教えて大西さん、ピースワンコのこと㉒広島県が知事にも隠していたこと〜「法令違反」解消せぬまま犬の引き渡し再開


 岡山県高梁市のピースワンコ西山犬舎で鑑札をつけていない犬が大量にいた問題で、ピースワンコの運営団体、NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)と狂犬病予防法を順守させる話し合いを続けてきた広島県動物愛護センターの中村満所長に、どうしてこんな事態になったのか電話で話を聞きました。

 中村所長によると、広島県動物愛護センターもピースワンコに鑑札をつけていない犬がいることは承知していて、県は定期的な立ち入り検査をするたびに改善するよう指導しているということです。

 あきれてしまいますが、鑑札をつけていない犬がいることは広島県は知っているというのです。

 2018年6月下旬に広島県警がピースワンコの本部や大西代表理事夫妻らの自宅を狂犬病予防法違反で捜査をした際、広島県は愛護センターが収容している犬をピースワンコに引渡すのを一時停止しました。

 県は警察の捜査終了直後にピースワンコを立ち入り検査し、その時点で法令違反が解消されていることを確認したとして、7月から犬の引き渡しを再開しました。

 しかし、中村所長によると、その時点でも「鑑札をつけていない犬がいることは知っていた」ということです。

 2018年7月3日、湯崎英彦広島県知事は記者会見で以下のように説明していました。

警察が捜査に入ったということから,6月21日木曜日からピースウィンズ・ジャパンへの譲渡は一時的に見合わせをしています。〔6月〕28日に神石高原町と一緒に,動物〔の〕愛護及び管理に関する法律に基づく立入調査をさせていただいて,その結果,調査時点では,狂犬病予防注射が適切に実施されて,法令違反は解消されていたということが確認されております。また,今後の再発防止策についても適切に講じられていること,それから,犬の飼養管理の状況であるとか,あるいは,施設の衛生管理の状況等も調査いたしまして,特段の問題はなかったということであります。したがって,本日から,あらためてピースウィンズ・ジャパンへの譲渡を再開したい」

 当時は県庁食品生活衛生課担当監として動物愛護問題を担当していた中村氏は、ピースワンコ役員らと交友関係のある上司、田中剛医療・がん対策部長(当時、現在は健康福祉局長)の指示を受けて、2018年1月からピースワンコの狂犬病予防法違反問題の対応にあたっていて、経緯を一番詳しく知る公務員です。

 知事は「法令違反解消を確認した」と説明しているのに、どうなっているのでしょうか?

Q(筆者)なぜ、鑑札の未装着を容認したのですか?

A(中村所長)容認はしていない。装着するよう指導を続けている。

Qなぜ、装着できないのですか?

A ピースワンコには殺処分対象の犬を引き取ってもらっていて、犬が首輪をかみ切ったり、鑑札を飲み込んだりする例があったと聞いている。

Q どのくらいそのような事例があったのですか?

A わからない。

Q 現在、何頭くらい未装着なのですか?

A わからない。

Q 報告を求めなくていいのですか?岡山県の西山犬舎は大半の犬が未装着だとみられていますよ。広島県から岡山に捨てられているとして高梁市議会で問題になっています。

A 指導の中で求めていくことを考えたい

Q 2年前に譲渡再開した際、法令違反が解消されたことを理由に挙げていた。虚偽の発表ではありませんか?

A 当時は狂犬病予防接種のことを念頭に置いていた。

Q でも法に基づき、装着させることが先ではありませんか?一般の飼い主でも病気等の理由で飼い犬の狂犬病予防接種を免除してもらうときには手続きを踏みます。

A 装着するよう指導をしていく。

Q いつまでに装着させますか?

A つけられるようになった時につけてもらう。

Q 予防注射ができるのだから、首輪も付けられます。まず首輪と鑑札、注射済み票を装着して、かみ切る犬がいたら再装着すればいいだけではありませんか?

A ・・・・・・。

 大西さん、さっそくピースワンコ部門に鑑札の装着状況を調査させ、広島県や岡山県に報告してはどうですか?寄付をしてくれる支援者にも知らせた方がいいでしょう。

 殺処分対象を全頭引き取るといってきたピースワンコに対し、広島県がかなりの負い目を感じて、指導が大甘になっていたことは間違いなさそうです。

 しかし、そのピースワンコが全頭引き取りを2019年1月から中止し、毎月引き取る頭数に上限を設け始めています。収容頭数が膨らんでしまって、広島県動物愛護センターは「譲渡適性」に応じて選別するという理由をつけて、今年2月1日から収容犬の安楽死処分を大幅に増やしています。

 広島県の殺処分ゼロは実質的に崩壊しています。ピースワンコがガス室に追い込む無差別殺処分はストップしたと宣伝していても問題の本質とはあまり関係がありません。

 ピースワンコは、自分の都合で全頭引き取りを大々的に宣伝して寄付金を集めたかと思えば、こっそり引き取り頭数の上限を設けて、結果的に県動物愛護センターによる安楽死処分増を引き起こしているのです。

 広島県庁はもうピースワンコのご機嫌をうかがって、法令違反を事実上黙認したり、他の団体に説明しない情報を提供したりする必要はありません。ピースワンコにしっかり法令順守を求め、それに従わない場合は告発しましょう。

 公務員には、仮に相手がどんなにコネや権力との近さをひけらかそうと、毅然とした態度で仕事を進めてもらいたいと思います。


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