読したのでエッセイを書いたら、前回とは違う感想になりました。


あーもっと優しい言い方をすれば良かったと、もやもやすることがある。どうしても家族だと、遠慮なく言ってしまうことがある。でも
本音はやさしい人間でいたいのだ。そうなる為にはどうしたら良いのだろう。もしこんな風に思う人がいたら読んでみてほしい。


『雲を紡ぐ』は母親に理解されていないと悩む女子高生美緒と、妻と娘に向きあえない父親、自分の味方は誰もいないと感じている母親、三人の複雑な気持ちが描かれている。
三人は苦しみながらも、疎遠になっていた祖父の力を借りながら次第に心を通わせていく。表面上には見えない心が見える物語だ。

今年はコロナ禍の影響で離れて住む両親に会えていない。たまに電話で話すくらいだ。元気にしてそうで、いつもは笑って話す。しかし時々、父と母の言葉にイラッとさせられることがある。ある時母が言った。
「断捨離しなきゃ」
「うん、いらない物は捨てなよ」
えらそうにアドバイスをした。
「でも、お父さんがしなくていいって言うの。
死んだら、なたねちゃんに全部任せたらいいって」
「ちょっと、なんで私が?」

やさしい娘なら「私がなんとかする」と言うのだろうが、心が狭いせいかそれは言えない。弟には頼まず私にだけ言ってくることや、友
人に「娘がいて良かったね」と言われたことをわざわざ話すことにも腹が立つ。今時、女性も男性も関係ないのに。でも腹立たしいのに罪悪感もある。父と母のことが好きだからだろう。やさしくできたらどんなに良いか。

しかし思っているだけでは何も解決しない。『雲を紡ぐ』で祖父が美緒に語る。「身内だからこそ許せない、感情がもつれる。だけどそのままにしていたら、美緒… … ずっとこじれたままだ。少しでもいいから、互いに歩み
寄らなければ」そうだ。怒るのではなく、まず父と母に歩み寄ろう。

以前、自分が家の中の物を整理した時のことを思い出してみた。
捨てる物を選ぶのは案外難しく、捨てようとするとまだ要るような気もするし、寂しくもなった。体力だけでなく気力もいる作業だ。父と母の年齢を考えれば、物も多いし、もっと大変で面倒な作業だろう。
「全部任せる」という言葉は私に押しつけたい気持ちからではなく、単に断捨離から逃れたい気持ちから出たのだろう。聞こえる言葉が気持ちの全てではない。美緒達も互いを思いながらも悪い方に読み誤り関係を難しくしている。大事なのは相手が自分の敵ではなく味方であることを忘れずに接していくことだ。

先日母から電話があった。
「使ってない椅子を引き取ってもらったの」
母は何とかがんばろうとしているのだ。やはり丸投げするつもりなんてなかったようだ。
そして車で運んでほしい物があると頼まれた。

「いいよ」と素直に言葉が出た。

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なたね
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